35 / 100
旅立ち
二人
しおりを挟む
樹の部屋につく。
そのまま俺達は、部屋の中へ。
ついこの前入ったこの部屋が、大分昔の事のように思えた。
「さて」
靴を脱いで床に座り、対面する。
……そんな見つめられると、恥ずかしいんだけども。
「樹」
決めていた事を、告げる。
「俺は、しばらくここから離れるよ」
そう言うと共に、樹の表情が暗くなるのが分かる。
「昨日、王女様からの通達が来たってのもあるんだが……俺は、強くなりたいんだ。外の世界を見て、非現実な化物と戦って、この世界を、一人で生きれるようになって」
樹を、真っ直ぐ見て言う。
「お前を守れるぐらい、強くなりたいんだ」
キョトンとする、樹。
あれ……なんか変なセリフになってる気が……
いやでも、間違っちゃいない。
「……無いと思うが、あの三人が何か俺に仕返しをしてくるかもしれない。まあそれに、出るのは早い方がいいからな」
区切りをつけて、言う。
「早いけど、もう朝には出るよ」
これで言うべき事は、全て言い終わった。
それでも、俺はここから離れられない。
……樹が、その小さい手で、俺の服を掴んでいるから。
「……」
しばらく無言の時間が続く。
不意に、樹が手を退けて向き直る。
口を少し開いては閉じてを繰り返した後。
「……藍、くんは、もうとっくに、強いよ。誰よりも」
恥ずかしいのか、こっちを見たり下を向いたりしながらそう言う、樹。
「だか、ら」
目を隠すように、前髪を手で押さえながら俺の方を向く樹。
「僕と……一緒に、いて、ほしい、外に行くなら、一緒に、行く」
必死に、紡ぐように、言葉を探しながら言う樹。
……その姿とその言葉は、俺の一人で行くという思念を壊すには、十分すぎる程だった。
「っ!分かった。一緒に行こう、樹」
返答はもちろんイエス。
というか、断る選択肢は無くなっていた。
「……」
わ、分かったからそんな嬉しそうな顔をするんじゃない!
そのまま俺達は、部屋の中へ。
ついこの前入ったこの部屋が、大分昔の事のように思えた。
「さて」
靴を脱いで床に座り、対面する。
……そんな見つめられると、恥ずかしいんだけども。
「樹」
決めていた事を、告げる。
「俺は、しばらくここから離れるよ」
そう言うと共に、樹の表情が暗くなるのが分かる。
「昨日、王女様からの通達が来たってのもあるんだが……俺は、強くなりたいんだ。外の世界を見て、非現実な化物と戦って、この世界を、一人で生きれるようになって」
樹を、真っ直ぐ見て言う。
「お前を守れるぐらい、強くなりたいんだ」
キョトンとする、樹。
あれ……なんか変なセリフになってる気が……
いやでも、間違っちゃいない。
「……無いと思うが、あの三人が何か俺に仕返しをしてくるかもしれない。まあそれに、出るのは早い方がいいからな」
区切りをつけて、言う。
「早いけど、もう朝には出るよ」
これで言うべき事は、全て言い終わった。
それでも、俺はここから離れられない。
……樹が、その小さい手で、俺の服を掴んでいるから。
「……」
しばらく無言の時間が続く。
不意に、樹が手を退けて向き直る。
口を少し開いては閉じてを繰り返した後。
「……藍、くんは、もうとっくに、強いよ。誰よりも」
恥ずかしいのか、こっちを見たり下を向いたりしながらそう言う、樹。
「だか、ら」
目を隠すように、前髪を手で押さえながら俺の方を向く樹。
「僕と……一緒に、いて、ほしい、外に行くなら、一緒に、行く」
必死に、紡ぐように、言葉を探しながら言う樹。
……その姿とその言葉は、俺の一人で行くという思念を壊すには、十分すぎる程だった。
「っ!分かった。一緒に行こう、樹」
返答はもちろんイエス。
というか、断る選択肢は無くなっていた。
「……」
わ、分かったからそんな嬉しそうな顔をするんじゃない!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる