4 / 24
大学って寛容なんだなあ
しおりを挟む
「なんでこうなったんだろう……」
話を聞いた翌日、僕は件の大学に来ていた。もちろん、奈央やアル、レイも一緒に……だ。
「そりゃ、七不思議に関連して失踪した新井慎二の事件を解決する為に――でしょ?」
楽しそうに言う奈央に、僕は頭が痛くなってきた。
「うん……言い方を変えよう。どうして僕達はこんな恰好をしているのかな!?」
「ん? いつもとあまり変わらんではないか。何をそんなに声を荒げているのだ?」
アルが黒いマントを翻しながら不思議そうに呟く。
日差しに弱いアルは、いつもならこのマントに加え、黒い日傘とサングラスを着用する。しかし、曇りであるという事と、ハロウィンの為に妖力が高くなっているという事で、この二つは使用していない。その分、かなり怪しさは減っているのだが……問題はそこではない。
「アルは別に良いかもしれないけど、レイは僕の気持ち分かってくれるよね!」
僕達の一歩後ろの方で怠そうに歩くレイの方を振り向く。彼は現在、顔や首、腕などに包帯を巻きつけた状態である。……一応、ミイラ男の仮装中とのことだ。
「ん? 暑くないなら……別に良い」
レイの一言に軽くショックを受けている僕に対し、奈央がトドメを刺す。
「もう、鳴海は往生際が悪いなあ。アルもレイも気にしてないじゃん!」
頬を膨れさせながら言う彼(?)は、現在、黒い猫耳としっぽを付け、ピンクと白を基調とした可愛らしい甚平を着ている。
「レイ……君までそんな事言っちゃうの……」
もう、ため息しか出てこない。――というのも、僕は今、人間の姿に狐耳としっぽだけ出した姿になって、黄色と黒を基調とした甚平を着ているからだ。正直、頭上にあるモッフモフの生獣耳とフッサフサの本物のしっぽがうっかり動いてしまわないか不安だし、普段はしっかり人間に化けているので、中途半端な化け方に違和感があって落ち着かない。
奈央いわく、『ハロウィンの仮装』という事らしい。ちなみに、奈央の今日の講義は、教授の都合により休みになったようだ。
「そもそも大学って勉学に励む所なんだよね? こんなコスプレした珍妙な輩がゾロゾロと入っていったらダメなんじゃないの!?」
「去年もコスプレして講義に参加したけど、教授に『頭に被ってる物は後ろの学生の邪魔になるから外しなさい』って言われただけだったから、大丈夫だよ~、鳴海は真面目だなあ」
「既に実施済み!? てか、教授怒んないの!? 真面目に授業を受けなさいって怒っても良い所だよね!? むしろ、そうであってほしかった!!」
「うちの大学だからってこともあるかもだけど、服装は個人の自由だし、別に講義の妨害をしてる訳じゃないから怒られはしないよ? あと、大学関係者じゃない外部の人の受け入れに関して規制もないから、たぶん学生に混じって講義受けててもバレないんじゃないかな?」
「え、流石にそれはバレるんじゃないかな? だって出欠確認とか取るだろうし……?」
「出欠確認は紙回して記入式が多いから書いたフリして次に回せば良いし、頑張れば出来ると思うなあ。あ、でも、各学科の専門講義だったら人数も少なくて教授も学生覚えてる可能性もあるから、オススメは全学科が選択できる教養の講義かな☆ なんせ、人が多いからね!」
「いや、オススメされても講義は受けないからね!? 学費払ってもないのに講義を受けるなんて良心痛みまくりだから絶対しないよ!!」
「アハハ、鳴海らしい理由だなあ。ボクなら『勉強がそんなに好きなわけじゃないから、そもそもそこまでして単位も貰えない講義を受けはしないよね』って言うところだなあ。まあ、これで鳴海の心配事は綺麗サッパリ消えたよね――と言う訳で、改めてこの格好でレッツゴー!!」
「はあ、心配事はまだまだ盛り沢山だよ……」
(今日はせっかくカフェのバイトが休みだったのになあ……)
鼻歌交じりに歩いていく奈央に置いていかれないように重い足を動かし、疲れる一日になりそうだなあと思いながら、僕は再度諦めの意を込めて深いため息をついた。
「あ、ここの棟だよ!」
奈央の元気な声に反応し、そちらを見やると、ちょっと重苦しい雰囲気を放った灰色の建物があった。
「何だか木が多くて陰気な感じだな!」
「ハハ、まあ、陰気なのは本当だが、この木々にはいろんな想いが詰まっているんだ。そう言ってくれるな」
アルが端的な感想を述べると、突然明るい男の声が聞こえた。
振り返ると、くすんだ赤に近い髪色のお兄さんがこちらに向かってゆっくりと歩いてきている所だった。その手の中には茶色い紙袋があり、風に乗ってかすかに絵の具の匂いがした。その男の姿を認めた奈央が、声を上げる。
「あ、田辺先生! 今、話を聞きに行こうと思っていたところだったので、ここで会えて良かったです」
「ん? ああ。神宮寺か。 わりーが、七不思議の件は昼休みにしてくれ。今からちょっと仕事なんだ」
田辺と呼ばれた男は申し訳なさそうに笑った。どうも奈央は事前に手を回していたらしい。
(本当に抜け目がないな……)
僕がそんな事を考えていると、レイがポツリと呟く。
「想いが詰まってる……って、何?」
その言葉を受け、田辺が口を開く。
「ああ。この木々は卒業生達が植えていったものなんだ。木の根元に何期生って書いた立札があるだろ?」
「おう! 確かにあるな。だが、何本か倒れたり折れたりしているぞ? しかも、これは……」
アルが言った通り、根元にある草は何者かに踏み荒らされた後のようで、立札も無残な姿と化していた。しかも、アルが今見ている木の幹には、何やら奇怪な模様が描かれていた。
「げっ――こりゃ酷いな。これは一応ここの卒業生の伝統らしいのに……うん。見なかった事にするか!」
田辺は最後にそれじゃあ、また後でと言う言葉を残し、そのまま面倒事から逃げるように向かって左側の工学部研究棟の中に入っていった。
(先生としてそれで良いのか……あ、そういえば、この格好に全然ツッコミも入れられなかったなあ。大学って寛容なんだなあ)
改めて奈央が言っていた【服装は個人の自由】に納得しつつ、僕達は田辺が入った研究棟に隣接する棟に入っていったのだった……。
話を聞いた翌日、僕は件の大学に来ていた。もちろん、奈央やアル、レイも一緒に……だ。
「そりゃ、七不思議に関連して失踪した新井慎二の事件を解決する為に――でしょ?」
楽しそうに言う奈央に、僕は頭が痛くなってきた。
「うん……言い方を変えよう。どうして僕達はこんな恰好をしているのかな!?」
「ん? いつもとあまり変わらんではないか。何をそんなに声を荒げているのだ?」
アルが黒いマントを翻しながら不思議そうに呟く。
日差しに弱いアルは、いつもならこのマントに加え、黒い日傘とサングラスを着用する。しかし、曇りであるという事と、ハロウィンの為に妖力が高くなっているという事で、この二つは使用していない。その分、かなり怪しさは減っているのだが……問題はそこではない。
「アルは別に良いかもしれないけど、レイは僕の気持ち分かってくれるよね!」
僕達の一歩後ろの方で怠そうに歩くレイの方を振り向く。彼は現在、顔や首、腕などに包帯を巻きつけた状態である。……一応、ミイラ男の仮装中とのことだ。
「ん? 暑くないなら……別に良い」
レイの一言に軽くショックを受けている僕に対し、奈央がトドメを刺す。
「もう、鳴海は往生際が悪いなあ。アルもレイも気にしてないじゃん!」
頬を膨れさせながら言う彼(?)は、現在、黒い猫耳としっぽを付け、ピンクと白を基調とした可愛らしい甚平を着ている。
「レイ……君までそんな事言っちゃうの……」
もう、ため息しか出てこない。――というのも、僕は今、人間の姿に狐耳としっぽだけ出した姿になって、黄色と黒を基調とした甚平を着ているからだ。正直、頭上にあるモッフモフの生獣耳とフッサフサの本物のしっぽがうっかり動いてしまわないか不安だし、普段はしっかり人間に化けているので、中途半端な化け方に違和感があって落ち着かない。
奈央いわく、『ハロウィンの仮装』という事らしい。ちなみに、奈央の今日の講義は、教授の都合により休みになったようだ。
「そもそも大学って勉学に励む所なんだよね? こんなコスプレした珍妙な輩がゾロゾロと入っていったらダメなんじゃないの!?」
「去年もコスプレして講義に参加したけど、教授に『頭に被ってる物は後ろの学生の邪魔になるから外しなさい』って言われただけだったから、大丈夫だよ~、鳴海は真面目だなあ」
「既に実施済み!? てか、教授怒んないの!? 真面目に授業を受けなさいって怒っても良い所だよね!? むしろ、そうであってほしかった!!」
「うちの大学だからってこともあるかもだけど、服装は個人の自由だし、別に講義の妨害をしてる訳じゃないから怒られはしないよ? あと、大学関係者じゃない外部の人の受け入れに関して規制もないから、たぶん学生に混じって講義受けててもバレないんじゃないかな?」
「え、流石にそれはバレるんじゃないかな? だって出欠確認とか取るだろうし……?」
「出欠確認は紙回して記入式が多いから書いたフリして次に回せば良いし、頑張れば出来ると思うなあ。あ、でも、各学科の専門講義だったら人数も少なくて教授も学生覚えてる可能性もあるから、オススメは全学科が選択できる教養の講義かな☆ なんせ、人が多いからね!」
「いや、オススメされても講義は受けないからね!? 学費払ってもないのに講義を受けるなんて良心痛みまくりだから絶対しないよ!!」
「アハハ、鳴海らしい理由だなあ。ボクなら『勉強がそんなに好きなわけじゃないから、そもそもそこまでして単位も貰えない講義を受けはしないよね』って言うところだなあ。まあ、これで鳴海の心配事は綺麗サッパリ消えたよね――と言う訳で、改めてこの格好でレッツゴー!!」
「はあ、心配事はまだまだ盛り沢山だよ……」
(今日はせっかくカフェのバイトが休みだったのになあ……)
鼻歌交じりに歩いていく奈央に置いていかれないように重い足を動かし、疲れる一日になりそうだなあと思いながら、僕は再度諦めの意を込めて深いため息をついた。
「あ、ここの棟だよ!」
奈央の元気な声に反応し、そちらを見やると、ちょっと重苦しい雰囲気を放った灰色の建物があった。
「何だか木が多くて陰気な感じだな!」
「ハハ、まあ、陰気なのは本当だが、この木々にはいろんな想いが詰まっているんだ。そう言ってくれるな」
アルが端的な感想を述べると、突然明るい男の声が聞こえた。
振り返ると、くすんだ赤に近い髪色のお兄さんがこちらに向かってゆっくりと歩いてきている所だった。その手の中には茶色い紙袋があり、風に乗ってかすかに絵の具の匂いがした。その男の姿を認めた奈央が、声を上げる。
「あ、田辺先生! 今、話を聞きに行こうと思っていたところだったので、ここで会えて良かったです」
「ん? ああ。神宮寺か。 わりーが、七不思議の件は昼休みにしてくれ。今からちょっと仕事なんだ」
田辺と呼ばれた男は申し訳なさそうに笑った。どうも奈央は事前に手を回していたらしい。
(本当に抜け目がないな……)
僕がそんな事を考えていると、レイがポツリと呟く。
「想いが詰まってる……って、何?」
その言葉を受け、田辺が口を開く。
「ああ。この木々は卒業生達が植えていったものなんだ。木の根元に何期生って書いた立札があるだろ?」
「おう! 確かにあるな。だが、何本か倒れたり折れたりしているぞ? しかも、これは……」
アルが言った通り、根元にある草は何者かに踏み荒らされた後のようで、立札も無残な姿と化していた。しかも、アルが今見ている木の幹には、何やら奇怪な模様が描かれていた。
「げっ――こりゃ酷いな。これは一応ここの卒業生の伝統らしいのに……うん。見なかった事にするか!」
田辺は最後にそれじゃあ、また後でと言う言葉を残し、そのまま面倒事から逃げるように向かって左側の工学部研究棟の中に入っていった。
(先生としてそれで良いのか……あ、そういえば、この格好に全然ツッコミも入れられなかったなあ。大学って寛容なんだなあ)
改めて奈央が言っていた【服装は個人の自由】に納得しつつ、僕達は田辺が入った研究棟に隣接する棟に入っていったのだった……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる