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『皆さん、お静かに』の登場人物の名前
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『皆さん、お静かに』は、2022年の夏に書いた短編小説である。
主人公は一人称が「わー」で、名前が出てこないのだが、
・クメ
・ノブ
・百千
・火気
・畝岩
・魔煎
・粉喰
以上、七名の登場人物が主人公と電話でやり取りをするというのが『皆さん、お静かに』の概要だ。
「」内には、主人公の台詞のみ入れ、電話相手の受け答えは主人公の言葉と地の文からしか想像できないように書いている。つまり、本人たちの台詞によって、七名の人物像を捉えることは不可能なのだ。
さながらギリシャ神話のエコーのように言葉を失った七名の、人間としての骨子はどこにあるのだろう?
モデルである。『皆さん、お静かに』の登場人物は全て、梅木の知り合いがモデルなのだ。作中の主人公との関係も、梅木とモデルになった人物との関係とほぼ一致している。
クメは、私の従姉の名前の最初の一音が「ク」なので、従姉の本当の名前と被らないように、少し弄った。
ノブは、兄の名前と少しも被っていない。作中、電話で怒鳴るところが本人とそっくりなので、名前だけは影も形もないものにした。
自分の血縁をモデルにすると、こんなものである。身内だからオッケーオッケー! ちゃんと名前を考えたのは、漢字で表された五名だ。
百千は、小学校の同級生がモデルだし、執筆当時、彼から生存確認をされたので、登場人物にした。……うーん、さっき「ちゃんと考えたのは五名」などと言ったが、撤回しよう。百千のモデルの名前は、変形に苦心して、全く由来のない名前にしたんだった。
ちゃんと考えたのは、四人。
火気は、モデルの名前が植物に関連するものだったので、植物が浴びたらまずいものとして、火を名前に入れた。
火気のモデルは、同じ中高一貫校に通っていた女の子だが、梅木は少々、好かなかった。モデルの存在を実感したくないがため、彼女とイメージの重ならない名前にしたのだ。
先程の「モデル=骨子」という話とは、矛盾してしまうだろう。
しかし、執筆当時、梅木は火気のモデルに不満を募らせていて、小説で不満を解消せずにはいられなかったのだ。火気の登場の意味するところは、出番が秒で終わるような、虚しい人間関係の描写である。
誰にでもいるだろう、こっちの話「は」聞いてくれない知り合いが。
畝岩も火気と同じく、梅木の通っていた中高一貫校の女の子がモデルだ。畝岩は、モデルの名前に含まれる漢字の成り立ちをそれぞれ調べ、辞典の記述に「畝」と「岩」を見つけたので、畝岩とした。どちらの漢字も、成り立ちそのものを表しているわけではなく、辞書で目に付いたものを採用したに過ぎない。畝岩のモデルは、執筆当時、めちゃくちゃグループL◯NEの通知を鳴らしてたので、登場人物にしてみた。
そして、魔煎神父と粉喰の名前についても、語ることにしよう。
魔煎神父のモデルは、私が通っていた小学校の校長先生兼神父である。「降参」という意味で「まいり」という読みの苗字を思いつき、漢字を当てた。
なぜ降参なのか? それは、魔煎神父への電話を契機に、主人公の敗北が決定するからだ。
『皆さん、お静かに』の結末は、アリの集合体のような怪異が、主人公の身体を乗っ取る(=死)というものだ。
主人公は、魔煎神父に電話をかけたから、侵略を防げなかった。この因果関係については、後述の粉喰に注目していただきたい。
あるいは、魔煎神父は、行くという意味で「まいり」かもしれない。怪異が体内へ疾走するみたいな。きしょっ。
どっちにしても、登場人物の名前が、物語の結末を予言しているということになる。
神父をモデルにしたのは、パニック状態の主人公が声を聞きたがる相手として、昔から親しい神父というのはベストチョイスだと思ったからだ。
なぜ「ベスト」なのかは、梅木が幼児洗礼のカトリック教徒だからとしか言えない。園児の頃から世話になっている神父様なんて、第二の祖父みたいなものだ。声を聞いて不安を解消しようとするのは自然なことである。
そして、粉喰について。彼のモデルは、梅木と同じ教会に通う信者の少年だ。彼も、その後の展開を説明した名前と言えるだろう。
小説本文において、怪異は「粒」などと表現されているが、粒も粉も、細かくて小さいという点では共通している。そして、主人公の肉体を支配せんと、口内に怪異が入り込む様は、「粉」を「喰」らうように見えるので、「粉喰」だ。
粉喰は、これまでの六名とは異なり、主人公「が」電話をかけた相手ではなく、主人公「に」電話をかけた登場人物である。
なんで電話してきたかって、魔煎神父が忙しいときに、主人公が神父に電話をかけてきて、迷惑だと思ったからだ。神父様の貴重な時間を奪うくらいならと、魔煎神父の代わりに主人公の話を聞く奇特な登場人物である。危篤かもしれない。
しかし、粉喰はその奇特さゆえか、主人公の死の遠因になってしまった。主人公は粉喰と話していくうちに不貞腐れ、怪異を踏み潰すのをやめてしまう。すると、人間の虐殺行為から生き延びた怪異は、主人公の体内に入り込み、彼女の肉体を奪うわけだ。
オチまで言っちゃったけども。
主人公は、怪異への対処を諦めるくらい、粉喰との会話が嫌だったんだなー、と思ってほしい。
少なくとも、梅木は、粉喰のモデルとは気まずい関係だし、そういう不快感を誤魔化すために、主人公が死ぬのはいいと思っている。『皆さん、お静かに』の主人公に関しては、と注釈は入れるけれども。
すっかり名前語りから離れてしまったが、拙作『皆さん、お静かに』の登場人物の名前はこんな具合に決まった。読者の皆様は、お楽しみいただけただろうか?
クメやノブ、火気に畝岩など、雰囲気も由来も足並み揃わない名前だったと思う。体系的な名前を付けるのは苦手なもので、登場人物の名前が不揃いなのは、梅木作品の特徴と考えていただきたい。
このエッセイは、梅木の小説の登場人物の名前について、作品ごとに言及するため、連載形式になる。自創作の公式な説明資料のつもりで書いているので、ゆっくり慎重に更新するつもりだ。
次回の更新日、未定!
主人公は一人称が「わー」で、名前が出てこないのだが、
・クメ
・ノブ
・百千
・火気
・畝岩
・魔煎
・粉喰
以上、七名の登場人物が主人公と電話でやり取りをするというのが『皆さん、お静かに』の概要だ。
「」内には、主人公の台詞のみ入れ、電話相手の受け答えは主人公の言葉と地の文からしか想像できないように書いている。つまり、本人たちの台詞によって、七名の人物像を捉えることは不可能なのだ。
さながらギリシャ神話のエコーのように言葉を失った七名の、人間としての骨子はどこにあるのだろう?
モデルである。『皆さん、お静かに』の登場人物は全て、梅木の知り合いがモデルなのだ。作中の主人公との関係も、梅木とモデルになった人物との関係とほぼ一致している。
クメは、私の従姉の名前の最初の一音が「ク」なので、従姉の本当の名前と被らないように、少し弄った。
ノブは、兄の名前と少しも被っていない。作中、電話で怒鳴るところが本人とそっくりなので、名前だけは影も形もないものにした。
自分の血縁をモデルにすると、こんなものである。身内だからオッケーオッケー! ちゃんと名前を考えたのは、漢字で表された五名だ。
百千は、小学校の同級生がモデルだし、執筆当時、彼から生存確認をされたので、登場人物にした。……うーん、さっき「ちゃんと考えたのは五名」などと言ったが、撤回しよう。百千のモデルの名前は、変形に苦心して、全く由来のない名前にしたんだった。
ちゃんと考えたのは、四人。
火気は、モデルの名前が植物に関連するものだったので、植物が浴びたらまずいものとして、火を名前に入れた。
火気のモデルは、同じ中高一貫校に通っていた女の子だが、梅木は少々、好かなかった。モデルの存在を実感したくないがため、彼女とイメージの重ならない名前にしたのだ。
先程の「モデル=骨子」という話とは、矛盾してしまうだろう。
しかし、執筆当時、梅木は火気のモデルに不満を募らせていて、小説で不満を解消せずにはいられなかったのだ。火気の登場の意味するところは、出番が秒で終わるような、虚しい人間関係の描写である。
誰にでもいるだろう、こっちの話「は」聞いてくれない知り合いが。
畝岩も火気と同じく、梅木の通っていた中高一貫校の女の子がモデルだ。畝岩は、モデルの名前に含まれる漢字の成り立ちをそれぞれ調べ、辞典の記述に「畝」と「岩」を見つけたので、畝岩とした。どちらの漢字も、成り立ちそのものを表しているわけではなく、辞書で目に付いたものを採用したに過ぎない。畝岩のモデルは、執筆当時、めちゃくちゃグループL◯NEの通知を鳴らしてたので、登場人物にしてみた。
そして、魔煎神父と粉喰の名前についても、語ることにしよう。
魔煎神父のモデルは、私が通っていた小学校の校長先生兼神父である。「降参」という意味で「まいり」という読みの苗字を思いつき、漢字を当てた。
なぜ降参なのか? それは、魔煎神父への電話を契機に、主人公の敗北が決定するからだ。
『皆さん、お静かに』の結末は、アリの集合体のような怪異が、主人公の身体を乗っ取る(=死)というものだ。
主人公は、魔煎神父に電話をかけたから、侵略を防げなかった。この因果関係については、後述の粉喰に注目していただきたい。
あるいは、魔煎神父は、行くという意味で「まいり」かもしれない。怪異が体内へ疾走するみたいな。きしょっ。
どっちにしても、登場人物の名前が、物語の結末を予言しているということになる。
神父をモデルにしたのは、パニック状態の主人公が声を聞きたがる相手として、昔から親しい神父というのはベストチョイスだと思ったからだ。
なぜ「ベスト」なのかは、梅木が幼児洗礼のカトリック教徒だからとしか言えない。園児の頃から世話になっている神父様なんて、第二の祖父みたいなものだ。声を聞いて不安を解消しようとするのは自然なことである。
そして、粉喰について。彼のモデルは、梅木と同じ教会に通う信者の少年だ。彼も、その後の展開を説明した名前と言えるだろう。
小説本文において、怪異は「粒」などと表現されているが、粒も粉も、細かくて小さいという点では共通している。そして、主人公の肉体を支配せんと、口内に怪異が入り込む様は、「粉」を「喰」らうように見えるので、「粉喰」だ。
粉喰は、これまでの六名とは異なり、主人公「が」電話をかけた相手ではなく、主人公「に」電話をかけた登場人物である。
なんで電話してきたかって、魔煎神父が忙しいときに、主人公が神父に電話をかけてきて、迷惑だと思ったからだ。神父様の貴重な時間を奪うくらいならと、魔煎神父の代わりに主人公の話を聞く奇特な登場人物である。危篤かもしれない。
しかし、粉喰はその奇特さゆえか、主人公の死の遠因になってしまった。主人公は粉喰と話していくうちに不貞腐れ、怪異を踏み潰すのをやめてしまう。すると、人間の虐殺行為から生き延びた怪異は、主人公の体内に入り込み、彼女の肉体を奪うわけだ。
オチまで言っちゃったけども。
主人公は、怪異への対処を諦めるくらい、粉喰との会話が嫌だったんだなー、と思ってほしい。
少なくとも、梅木は、粉喰のモデルとは気まずい関係だし、そういう不快感を誤魔化すために、主人公が死ぬのはいいと思っている。『皆さん、お静かに』の主人公に関しては、と注釈は入れるけれども。
すっかり名前語りから離れてしまったが、拙作『皆さん、お静かに』の登場人物の名前はこんな具合に決まった。読者の皆様は、お楽しみいただけただろうか?
クメやノブ、火気に畝岩など、雰囲気も由来も足並み揃わない名前だったと思う。体系的な名前を付けるのは苦手なもので、登場人物の名前が不揃いなのは、梅木作品の特徴と考えていただきたい。
このエッセイは、梅木の小説の登場人物の名前について、作品ごとに言及するため、連載形式になる。自創作の公式な説明資料のつもりで書いているので、ゆっくり慎重に更新するつもりだ。
次回の更新日、未定!
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