【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。

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本編

第二十九話 運命はいつだって残酷・エミリー視点②

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 でもね、最初はアリアの従姉妹として節度を持って接していたわ。
 だけどアイザック様と交流すればする程、思いは強く、深く、そして重くなっていった。
 私には、溢れる思いを止める事なんて出来ない。
 なら、止める必要もないわよね?


 ある日アリアがいない夜会で、アイザック様にこの思いを伝えたらアイザック様は困ったようなお顔で、でも拒否しなかった。
 だから私は、受け入れられたのだとひたすら舞い上がった。

 (アイザック様は私を愛しているんだわ!!)

 それからは、夜会でアリアと一緒にいる貴方に、目線で“全て分かってます”と合図を送った。
 だって、私を愛してるんだもの。横のはお飾りの婚約者なのよね?

 でもいつまでも私を全く優先してくれない貴方にとうとう痺れを切らしつい、侯爵邸に押しかけてしまったの。
 もちろん先触れなしで出向いたのは悪かったと思ってる。でもその日に、アリアとの約束があったのは事前にアリアから聞いて知っていたから。
 だから、私は一縷の望みにかけた。
 もしかしたらアリアがこの状況を目にして、潔く婚約者の座を降りてくれるかもしれないと……。

 アイザック様は、突然押しかけた私を見て酷く動揺していたけれど、私はただ言質が欲しかった。
 私だけを愛してくれると。アリアではなく、私を選んでくれると。

 貴方に人目につかない場所へ連れて行かれ、どうして突然来たのか聞かれた私は不安な気持ちを伝え、抱きしめて愛してると言ってほしいと何度も訴えた。そのうち泣き出した私を見て貴方は、強く抱きしめてくれたでしょう?
 
「君を愛してる」
 
 ずっと求めて、待ち望んでいた言葉もようやくくれたわ。

 (あぁ、アイザック様は私を……私だけを愛してくれているっ!)

 アリアには家柄も容姿も何一つ勝てなかったけど、アイザック様は私を選んでくれた。
 私はアリアに勝ったんだわ……!!


「……っ!もういいだろう!?」
 
 嬉しくて舞い上がっていた私は、その後アイザック様が何を仰っていたのかよく覚えていない。
 このままアイザック様と一緒にいられると喜んでいると、彼は何故か追い立てるように私に屋敷から出るように仰った。

 どうして?
 貴方の愛する人は私でしょう?
 だって、今さっき私を愛してるって言ってくれたじゃない。

 アイザック様の態度には不安になったけど、私は大丈夫。だって愛されているんだから。
 私とアリアは違う。愛されてもいないアリアとは違うのよ。

 それにしても、アイザック様に抱きしめられているところをアリアに見てもらえなかったのは残念だったわ。
 アリアじゃなくて、私がアイザック様の妻になりたいのに。
 あの茶会の後もアイザック様から一向に連絡がなくてやきもきしたけれど、アリア自身が身の程を弁えて身を引いてくれたのは良かったわ。
 それなのに、さっきから一体何が起きているの?

 アリアは政略の相手であって、そこに愛はないんでしょう?
 ねぇ、アイザック様。 私を。私だけを愛しているのよね?

 そして私は一つの答えに辿り着いてしまった。

「アイザック様が愛してるのはこの私でしょう?なのにどうしてさっきからおかしな言葉が聞こえてくるの?」
「私は君を愛した事は一度もない。あの日だって突然押しかけてきた貴女を一秒でも早く我が家から出ていってもらう為にあんな芝居をしたんだ……そのせいで私は、「違うでしょう?」」
「アイザック様が愛しているのは私でしょう?アリアなんかじゃないわ。あ、叔父様がいるからそんな見え透いた嘘を吐くのね」

 恥ずかしがって否定ばかりするアイザック様。本当に愛おしいわ。
 でも後で二人きりになった時にそんな態度を取られて傷付いた事は伝えないと。
 私達は間違いなく愛し合ってる。だから良い事も悪い事も伝えないといけないわよね。
 でも私、さっきから一つだけとても嫌な気分になってる事があるのよ。


 せっかく邪魔者アリアがいなくなったのに、どうしてもっと嬉しそうにしないの?
 私達、ようやく一緒になれるのに。

 きっとアイザック様は恥ずかしがっているだけ。後でまた前みたいに抱きしめてくれるわ。
 今度は口付けだってしてくれるかもしれない。

 さっき叔父様が二人は愛し合ってるなんて真実を口にしたからね。
 きっと二人きりになったら、いつものアイザック様に戻ってくれるわ。だってそうじゃないとおかしいもの。
 私じゃなくてアリアを愛してるなんて、そんな事実あるわけないわ。

 だってアイザック様は、私を……エミリーを愛しているんだもの——。
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