ダイアモンド・ダスト

柑奈木

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46.岡本君と西宮

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「立川、あんまりそいつの悪ふざけに乗るなよ。ろくな奴じゃないから」

 岡本君が私に向って言う。

「は?岡本に言われる筋合いはないんですけどー」

 西宮が岡本君に食ってかかる。

「ちょっと……」

 私は二人をとめようとしたが、焼け石に水だったようだ。

「いい加減にしろよ、西宮。立川はお前みたいな適当なのがおふざけで弄んでいい奴じゃないんだよ」

「あれ、もしかしてオレがキスしてるの見て嫉妬しちゃった?捨てた女でもとられるのは嫌なんだ」

 岡本君は西宮の言葉に怒りを滲ませたが、何も言い返さなかった。

「……行くぞ、立川」

 岡本君が私の手を引いて歩きだす。その手を乱暴に引き離そうとわしづかみにする西宮。

「じゃあ、オレが本気ならいいのかよ?」

「は?」

「こいつへの恋愛だけは真剣にするって言ったらお前は素直に身を引いてくれんのかよ」

 岡本君が強く唇をかみしめた。

「おい、何だ。喧嘩か?」

 階段の方から図太い男の人の声が聞こえた。体育科の先生だ。

「また西宮か。ちょっと来い!」

 先生は私と岡本君に何の状況説明も聞かずにズルズルと西宮の胸倉を掴んで引きずっていった。

 西宮のことだ。普段の素行の悪さは学校内でも有名。相当悪い印象を持たれているのだろう。

 取り残された岡本君は私を見た後に一言、

「大丈夫か?」

と言った。

 私が頷くと安心したように頬を弛ませた。

「俺は、西宮とはあんまり関わらない方がいいと思う」

 それだけ言って岡本君は速足で階段の向こうに消えていった。
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