我が家の鬼神様は何故かいつも気怠け

高宮 摩如(たかみや まこと)

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ー第2話ー 仙導師の仕事 (鳴海蛍子視点)

私の名前は鳴海蛍子、はっきりとした記録は残っていないけど、代々という形で仙導師をしている。
父と母は私が幼い頃に行方不明になっている。
残念だけど仙導師の仕事は危険が伴う。
実際私が仙導師の仕事をするようになってからも命を落とす人、生死不明になる人は後を絶たない。
そして私もその覚悟はある。
そんな仙導師の歴史は実は結構古い。始まりは平安時代だの飛鳥時代だのとはっきりしない位に。
ただ2000年代初頭位にあった陰陽師ブームの関係で平安時代が起源だと思っている人は多いんじゃないのかな?。
そう、仙導師の始まりは陰陽師だ。尤も、名前等が変わっただけで、役割等は全く変わっていない。
吉兆を占い、厄事を払い、そして場合によっては要人と呼ばれる身分の高い人を守る。
そしてもう一つ大事な仕事。穢れた場を探し出し、払い、浄化する。
そうする事で事故等の大事を防ぐ。よく神社仏閣で家内安全の祈祷等の事をしているけど。
それを裏で形にしているのが私達仙導師という事になる。うん、大事な仕事だね。
さて、そんな仙導師ううん、陰陽師がなんで名称を変える事になったのか?。
それには実に面倒臭い大人の事情というのがある。
事の発端となったのもこれまた大分昔の話しで、江戸時代初期の頃だと言われている。
時の将軍徳川家康は空海に江戸全体と京都に結界を張り、幕府の中心を守るように命じた。
そしてそれに伴ない、陰陽師はもう不要だと判断したようで、
陰陽寮、つまり陰陽師という組織そのそものの解体を命じた。でもそれが浅はかな判断、そして結果となった。
当然だろうね。人の生活というものがある以上、ただ江戸や京都だけを守っていれば良いなんて理屈は通らない。
そう、江戸や京都以外の地方で厄事が起き、それが各地の不満へと繋がってしまった訳だ。
なら陰陽師を復活させれば?。と、すんなりいけば良かったのだけど。
ここで大人の下らないプライドというものが入って来る。
そう、同時の幕府の下らない見栄の為に陰陽師は仙導師へと名称を変えられた訳。しかもご丁寧に裏の組織として。
で、それが明治政府下でも受け継がれて今現在に至るとなる。
そんな仙導師、いえ陰陽師も残念ながら一丸岩な組織とは言えなかった。
平安時代末期、鬼の力を利用して払いの力を強固にしようと言う一派が現れた。
それが対立の始まりだったと言われている。当然だ、鬼は陰陽師にとって天敵と言って良い存在だったから・・・。
結局両分が和解する事はなかったと言う。ただ天皇家側、つまり陰陽寮を管理する側は鬼の力を利用する事に反発した為。
その主張をした側が当時の陰陽寮を去る事となった。
そしてしばらく後、そんな彼らが鬼導師と名乗り、仙導師と名称を変えた陰陽師達の前に姿を現れす事になる。
そうなったのは江戸時代末期、つまり幕末と呼ばれる時代。
同時、幕府の守りに付いていた仙導師に敵対する為かのようだったと記録に残っている。
鬼導師達は倒幕の獅子達に協力していた。それも陰惨な力を用いて。
表舞台を立つ事無く数百年の間に鬼導士は独自の呪(しゅ)を編み出していた。
それは陰陽師の本来の役割とは真逆の厄災の力を用いたものだった。
呪う力に特化した呪(しゅ)、外法(げほう)を始め、穢れの力を具現化した多くの呪を編み出していた。
そう、鬼導師の目的は最初から一つ。仙導師への復習。
その復習の為に関係の無い人が多く巻き込まれ、そして利用されるという形になった。
中でも最悪だったのは、空海が張った江戸と京都の結界。これらを逆手に取り、穢れに堕とした事。
その後の事は歴史に詳しい人なら知っていると思う。
江戸、京都で歴史に残されている凶事の多くに鬼導師達が起こした穢れに引き摺られたのでは?と言われているから。
その為、明治時代以降鬼導師は秘密裏にではあったけど、犯罪組織として認識されるようになった。
しかし、そんな鬼導師との戦いも命懸けだった。何故なら彼らには鬼神憑きという切り札があったから。
鬼そのものを人の身に降ろし、強大な力とする。
その力は仙導師達でもどうする事も出来ず、多くの犠牲者が出たと言う。
ただ鬼神憑きは制御不能になり、結局は鬼神を降ろした人が力の酷似で命を落とすという末路で終わるのが大半で。
また鬼神憑きに出来る人にも条件が有るようで、そう簡単に消耗品のようには出来ないようだった。
実際、第二次大戦後以降鬼神憑きは現れていないようで、また鬼導師達も目立った活動も無く。
私が知る限り、仙導師対鬼導師の関係に置いては静かな状況が続いている。
尤も、人が生活を続ける限り”穢れ”は必ず起きる。つまり私達の仕事が無くなる事は無い。
現在私は高校二年生。正直学生生活と仙導師の活動の両立はしんどい。
周りの大達の厳しさや仕事の厳しさもあるけど。
やっぱり自身の仕事を表に出す訳にはいかない。この事で神経を使うのが個人的には一番しんどい。

「やっほう~、蛍子。」
現在地は仙導師達の拠点。これからの仕事の為に着替えている私に呑気な声が聞こえてくる。
確認する必要も無い。私と同じ高校に通う同い年の水木華だ。
クラスが違うのと、当人の面倒臭がりな性格の為、学校ではあまり顔を合わせない。
「相変わらず真面目だね蛍子は。」
無視をしている私に構わず呑気に話し掛けてくる。
「華は不真面目だね。」
とりあえず嫌味のつもりで返したんだけど。それをけらけらと笑って反応する華。
私の言葉の通り華はいつも不真面目だ。
髪は派手な色に染め、服もわざと着崩す。
仙導院と現在呼ばれているここでの大人達の考え方は正直古臭い。
そこは共感出来るけど、それでも華の不真面目な態度には付いて行けないと思える。
案の定仙導院には来ただけという感じで、不真面目な態度で訓練も不真面目。
そしててきとうに切り上げてさっさと帰る。
いつもの事だが、やっぱり溜め息が出る。
当然だけど訓練には意味がある。危険を回避しやすくする為だとか色々。
それはスポーツとかでも共通する事だけど。当然軽んじて良い理由は無い。
だからこそ華の態度には腹が立つ。”そんなに死にたいのか?”と。
当たり前だけど私にも華にも任務という仕事は来る。そして命の危険を感じる事もこれまで何度か・・・・。
だから華には腹立たしくも心配にもなる・・・って、これ以上考えても仕方無いか・・・・・。
そして着替え終わって、いつもの所へ。
仙導院は見た目規模の大きな神社といったところ。実際表では神社として通している。
そんな仙導院の奥に位置する所に私はいる。
畳の敷かれた床。奥の中央に正座をする重ねた年齢を感じる男性とその横に挟む様に若い男性二人が立っている。
三人共に着物に袴姿で、地味な色合いが目に付く。
「本日のお勤めは有りますか?。」
そう静かに中央男性に声を掛ける。現仙導士の当主、白津葉道その人だ。
「本日は吉日かな。特に下って来てはいないよ。後の事は蛍子の心のままにすると良い。」
「はい・・・・。」
私にとってはいつもとなった静かなやり取り。そして私はその場を去る。
早くに親を亡くした私の親代わりになってくれた人で、時には厳しく、時には優しく、と育ててくれた。
最近は立場の関係もあって親子のような会話は出来ていない。けど私には間違い無く恩人。
そんな父には頭痛の種と言える問題があった。
仙導師には本家と分家が存在する。京都の本家、そして私達分家。その本家が問題だ。
ここ最近その本家が全く機能していないという問題。
分家の仙導師を京都に寄越せ等の形での仕事の丸投げに始まり、不必要に私達分家を締め付けに来ている。
お陰で分家内部にはいつも疲労感が漂うようになった。
しかも発生した報酬はしっかりと握ってしまう。
当然だけど分家の中で本家への不満の声は日に日に大きくなっている。当然私もだけど。
そして私個人の、になる不満。それは仙導師の制服に対して。
仙導士の制服も着物の袴という服装。色合いから巫女服にも見える。
で、なんでか女子だけ袴がスカート状。何で?、誰得なの?。
確か私が仙導師を始めた頃は普通に袴で、いつの間にか変わっていた。
まっ、まぁ・・人目に付かないよう行動をしているで普通は気にする必要は無いんだけど。
でも、それでも見える事もあるよね?。その・・・下着が・・・。
一応ながらたまに空中戦になる事もあるけど高い高度でというのが多いので、
一応・・・大丈夫だと思うけど。それも絶対とは言えない。
しかも昨日の事。その日も空中戦になったんだけど。
その下の辺りにその日転入して来たクラスメイトの泰童秀君がいた。
私がいた高さからなら見えてなかったと思うけど、それでも知っている人がいるというのは恥ずかしい。
一応この事を父に抗議した事もあったんだけど。
「ふむ・・・確それは多数決で決めた・・・ではなかったか?。」
父のその言葉に思わず「はぁっ!。」となる。
その多数決って何時あったの?。ほんとに訳が解らないんだけど。
とまあ苦労の日々・・・・としよう。
「うん、やっぱりこれはスカートじゃないとね。」
と、疲れている私の横で華がスカート状の袴をひらひらとさせている。あれ?、何時の間に・・・・?。
「私は嫌よ。なんで見られるかもなのにスカートじゃなきゃなの。」
華のあまりにも軽いノリにムカついてつい反論してしまう。
「は?、何で見られるとかなの。つーか今度は丈を短くするようにして貰おうかな。そしたらもっと可愛くなるよね。」
あぁ・・・なんか気楽に一人勝手に喋ってるなぁ・・・・。
てっ、ちょっと待ってよ。今なんて言ったこいつ。
もしかして袴の件、こいつが犯人?。(取り敢えずキレてます。)
「ねぇ、蛍子もそう思うよねっ!。」
そう勝手に華が言ってきた。そういう事にしよう・・・今は・・・・・。
こうして頭痛の種を多く抱えた私の日常はこれからも続く・・・。(勘弁して。)
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