54 / 71
本編
第五十四話 思わぬ再会⑥
しおりを挟む「ノーラ、貴女用事があったのではなくて?私といても大丈夫なの?」
「ええ!お連れ様に大切なお嬢様を引き渡すまでノーラは決してここを離れません!」
「ノーラありがとう」
私はそっと隣にいるノーラを抱きしめた。
この明るさに何度も救われて来た、その感謝を込めて。
「お、お嬢様!?」
「私はお嬢様じゃないわ。貴女と同じよ」
「……じゃあ、あの、抱きしめても?」
「ええ、もちろんよ」
おずおずと抱きしめ返してくれるノーラに、止まった筈の涙が溢れてくる。
「ノーラに何度も救われて来たわ。この思いに嘘はないわ。ありがとうノーラ」
「っ、お嬢様……私のお慕いする主は今も昔も、そしてこれからも未来永劫アリアお嬢様だけです」
一目も憚らず、しばらく二人で泣きながら抱き合っていた。
そしてお互いの顔をみて私達は声を上げて笑った。
「お嬢様、酷い顔になってます。これじゃ綺麗な顔が台無しですよ」
「ノーラも目が真っ赤だわ」
「「ふふっ」」
こうしてノーラに会う事が出来て本当に良かった。
今日ノーラに会わせてくれたノアには感謝してもしきれない。
今無性にノアに逢いたい。
ノーラと会ってから全く姿を見ない事に少しだけ不安になる。
そんな風に考えていると、どこからか風に乗ってずっと聞きたかった声が聞こえてきた。
「リア」
この声を聞き間違える筈がない。
彼の事を考えた瞬間にタイミング良く声を掛けてくれるなんて。
私はその声の方向へゆっくり振り向いた。
「ノア」
「迎えに来た。帰ろう」
「ええ」
「お嬢様、この方が?」
「ええ、そうよ。紹介するわね、私を助けてくれたノアよ」
「は、初めまして!」
「ノア、私の侍女をしてくれていたノーラよ」
「初めまして。リアが言ってた侍女はお前か」
「は、はい、そうです!えっと、あの。失礼は承知で申し上げたい事があるのですが」
「なんだ」
「貴方は、お嬢様を生涯大切にして下さるのでしょうか」
「ちょ、ちょっとノーラ!?」
「元婚約者様の様にお嬢様を傷付ける事があるならこれ以上お嬢様の側にいるのを辞めていただきたいんです‼︎」
「……」
「お嬢様は元婚約者様の事でとても傷付きました。私は当時その場にいたからこそ、お嬢様がどれ程傷付いていらしたか分かります。私は貴方を知りません。だからこそ教えて下さい。お嬢様を生涯大切に出来るんですか?」
今のノアは一言声をかけるのも震える程の空気を纏っている。
私でも少し怖いと感じるくらいなのに、目の前にいるノーラはどれ程怖いんだろうか。
顔色は真っ青だけれど、ノーラがノアを見る目だけは確かな意志の強さを感じた。
「俺には生涯リアだけだ。他はいらない」
「っ!」
「……その言葉を信じろと言うのですか?」
「ははっ、今の俺を目の前にしても怯まないのか。お前のリアへ対する忠誠心だけは確かなようだな。よし、じゃあリアが元気にしているかお前にだけは定期的に知らせてやる」
「な、何なんですか、何でこんなに偉そうなんですか!?」
「まぁ、実際俺は偉いからな」
「何でっこんな男にお嬢様をっ」
「ノーラ落ち着いて、ノア……彼は本当に良い人なのよ」
「お嬢様には良い人なんでょうけど、態度が気に入りません」
「てか、もういいか?いい加減リアを返してくれ」
「お嬢様はものではありません‼︎」
「いや、俺のものだけど。なあリア?」
ノアに微笑まれ、ノーラはノアに対して憤慨している様だけど、私は――、
「私はノアのものよ」
「……お嬢様」
「あの日、侯爵邸を出た時からずっとノアのものなのよ」
「そ、それでいいんですか?」
「ええ、後悔してないわ」
私の返答を聞いて、ノーラは何か言いたそうな表情をしていたけれど最後には覚悟を決めたような表情に変わった。
「お嬢様は幸せなんですよね?」
「ええ、とても」
この一年は私にとってかけがえのない宝物だ。
一年後魂をノアに捧げてもこの幸せな記憶だけは忘れたくない。
「お嬢様が幸せならノーラはこれ以上何も言いません。ですが、何かあったら今度こそ私を頼って下さいね」
「ええ、必ず」
最後までノーラはノアに対して警戒心をあらわにしていたけれど、それでも最後には何も言わなかった。
広場を出て家までの帰り道ノアと手を繋いで帰る。
「ノア、今日は本当にありがとう」
「リアの憂いが晴れて俺としても良かったからな。それにリアは俺のだろ?」
そう、私はあと一年でノアに魂を差し出す。
でももう心残りはない。こうしてノーラにも会え、ノアとも楽しい時間を過ごしてる。
もうこれ以上は望んだりしない。
だから、
「ええ、私はノアのものよ」
もう迷ったり悲しんだりしない。
残りの時間を全力で生きていく。後悔のないように、未練が残らない様に。
「ねえ、私今度はスイーツも作ってみたいわ!」
「ああ、リアが食べたい物を作ろう」
ノアと過ごす残りの時間をかけがえのない宝物にする為に。
217
あなたにおすすめの小説
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。
戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。
愛人はリミアリアの姉のフラワ。
フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。
「俺にはフラワがいる。お前などいらん」
フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。
捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。
侯爵令嬢ソフィアの結婚
今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚したが、これは金が欲しいソフィアの父の思惑と高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない
そもそもヴィンセントには美しい恋人がいる
美男美女と名高いヴィンセントとその恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ
その事をソフィアも耳にしており、この結婚が形ばかりのものであることを知っていた
結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら家に住むように言われて…
表紙はかなさんです✨
ありがとうございます😊
2024.07.05
私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~
marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」
「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」
私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。
暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。
彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。
それなのに……。
やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。
※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。
※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。
貴方の運命になれなくて
豆狸
恋愛
運命の相手を見つめ続ける王太子ヨアニスの姿に、彼の婚約者であるスクリヴァ公爵令嬢リディアは身を引くことを決めた。
ところが婚約を解消した後で、ヨアニスの運命の相手プセマが毒に倒れ──
「……君がそんなに私を愛していたとは知らなかったよ」
「え?」
「プセマは毒で死んだよ。ああ、驚いたような顔をしなくてもいい。君は知っていたんだろう? プセマに毒を飲ませたのは君なんだから!」
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる