宝石店の魔法使い~吸血鬼と赤い石~

橘花やよい

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第十四章 宝石店の魔法使い

(二)

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「そ、そうだ、ルリ。ぼくの宝石、どうなった?」

 ミナセはあわてて話を変える。

 ミナセの宝石……、ああ、そうだ!

 思い出したとたん、わたしの感動はどこかへ飛んでいってしまう。がっくりと、うなだれた。

「……あの、そのことなんだけどね」

 ポケットに大事に入れていたミナセの指輪……だったものを取り出す。わたしたちが牢を脱出するために使った、ミナセの指輪。指輪だったはずなのに、形は変わって、鍵になっている。もとは橙色だったものが、チェーンと溶け合わせてしまったから、濁っていた。

 美しかった指輪には、とても見えない。

「母さんたちでも、もとに戻すの、難しいみたい……」
「そう、なんだ」

 ミナセは悲しそうに目を伏せる。

 わたしが無理やり宝石とチェーンと混ぜてしまったせいで、それぞれをもう一度分けることは大変な作業らしい。そう説明すると、ミナセはあきらめたように笑った。

「それなら、仕方ないね。そのままでいいよ。返して……」
「ま、待って、ミナセ!」
「え?」

 わたしの手から、指輪だったものを取ろうとしたミナセを止める。わたしは、ぎゅっと、その鍵を握った。

「わたし、絶対にもとの指輪に戻してみせるから。だから、わたしに預けてくれないかな」
「ルリに? でも、おばさんやおじさんでも、できなかったんだろう?」
「うん……だけど、わたしにも、できないって決まったわけじゃない」

 ミナセがどれだけ指輪を大切にしていたのか、知っている。だから、簡単にあきらめたくない。

「わたし、これから魔法もっと勉強するから。ミナセの指輪は、何度も見たから覚えてる。もとの形に、もとの輝きに戻してみせる」

 この鍵の形にしてしまったのは、わたしだ。最後まで、責任を持ちたい。

 なにより、ミナセにあの指輪を持っていてほしい。きれいな、ミナセに似合う宝石を。

「……わかった。それじゃあ、ルリに任せるよ」

 やがて、ミナセは微笑んだ。今度は悲しいものじゃない。おだやかな笑顔だ。

「ルリなら、本当にやってくれそうだし。信じてるよ」
「うん!」

 わたしは深くうなずいた。
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