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夕の、死闘
護る者
しおりを挟む腕にもろに食らったせいか、服は焦げ、痛みで腕が上がらない。
背中は、後ろの炎で焼かれ、熱と痛みが襲ってくる。
咳が出ると、同時に血も吐いた。
ーー俺は、負けたのか。
一撃も入れることも出来ず、ただもがいただけ。
「……今負けを認めるんなら、命だけは助けてやってもいいぜ」
アルスのその言葉は、嘘を吐いている様には全く見えなかった。
「そうですか」
力無く出てくる言葉。
…………俺は。
「まあ、お前の『女』は貰っていくがな。これも王からの命令だ」
アルスはそう言い、後ろを親指で差す。
樹は遠く離れた所で、今にも泣きそうな表情でこちらを見ているのが見えた。
……はは、そんな顔すんなよ、樹。
―ーああ。
《藍、くんは、もうとっくに、強いよ。誰よりも》
《僕と……一緒に、いて、ほしい、外に行くなら、一緒に、行く》
《 藍君と……その……これからも一緒がいい、です》
過去の樹の表情と、言葉、台詞、声、声音、思いが、蘇っていく。
俺は、今一体、何の為に戦ってる?
……そうだ。
「まだ、俺は……戦える」
「あ?お前はもうーー」
「――まだ……まだ、」
遮り、魂から涌き出てくる言葉を吐く。
「俺の目は、見えている」
「……耳もまだ、聞こえてる」
「足も動くし、まだ、立てる」
「腕は振れるし、握りも出来る」
「武器も無くしたわけじゃない、魔力も微かだが残っている」
「…………そして、何よりも。戦う理由が―ー」
「護るべき存在が、俺には有るから!」
ありがとう、樹。
「だから、俺はまだ戦える。俺の身体が、俺の思念が、俺の理由が、お前と戦うように言っている!」
お前の事を考えるだけで……力が、馬鹿みたいに湧き上がってくるんだ。
「――かかってこいよ、アルス。俺はお前を……何としてでもぶっ倒す!」
俺はまだまだ、お前のために戦える。
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