1 / 8
悪夢の婚約破棄
しおりを挟む
「フランソワーズ・トレーディア。貴女との婚約を破棄することとする」
何の前触れもないルビー王国王太子からの発表に、場内は大騒ぎとなった。上流階級に属する人たちが数多く出席している学院のパーティーで婚約者本人から突きつけられた、公爵令嬢であるわたしへの突然の婚約破棄。こんなこと常識ではありえない。わたしはいきなり頭の中が真っ白になった。
「そんな莫迦な! このような非常識な発表は前代未聞ですぞ!」
わたしの父のトレーディア公爵が口を荒らげて抗議した。当然だろう。ルビー王国屈指の名門であるわがトレーディア家。わたしは未来の王妃として嫁に迎え入れられるはずだったのだ。
同じパーティー会場にいる、子爵令嬢ドロテアのニヤリとした顔が目に入ってきた。やはり、あの女の仕掛けなのか。実は事前に彼女の動きに関して、王太子にしきりに接近を図っているなどという、いろいろと不穏な情報が入ってきてはいたのだが、わたしは王太子を信頼するあまり、何も対策を取っていなかったのだ。
「このようなことをする訳をお聞かせ願いましょうか」
わたしの父は激しく詰め寄ったが、王太子は冷笑を浮かべ
「公爵のお嬢様の名誉のためには公表しない方がよろしいかと存じますが、敢えてと申されるなら、お話ししましょう」
王太子は、わたしの罪状なるものを並べ立て始めた。まず上がったのが、子爵令嬢ドロテアへの、不当なイジメだった。彼女の人気に嫉妬してという理由が付け加えられていたが、どういうことなのか理解できなかった。 わたしには、彼女の存在なんか眼中にはなかったのに。
わたしはドロテアに視線を向けてみると、あの女はこみ上げる笑いを抑えるのに必死な様だった。なんて憎らしいのだろう。
続いて、学院内でのわたしの不品行、不行状が次々と並べ立てられたが、いずれも身に覚えがないか、事実を激しく歪曲されたものであった。つまり冤罪だった。そして、最後はわたしへの人格攻撃で締めくくられた。あまりにもひどい、でっち上げばかりだった。
次期国王としてはやや能力には欠けるけれど、心根は優しい人物だと思っていた王太子の突然の変節ぶりには驚かされた。やはりドロテアにたぶらかされているのだろう。
にわかに信じがたい、あまりにひど過ぎる内容の発表に、人々は発表を信用できず、場内の雰囲気は、わたしへの同情へと変わっていったのだが、何とも厚顔無恥なことに、わたしへの告発が終わると、なんと、王太子とドロテアの婚約が発表されたのだった。
「ひどいわ、やめて! 全部嘘よ、濡れ衣だわ!」
あまりにひど過ぎる一連の出来事にいたたまれなくなったわたしは、立ち上がって叫ぶと、部屋を飛び出して学院から走り去ったのだった。
「フランソワーズ、待ちなさい!」
もう、何も信じられない。背後から止める父の声を振り切って、駆け出したわたしは、学院のすぐ傍の暗い森の中を1人で走っていた。
何の前触れもないルビー王国王太子からの発表に、場内は大騒ぎとなった。上流階級に属する人たちが数多く出席している学院のパーティーで婚約者本人から突きつけられた、公爵令嬢であるわたしへの突然の婚約破棄。こんなこと常識ではありえない。わたしはいきなり頭の中が真っ白になった。
「そんな莫迦な! このような非常識な発表は前代未聞ですぞ!」
わたしの父のトレーディア公爵が口を荒らげて抗議した。当然だろう。ルビー王国屈指の名門であるわがトレーディア家。わたしは未来の王妃として嫁に迎え入れられるはずだったのだ。
同じパーティー会場にいる、子爵令嬢ドロテアのニヤリとした顔が目に入ってきた。やはり、あの女の仕掛けなのか。実は事前に彼女の動きに関して、王太子にしきりに接近を図っているなどという、いろいろと不穏な情報が入ってきてはいたのだが、わたしは王太子を信頼するあまり、何も対策を取っていなかったのだ。
「このようなことをする訳をお聞かせ願いましょうか」
わたしの父は激しく詰め寄ったが、王太子は冷笑を浮かべ
「公爵のお嬢様の名誉のためには公表しない方がよろしいかと存じますが、敢えてと申されるなら、お話ししましょう」
王太子は、わたしの罪状なるものを並べ立て始めた。まず上がったのが、子爵令嬢ドロテアへの、不当なイジメだった。彼女の人気に嫉妬してという理由が付け加えられていたが、どういうことなのか理解できなかった。 わたしには、彼女の存在なんか眼中にはなかったのに。
わたしはドロテアに視線を向けてみると、あの女はこみ上げる笑いを抑えるのに必死な様だった。なんて憎らしいのだろう。
続いて、学院内でのわたしの不品行、不行状が次々と並べ立てられたが、いずれも身に覚えがないか、事実を激しく歪曲されたものであった。つまり冤罪だった。そして、最後はわたしへの人格攻撃で締めくくられた。あまりにもひどい、でっち上げばかりだった。
次期国王としてはやや能力には欠けるけれど、心根は優しい人物だと思っていた王太子の突然の変節ぶりには驚かされた。やはりドロテアにたぶらかされているのだろう。
にわかに信じがたい、あまりにひど過ぎる内容の発表に、人々は発表を信用できず、場内の雰囲気は、わたしへの同情へと変わっていったのだが、何とも厚顔無恥なことに、わたしへの告発が終わると、なんと、王太子とドロテアの婚約が発表されたのだった。
「ひどいわ、やめて! 全部嘘よ、濡れ衣だわ!」
あまりにひど過ぎる一連の出来事にいたたまれなくなったわたしは、立ち上がって叫ぶと、部屋を飛び出して学院から走り去ったのだった。
「フランソワーズ、待ちなさい!」
もう、何も信じられない。背後から止める父の声を振り切って、駆け出したわたしは、学院のすぐ傍の暗い森の中を1人で走っていた。
0
あなたにおすすめの小説
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
婚約者として五年間尽くしたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる