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気になっていた若者と何度もメッセージを交わし、ついに圭子はその若者と会うこととなった。
落ち合ったのはとある港町。
真夏の太陽に、海がキラキラと輝いていた。
実際に会ってみると、切長の目、栗色のショートヘアーの容姿端麗な若者であった。
そして、たしかに若い。
圭子と4つしか違わないのだが、服装や言葉遣いから年齢の差を感じた。
しかし、メッセージを交わしていた時の印象のまま、優しい雰囲気をまとった好青年であった。
港町をぶらぶらとしながら、互いのことを話した。
その青年、斎藤ちはるはその年の春に大学を卒業し、出版社に勤めているらしい。
そして偶然にも出身大学が同じであり、初対面ながらもとても気さくに話をすることができた。
お昼になり、ちはるが知っている海鮮丼の店へ連れていってくれることになった。
2人がついた店は、町の中心から少し離れた、寂れた商店街の中にあり、外装も正直に言ってボロボロだった。
圭子はその店の古さと、そこに連れてこられたことに驚いた。
びっくりしながらも店内に入ると、意外にも地元の人達で賑わっている。
ちらほらとカップルもいるようである。
席に座り、ちはるおすすめの海鮮丼を2人とも注文した。
ちらっと値段を確認すると、1人前700円。海鮮丼にしては安すぎる。
これは値段相応のみすぼらしい丼が来るのではないだろうか。
圭子の不安をよそに、ちはるはずっと楽しげであった。
海鮮丼は5分足らずで運ばれてきた。
圭子の予想は外れ、ごはんの上に、刺身がこぼれんばかりに乗っていた。
まぐろを筆頭に、刺身達は自身の脂でテラテラと光っている。
ちはるに促されて口に入れると、魚の濃い旨みが溢れた。
ちはるによくよく聞くと、その店は地元の人しか知らない、安くて美味い店とのこと。
今回のデートのために、知り合いのツテを使って調べてくれたそうだ。
肩肘を張らない、自然な時間を過ごしたかったらしい。
圭子はちはるの気遣い、センスに感動した。
にこにこと笑うちはるを見ながら、圭子はさらに強く彼に惹かれるのを感じた。
同じ店内、別のカップルの会話。
女「おいしい!!」
男「よかった。今日のために気を遣わなくて美味しいお店を、知り合いに聞いておいたんだ。」
女「嬉しい、ありがとうね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とある村、青年のノート。
「年上女性は高級な店に慣れている。
デートには地元の人が知っているような、安いが美味い店を選び、肩肘をはらない時間を作る。」
「店の候補。〇〇港町、△△海鮮丼屋。…………」
落ち合ったのはとある港町。
真夏の太陽に、海がキラキラと輝いていた。
実際に会ってみると、切長の目、栗色のショートヘアーの容姿端麗な若者であった。
そして、たしかに若い。
圭子と4つしか違わないのだが、服装や言葉遣いから年齢の差を感じた。
しかし、メッセージを交わしていた時の印象のまま、優しい雰囲気をまとった好青年であった。
港町をぶらぶらとしながら、互いのことを話した。
その青年、斎藤ちはるはその年の春に大学を卒業し、出版社に勤めているらしい。
そして偶然にも出身大学が同じであり、初対面ながらもとても気さくに話をすることができた。
お昼になり、ちはるが知っている海鮮丼の店へ連れていってくれることになった。
2人がついた店は、町の中心から少し離れた、寂れた商店街の中にあり、外装も正直に言ってボロボロだった。
圭子はその店の古さと、そこに連れてこられたことに驚いた。
びっくりしながらも店内に入ると、意外にも地元の人達で賑わっている。
ちらほらとカップルもいるようである。
席に座り、ちはるおすすめの海鮮丼を2人とも注文した。
ちらっと値段を確認すると、1人前700円。海鮮丼にしては安すぎる。
これは値段相応のみすぼらしい丼が来るのではないだろうか。
圭子の不安をよそに、ちはるはずっと楽しげであった。
海鮮丼は5分足らずで運ばれてきた。
圭子の予想は外れ、ごはんの上に、刺身がこぼれんばかりに乗っていた。
まぐろを筆頭に、刺身達は自身の脂でテラテラと光っている。
ちはるに促されて口に入れると、魚の濃い旨みが溢れた。
ちはるによくよく聞くと、その店は地元の人しか知らない、安くて美味い店とのこと。
今回のデートのために、知り合いのツテを使って調べてくれたそうだ。
肩肘を張らない、自然な時間を過ごしたかったらしい。
圭子はちはるの気遣い、センスに感動した。
にこにこと笑うちはるを見ながら、圭子はさらに強く彼に惹かれるのを感じた。
同じ店内、別のカップルの会話。
女「おいしい!!」
男「よかった。今日のために気を遣わなくて美味しいお店を、知り合いに聞いておいたんだ。」
女「嬉しい、ありがとうね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とある村、青年のノート。
「年上女性は高級な店に慣れている。
デートには地元の人が知っているような、安いが美味い店を選び、肩肘をはらない時間を作る。」
「店の候補。〇〇港町、△△海鮮丼屋。…………」
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