増幅使いは支援ができない

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旅立ち

別れ

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無言の会話を続けて。

「樹、荷物は大丈夫か?」

頷く樹。

「それじゃ……朝のそうだな、この世界の時計で言う、4時に樹の部屋に行くよ。おやすみ」

樹の部屋を出て、俺は自分の部屋に戻る。

荷物を確認していると、俺はスタッフがない事に気付いた。

っと……そういえばあの時波で流されて、そのまま俺素手で戦ってたもんな。

遅いけど、取りに行くか。

―――――――――――

しばらく歩いて後、魔法訓練所に着く。

中は幸いにもまだ明るく、探すには楽な環境だ。

……あそこに寝てる山本がいなければ、もっと楽だったんだけどな。

っと、あったあった。ごめんな、色々有りすぎて置いていってたよ。

――――――――――――

スタッフを取って、また同じ道を戻って行く。

そして、俺の部屋の近くまで帰って来た時。

……部屋のドアの前に、雫がいた。

なんか落ち着きがないように見える。

うん、俺に何か用があるんだろうか?

近付くが全く気付く様子がない。

そのまま、肩を叩く。

「っ!」

うおっ、凄いスピードで振り向いたな。

「な、なんだ佑介か……ってなんで!」

はは、忙しいな、全く。

「ちょっと出ててな。なんかあったか?」

「い、いやその……」

ん、外では話せない事だったりするのか。

「取りあえず、部屋はいっていいぞ」

俺はドアを開いて、そう言う。

「う、うん!」

俺達は部屋へ入り、靴を脱ぎ、座る。

……これ、デジャヴってやつか?

「んで、どうした?」

「え?あの、別に何もないけど……佑介ってもうすぐ離れちゃうし、今のうちにお話したいなー、みたいな」

そわそわしながらそう言う雫。

特に用があるってわけではなかったが、俺のために話に来てくれるというのは、嬉しかった。

良い友達を持ったよ、本当に。

「そっか、ありがとな。確かに雫と話せる事は……もう、しばらく無いもんな」

だからこそ、しばらく会えないのは寂しい。

「へ?」

あ、言ってなかったか。

「すまん。明日の朝、出発する予定なんだ」

「……え?は、早くない?」

まあ、確かに早い。通達来て二日だしね。

「まあ、色々あってな……早い方が思い止まるって事も無いし良いんじゃないか」

「……うん、そ……そっか。しょうがないよね」

雫の、声に元気が無くなる。

俺がいなくなるってだけでこんな落ち込んでくれるってのは、嬉しいけども。

「まあ今生の別れってわけでもないんだ。また帰ってくるしな」

「そう、だけど」

俯いて、そう呟く雫。

「俺は雫と居ると、楽しい。出来るなら仲間として、一緒に戦いたかったな」

元気を出せるよう、出来るだけ明るく口に出す。

「そうだなー、戦うだけでなく、この世界を見て回りたいよな」

戦うだけなんて、そんなの勿体ない。

観光と言うとおかしいが、この世界にも楽しい所とか、綺麗な景色とか一杯あるだろう。

「っ、うん」

少し元気が戻ったか、声が大きくなる雫。

「何があるんだろうな、この世界には。意外と遊べたり、楽しい場所が有ったりするんじゃないか?」

流石に映画館とか、遊園地とか、カラオケとかは無いだろうが。

「はは、どうなんだろうね」

笑ってそう言う雫。

お、元気出てきたか、よかった。

「そうだなー、俺は、一歩早くこの世界を見てくる。それでもし、そんな場所があったら……帰って来た時、一緒に行こう」

その時は、いつになるか分からないが……楽しみだ。

「う、うん!楽しみにしてる!」

俺と同じ気持ちなのか、満面の笑みを見せる雫。

やっぱり、雫は笑顔が似合うな。

「はは、俺も楽しみだよ。さて、それじゃ明日も早いし寝るか」

明日起きるの、地球で言うと六時ぐらいだからな。


「っと。うん。頑張ってね。……待ってる、から」

立ち上がり、俺に背を向けてから、呟くように言う雫。


「へ、最後なんて言ったんだ?」

「……ふふ、何でもないよーだ!それじゃーね、バイバイ!」

こっちを向いて、笑顔でそう言った雫は、あっという間に俺の部屋から出て行った。

「さて、いよいよか」

……明日だ。明日、ついに出ていく時が来る。

不安もあるが、なんとかやっていける、そんな気がする。

樹と一緒に、この世界を。

……俺は、強くならなければ。

決意を胸に、俺は横になった。
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