増幅使いは支援ができない

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能力

疾走

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誰もいない食堂で夜ご飯を食べてから、部屋へ戻る。

いやー、今日は散々な一日だったな。

帰ったら何しよう、荷物でも纏めるか。

明日は……図書館でこの世界のことでも調べよう。

何も知らないまま、旅立つのも駄目だしな。

いやそれもありか、放浪旅って感じ?

何も知らない世界を歩き回る、か。

ちょっと良いかも?

うーん悩む……っと着いたな。

部屋へ戻り、バッグに出していた荷物を入れていく。

制服とかも持っていくか。



よし、こんなもんだろう。

荷物も纏め終わったので、スタッフとライターを持って、訓練所へと向かう。

素振りは外でやった方が存分に出来る。

ライターでの火魔法?も練習しとかないとな。

―――――――――――

訓練所にて。

まず魔力変形を軽くしておく。

その後ライターを点火し、手から魔力を放出。

大きさ、熱、勢い全てを上昇させるような。

『火』としての能力を『増幅』する、そんなイメージだ。

「増幅! 」

唱えた言葉とイメージが重なる。

その瞬間、小さな火は、燃え盛る炎へと。

俺の視界が、夜色から朱色に染まり。

「――っ……だめか」

その炎を変形させようとした所で、魔力枯渇が襲ってくる。

やっぱり、まだまだ魔力が足りないな……

回復するまで素振りしとくか。

――――――――――――

……素振り、思わず熱中してしまいました。

時計を見れば、もう午後8時を指している。

うん、いったん帰ろう。

そういや普通に使ってたが、この時計異世界に来てから全く狂っていない。

これも俺の魔法のおかげなのか?

そんなことを考えながら、部屋へと向かう。

っと、ついでに樹に大丈夫か聞いとくか。

―――――――――――

樹の部屋の前。

ノックしてから、声をかける。

「樹、いるかー?」

いつもなら、少し待っていると鍵を開けてくれる。

ちょっと遅くなってしまったが、この時間は樹がいる。

……はずだ。

なのになにも、反応がない。

嫌な予感が、頭を過っていく。

普通なら時間を空けてから来る所だが、あの視線のせいで混乱しており。

俺は気付いたら、ドアノブを回していた。

そして扉は、鍵などかかっておらず、容易に開く。

「……樹?」

扉の先は、電気が点いているものの、無人の空間。

物が少ない綺麗な部屋に、ノートの一ページだけ切り取ったものが、机にのっている。

□□□□□□□□□□□□□□□

いないみたいだったから、手紙を置いておくよ。

実は、樹に大事な話があるんだ。

この世界の時計で、一五時ぐらいにいつもの魔法訓練室へ来てほしい。

あ、無理だったらいいからな。

藍 祐介より

□□□□□□□□□□□□□□□



……なんだこれは。

明らかに、俺が書いたものじゃない。

思考が目の前の紙を見て固まってしまう。

停止した思考を無理やり再起動。


樹が、俺の名前によって呼び出されている。

この世界での15時……今何時だ?

樹の部屋の時計を見ると、針は15時30分を指している。

「くそっ!!」

机を叩きつける俺。

――探さなくては。

樹が、『何者か』に会う前に。

嫌な予感が頭を駆け巡る中。

部屋を抜け出し、俺は疾走する。
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