初恋、n回目

橘花やよい

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 初めて彼を好きだと思ったのは、シャッター越しだった。
 桜の木の下に立つ彼を見たとき、思わずカメラを向けていた。

 ――あれ。

 不思議だった。

 今まで何度も見てきた幼なじみの姿が、とても、好きだと思った。
 恋に落ちるのは突然で、そこに特別な理由なんて必要ない、らしい。

 あのとき私は、自分が恋に落ちる一瞬を逃さなかった。
 あのとき撮った一枚が、私の写してきた写真の中で、一番美しいと思う。
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