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王都都立図書館ビブライオ
新米司書リャオル
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―今日も、王都は平和です。
アドニア王国の首都アクロにある超巨大複合施設の前には、少し緊張した面持ちの男が立っていた。
アクロの面積は、およそ500平方キロメートルほどであるが、その8割近くをこの施設が占めているのだ。
そんな超巨大建造物の前に立つ男の姿はあまりにもちっぽけに見える。
この男の名前は『リャオル・リベラ』。
500万分の1の採用試験に合格し、本日からこの建物にある王立図書館『ビブライオ』で働くことになっているのだ。
正直、彼はなぜ自分が合格したのかがわからなかった。
彼は特に優位な資格を持っているわけではない。
優れた家系の出身というわけでもない。
もちろんコネなどもなく、あくまで平々凡々な出身の平々凡々な成績を持つ平々凡々な青年なのだ。
ただ本が好き、そんな理由だけで応募した図書館司書の募集に合格してしまったという訳である。
複合施設に入ると、中には魔動列車の線路が幾筋も並んでいる。
施設があまりにも広いため、建物内の移動はこの魔動列車で行うのだ。
もちろん、転移といった移動魔術を使うことができる人はそれを利用することも可能なのだが、多くの人はこの魔動列車を利用して移動を行っている。
リャオルは、すぐ目の前の総合案内へ足を運ぶ。
いくら職員とはいえ、本日が初出勤の彼はまだ職員用のパスを受け取っていないのだ。
採用通知書には、出勤したらまずこの総合案内に行く旨が記載されていたため、それに従った。
「あの、すみません。本日からビブライオで働くことになっておりますリャオル・リベラです。」
朝8つの鐘が鳴ったばかりとはいえ、複合施設であるここは利用者の数も多いのだ。
もちろん優秀な人材ばかりが登用されているのですぐに案内も完了するが、リャオルが声をかけることができたのは列に並び始めてから体感時間でおよそ5分後だった。
職員は、あぁ、伺っておりますよ、と声を発すると、目の前の機械になにやら打ち込む。
職員が文字を打ち込み、リャオルに向き直るとカウンターの上にある魔法陣が淡い光を放ち始めた。
リャオルは慣れた動作でその上に手をかざす。
すると、白い光を放っていたそれは淡い白から青色へと変化する。
これは登録された情報と本人が一致したことを示している。
この世界で生まれたすべての生き物は、1つの例外もなく魔力を持っているのだ。
もちろん、才能によってその魔力を引き出すことができるかどうかは変わってくるのだが。
とにかく万人が持つこの魔力は、人によってパターンが異なっている。
そのため、生まれたときに登録された魔力パターンがそのまま本人確認などの公的なものに利用されているのだ。
そしてこの魔力パターンは一卵性双生児であったとしても異なるパターンが出力されるため、100%の精度で自他を分別することができる。
「ではこれをお持ちください。8番の窓口から魔動列車に乗り、終点までお進みくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
この施設では犯罪を防ぐため、無用の場所には立ち入れないようにしている。
すべての利用者はこの総合案内を利用し、利用目的を述べてからその人に必要なルートだけを利用できるようにパスで管理されているのだ。
このパスというのは切符のようなものであり、その人の利用可能な目的地以外で出ようとすればエラーが起きるシステムになっている。
それは職員も例外ではなく、職員専用パスも無用の場所には立ち入れないようになっているのだ。
魔動列車8番窓口はビブライオ専用の線路である。
いくつか駅が用意されており、それぞれのジャンルごとに分かれている。
各駅にはそれぞれカウンターが設置されていて、どこでも好きな本の貸出手続きを行うことができるため、利用者で混雑しすぎることはない。
その中でも終点だけはリャオルが向かったことのない駅であった。
なぜなら、終点は職員専用の駅だからである。
本が大好きで毎日のように通っていた自分が見たことのない世界…。
リャオルはこれからの不安と期待の入り混じった目で、魔動列車に乗り込むのを今か今かと待っているのであった。
アドニア王国の首都アクロにある超巨大複合施設の前には、少し緊張した面持ちの男が立っていた。
アクロの面積は、およそ500平方キロメートルほどであるが、その8割近くをこの施設が占めているのだ。
そんな超巨大建造物の前に立つ男の姿はあまりにもちっぽけに見える。
この男の名前は『リャオル・リベラ』。
500万分の1の採用試験に合格し、本日からこの建物にある王立図書館『ビブライオ』で働くことになっているのだ。
正直、彼はなぜ自分が合格したのかがわからなかった。
彼は特に優位な資格を持っているわけではない。
優れた家系の出身というわけでもない。
もちろんコネなどもなく、あくまで平々凡々な出身の平々凡々な成績を持つ平々凡々な青年なのだ。
ただ本が好き、そんな理由だけで応募した図書館司書の募集に合格してしまったという訳である。
複合施設に入ると、中には魔動列車の線路が幾筋も並んでいる。
施設があまりにも広いため、建物内の移動はこの魔動列車で行うのだ。
もちろん、転移といった移動魔術を使うことができる人はそれを利用することも可能なのだが、多くの人はこの魔動列車を利用して移動を行っている。
リャオルは、すぐ目の前の総合案内へ足を運ぶ。
いくら職員とはいえ、本日が初出勤の彼はまだ職員用のパスを受け取っていないのだ。
採用通知書には、出勤したらまずこの総合案内に行く旨が記載されていたため、それに従った。
「あの、すみません。本日からビブライオで働くことになっておりますリャオル・リベラです。」
朝8つの鐘が鳴ったばかりとはいえ、複合施設であるここは利用者の数も多いのだ。
もちろん優秀な人材ばかりが登用されているのですぐに案内も完了するが、リャオルが声をかけることができたのは列に並び始めてから体感時間でおよそ5分後だった。
職員は、あぁ、伺っておりますよ、と声を発すると、目の前の機械になにやら打ち込む。
職員が文字を打ち込み、リャオルに向き直るとカウンターの上にある魔法陣が淡い光を放ち始めた。
リャオルは慣れた動作でその上に手をかざす。
すると、白い光を放っていたそれは淡い白から青色へと変化する。
これは登録された情報と本人が一致したことを示している。
この世界で生まれたすべての生き物は、1つの例外もなく魔力を持っているのだ。
もちろん、才能によってその魔力を引き出すことができるかどうかは変わってくるのだが。
とにかく万人が持つこの魔力は、人によってパターンが異なっている。
そのため、生まれたときに登録された魔力パターンがそのまま本人確認などの公的なものに利用されているのだ。
そしてこの魔力パターンは一卵性双生児であったとしても異なるパターンが出力されるため、100%の精度で自他を分別することができる。
「ではこれをお持ちください。8番の窓口から魔動列車に乗り、終点までお進みくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
この施設では犯罪を防ぐため、無用の場所には立ち入れないようにしている。
すべての利用者はこの総合案内を利用し、利用目的を述べてからその人に必要なルートだけを利用できるようにパスで管理されているのだ。
このパスというのは切符のようなものであり、その人の利用可能な目的地以外で出ようとすればエラーが起きるシステムになっている。
それは職員も例外ではなく、職員専用パスも無用の場所には立ち入れないようになっているのだ。
魔動列車8番窓口はビブライオ専用の線路である。
いくつか駅が用意されており、それぞれのジャンルごとに分かれている。
各駅にはそれぞれカウンターが設置されていて、どこでも好きな本の貸出手続きを行うことができるため、利用者で混雑しすぎることはない。
その中でも終点だけはリャオルが向かったことのない駅であった。
なぜなら、終点は職員専用の駅だからである。
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リャオルはこれからの不安と期待の入り混じった目で、魔動列車に乗り込むのを今か今かと待っているのであった。
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