上 下
51 / 53
閑話 家族のミラクル

家族のミラクル

しおりを挟む
 あ、カレーが食べたい、とヨミは思う。

 仕事帰り、どこからともなくカレーの匂いがした。それでもう口の中はカレー一色。バスに乗っている間も、とにかくカレー。でもこの時間に母に頼んだところで、「もう今日の献立は決まってます!」と怒られそうだ。うーん、困った。

「ただいまー。お母さん、今日のご飯なに?」
「カレー」
「え、うそ、ありがとう!」

 いわく、母も突然カレーが食べたくなったということだ。ヨミは感動した。離れていても繋がっている。家族って、こういうミラクルを起こすのかもしれない。知らんけど。

「ただいまー」
「あ、おかえり、お父さん」
「今日のご飯なんだけどさ」

 父が言う。
 え、まさか。

「ラーメンがいいなあ」

 ――うん。

「お父さん、それはないわー」
「え」

 ミラクルは連続して起きなかった。
 残念。今日のご飯はカレーです。

 ヨミが笑っていると、父は不思議そうな顔をした。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

時空を超えて愛し合う2人

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

おもしろ中編小説集

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

昨今の現代社会を愚痴りたい人のカレーなる異世界転生スローライフ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...