【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。

文字の大きさ
37 / 71
本編

第三十七話 王都での日々①ー2

しおりを挟む


ノアと家の中を探索してみて思った事が一つある。
 それはこの家はやはり広すぎるのではないかという事。この家に来た当初ノアから私の知識が間違っている事を指摘されたけれど、改めて見てみても王族の私的な空間と言っても差し支えないくらいの広さと豪華さだった。
 クレイン侯爵邸しか知らない私でもこの数え切れない程の部屋数と三階建でもワンフロアの隅から隅まで目視で確認出来ない程の広さが異常な事くらいは分かる。
 全ての部屋を見る事は時間的に難しいのは理解しているので、その中でも重要な部屋だけ案内してもらった。中でも一般的な家に王家主催の夜会で使用される程の大広間は必要なのだろうか?、
 更に調度品一つとっても、とてもではないがクレイン侯爵家ですら手が出ない物ばかりだった。
 茶会で公爵家に招待された事も何度かあったが、王族の次に位置する我が国の公爵家でさえもここまで立派な調度品は置いていなかった。

 私は王族の私的な空間に入った事はなかったけれど、少なくとも高位貴族の屋敷ですらここまで立派な造りはしていない。
 明らかにおかしいと思った私は再びノアにこの疑問を投げかけてみる事にした。

「ねぇ、ノア。私やっぱりこの家が王都の方達が暮らす家だとは思えないわ」
「みんなこんな感じの家に住んでるけどな。他の家が気になるのか?」
「ノアを疑っているわけではないのよ。ただこんなに立派な造りなのに、外観はもっと小さい佇まいの家だったでしょう?それにこの部屋数では小さな家には入りきらないのではないかしら?」
「そりゃ見かけが立派だったら、犯罪に巻き込まれる事もあるからだろ。アリア、そんなに気になるなら他の家も見に行ってみるか?」
「見る事が出来るの?」
「あぁ、簡単だ。人が住んでない空き家とかを覗けばいい」
「……でも勝手に人様の家を覗いたりしていいのかしら?」
「そこは俺がどうにかするから心配しなくていい。だからアリアはただやりたい事を素直に教えてくれ。アリアの望む事は俺が全部叶えてやるから」
「っ!?」
「アリアは俺の主人だろ?その主人の望みを叶えるのが召喚された俺の仕事だ」

 そう言って口角を上げ笑ったノアが、何故だか私にはとても幸せそうに映った。

 ……人間である私の言う事を聞くなんて悪魔にとっては屈辱ではないの?
 どうして、いつもいつも私の本当に欲しいものを与えてくれるのがノアなんだろう。
 そして、どうしてノアの幸せそうな顔を見て私はこんなにも胸がときめくんだろう。


 きっとその答えはもう、本当にすぐそこまで出かかっている気がする。
 でもいつかこの気持ちに合う名前を知ったら私は後戻り出来るのだろうか?
 でも認めてしまった先にある私の未来は絶望しかない。
 だから今はまだこの気持ちに厳重に鍵をかけて蓋をする。

 これ以上を望むなんてきっとバチが当たる気がするから。

 そしてノアに連れられ王都にある数軒の空き家を見て回ると、どの家も私が住んでいる家と遜色がない程の豪華さだった。
 確かにノアが言っていた様に家の外観は質素だったが、一歩足を踏み入れるとそこには全く違う景色が広がっていた。

 どの家も調度品から間取りまで息を呑む程の煌びやかな光景だった。
 これだけ華やかだったら、確かに家の外観まで同じ様に煌びやかな造りにしていたら、悪い人間に目を付けられてもおかしくはない。
 私はようやく納得し、ノアにお礼を言った。

「確かにノアの言う通りだったわ。私、自分の勉強不足が恥ずかしいわ」
「別に恥じる事はないだろ。アリアは何も知らなかったわけだし、現にこうやって自分の目で確かめて一つ学んだんだ。偉いなアリア」

 そう言って優しく頭を撫でてくれるノアに、私は自分の心に着実に芽吹き始めているこの名前も分からない想いに目を背け、目を瞑りその場を素直に身を任せた。
しおりを挟む
感想 133

あなたにおすすめの小説

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ

恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。 王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。 長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。 婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。 ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。 濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。 ※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています

二度目の恋

豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。 王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。 満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。 ※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

誰も愛してくれないと言ったのは、あなたでしょう?〜冷徹家臣と偽りの妻契約〜

山田空
恋愛
王国有数の名家に生まれたエルナは、 幼い頃から“家の役目”を果たすためだけに生きてきた。 父に褒められたことは一度もなく、 婚約者には「君に愛情などない」と言われ、 社交界では「冷たい令嬢」と噂され続けた。 ——ある夜。 唯一の味方だった侍女が「あなたのせいで」と呟いて去っていく。 心が折れかけていたその時、 父の側近であり冷徹で有名な青年・レオンが 淡々と告げた。 「エルナ様、家を出ましょう。  あなたはもう、これ以上傷つく必要がない」 突然の“駆け落ち”に見える提案。 だがその実態は—— 『他家からの縁談に対抗するための“偽装夫婦契約”。 期間は一年、互いに干渉しないこと』 はずだった。 しかし共に暮らし始めてすぐ、 レオンの態度は“契約の冷たさ”とは程遠くなる。 「……触れていいですか」 「無理をしないで。泣きたいなら泣きなさい」 「あなたを愛さないなど、できるはずがない」 彼の優しさは偽りか、それとも——。 一年後、契約の終わりが迫る頃、 エルナの前に姿を見せたのは かつて彼女を切り捨てた婚約者だった。 「戻ってきてくれ。  本当に愛していたのは……君だ」 愛を知らずに生きてきた令嬢が人生で初めて“選ぶ”物語。

処理中です...