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朝になった。

いつもの筋トレをしてから、食堂に行き、朝食をとる。

……またか。

一人で食べていると、またあの視線に纏われる。

視線だけでこんなに気持ち悪いとは、さっさと食べよう。

一体、何なんだ……

――――――――――――――

部屋へと戻り、筋トレと魔力変形を終わらせた時、部屋をノックする音が聞こえた。

「祐介様、今宜しいでしょうか?」

久しぶりに聞く、メイドさんの声。

「どうぞ」

メイドさんは俺の了承を得ると、小さめの袋を両手で持って、部屋に入ってきた。

「お聞きになっていると思いますが、これから5日間の内に王宮から立ち去って頂きます」

メイドさんは一礼した後、そう静かに告げる。

「……はい、分かりました」

「そして、この世界で一ヶ月は持つ金銭が、この袋に入っておりますのでご活用下さい」

そう言い、袋を渡してくれるメイドさん。

うお、意外と重いなこれ……

「これで、王女様からの伝達は以上です。失礼いたしました」

メイドさんは出ていき、バタンと閉じる扉。

はは……あっという間だったな。

受け取った袋を手に載せたまま、立ち尽くす。

この重みが、王宮から離れる実感を与えてくれる。

いざ旅立とうとしても、まだ心の準備は出来ずにいた。

これのおかげで、良い心の入れ替えになったかもな。

――――――――――――――――

異世界の貨幣は、意外と日本と同じようなものだった。

まあ紙幣はないが。

とりあえず、一ヶ月は持つっていってたし……その分はあるだろう。

うん、まあこんなもんか。

鞄へ詰め込んでと。

よし!素振りだ素振り!

――――――――――――――

少したって昼になり、空腹が襲ったため、食堂へ向かう。


今回は、あの視線はなかった。

おかげでゆっくり食べれたよ……ごちそうさまでした。

ふと、前の夜の出来事を思い出す。

あの時、樹に……

自分の顔が、熱くなっていくのを感じる。

最近会いに行ってないのも、あれが恥ずかしいからだったり。

うん。

もし樹がいなかったら、俺は立ち直ってなかったかもしれないんだよな。

……よし、今日の夜に会いに行こう。

ついでに旅立つことも言うか。

そう決めて、席を立つ。

食堂を出た後、またあの視線に襲われた。

振り向いても誰もおらず。

……気にしすぎ?

なんとも後味が悪い食事だったな。

――――――――――――――――――――

食事を終えた後は、いつものメニューをこなしたが、素振り、筋トレや魔力変形も、調子が悪かった。

悪い予感が何時までも過り、集中できなかったのだ。

そうしている間に、窓の景色はもう暗くなり始めてっている。

早めに食堂行くか、あの視線がない内に。
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