【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。

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本編

第五十四話 思わぬ再会⑥

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「ノーラ、貴女用事があったのではなくて?私といても大丈夫なの?」
「ええ!お連れ様に大切なお嬢様を引き渡すまでノーラは決してここを離れません!」
「ノーラありがとう」

 私はそっと隣にいるノーラを抱きしめた。
 この明るさに何度も救われて来た、その感謝を込めて。

「お、お嬢様!?」
「私はお嬢様じゃないわ。貴女と同じよ」
「……じゃあ、あの、抱きしめても?」
「ええ、もちろんよ」

 おずおずと抱きしめ返してくれるノーラに、止まった筈の涙が溢れてくる。

「ノーラに何度も救われて来たわ。この思いに嘘はないわ。ありがとうノーラ」
「っ、お嬢様……私のお慕いする主は今も昔も、そしてこれからも未来永劫アリアお嬢様だけです」

 一目も憚らず、しばらく二人で泣きながら抱き合っていた。
 そしてお互いの顔をみて私達は声を上げて笑った。

「お嬢様、酷い顔になってます。これじゃ綺麗な顔が台無しですよ」
「ノーラも目が真っ赤だわ」
「「ふふっ」」

 こうしてノーラに会う事が出来て本当に良かった。
 今日ノーラに会わせてくれたノアには感謝してもしきれない。
 今無性にノアに逢いたい。
 ノーラと会ってから全く姿を見ない事に少しだけ不安になる。
 そんな風に考えていると、どこからか風に乗ってずっと聞きたかった声が聞こえてきた。

「リア」

 この声を聞き間違える筈がない。
 彼の事を考えた瞬間にタイミング良く声を掛けてくれるなんて。
 私はその声の方向へゆっくり振り向いた。

「ノア」
「迎えに来た。帰ろう」
「ええ」
「お嬢様、この方が?」
「ええ、そうよ。紹介するわね、私を助けてくれたノアよ」
「は、初めまして!」
「ノア、私の侍女をしてくれていたノーラよ」
「初めまして。リアが言ってた侍女はお前か」
「は、はい、そうです!えっと、あの。失礼は承知で申し上げたい事があるのですが」
「なんだ」
「貴方は、お嬢様を生涯大切にして下さるのでしょうか」
「ちょ、ちょっとノーラ!?」
「元婚約者様の様にお嬢様を傷付ける事があるならこれ以上お嬢様の側にいるのを辞めていただきたいんです‼︎」
「……」
「お嬢様は元婚約者様の事でとても傷付きました。私は当時その場にいたからこそ、お嬢様がどれ程傷付いていらしたか分かります。私は貴方を知りません。だからこそ教えて下さい。お嬢様を生涯大切に出来るんですか?」

 今のノアは一言声をかけるのも震える程の空気を纏っている。
 私でも少し怖いと感じるくらいなのに、目の前にいるノーラはどれ程怖いんだろうか。
 顔色は真っ青だけれど、ノーラがノアを見る目だけは確かな意志の強さを感じた。

「俺には生涯リアだけだ。他はいらない」
「っ!」
「……その言葉を信じろと言うのですか?」
「ははっ、今の俺を目の前にしても怯まないのか。お前のリアへ対する忠誠心だけは確かなようだな。よし、じゃあリアが元気にしているかお前にだけは定期的に知らせてやる」
「な、何なんですか、何でこんなに偉そうなんですか!?」
「まぁ、実際俺は偉いからな」
「何でっこんな男にお嬢様をっ」
「ノーラ落ち着いて、ノア……彼は本当に良い人なのよ」
「お嬢様には良い人なんでょうけど、態度が気に入りません」
「てか、もういいか?いい加減リアを返してくれ」
「お嬢様はものではありません‼︎」
「いや、俺のものだけど。なあリア?」

 ノアに微笑まれ、ノーラはノアに対して憤慨している様だけど、私は――、

「私はノアのものよ」
「……お嬢様」
「あの日、侯爵邸を出た時からずっとノアのものなのよ」
「そ、それでいいんですか?」
「ええ、後悔してないわ」

 私の返答を聞いて、ノーラは何か言いたそうな表情をしていたけれど最後には覚悟を決めたような表情に変わった。

「お嬢様は幸せなんですよね?」
「ええ、とても」

 この一年は私にとってかけがえのない宝物だ。
 一年後魂をノアに捧げてもこの幸せな記憶だけは忘れたくない。

「お嬢様が幸せならノーラはこれ以上何も言いません。ですが、何かあったら今度こそ私を頼って下さいね」
「ええ、必ず」

 最後までノーラはノアに対して警戒心をあらわにしていたけれど、それでも最後には何も言わなかった。
 広場を出て家までの帰り道ノアと手を繋いで帰る。

「ノア、今日は本当にありがとう」
「リアの憂いが晴れて俺としても良かったからな。それにリアは俺のだろ?」

 そう、私はあと一年でノアに魂を差し出す。
 でももう心残りはない。こうしてノーラにも会え、ノアとも楽しい時間を過ごしてる。
 もうこれ以上は望んだりしない。
 だから、

「ええ、私はノアのものよ」

 もう迷ったり悲しんだりしない。
 残りの時間を全力で生きていく。後悔のないように、未練が残らない様に。

「ねえ、私今度はスイーツも作ってみたいわ!」
「ああ、リアが食べたい物を作ろう」

 ノアと過ごす残りの時間をかけがえのない宝物にする為に。
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