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夕の、死闘
刃
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「そうか」
それだけ言うと、アルスは剣を俺のスタッフへと向ける。
「お前は、その武器でやるのか?」
「ああ。これじゃないといけない」
「はっ……そうかよ、好きにしろ」
『これじゃないといけない』ってのは、何も愛着が沸いているからってわけじゃない。
《黒衝石って言ってね。とても頑丈で、しかも魔法を増幅させる特徴も持ってるんだ》
マールさんのあの言葉。それが確かなら……
「……『増幅』」
魔力をブーストし、目を瞑りイメージする。
俺が出そうとしている炎は、硬く、鋭い火。
アルスの刃へ対抗できる、そんな炎。
が、中々イメージが沸かない。当然といえば当然だが。
普通の火でやるか?いや、それじゃ駄目だ。
集中を解くため、一度目を開く。
そして、目に再度映る光景。
――これは……
「感謝するよ、アルス」
すぐ、近くに『それ』はあった。
「……ん?何だってんだ」
俺は、後ろの炎の壁に手を突っ込む。
熱く、硬い。不思議な炎。
色は赤黒い、濁った血のような炎。
この世のものではないような、地獄のような炎。
「『増幅』!」
簡単だ。
今俺が触れている炎をライターに灯せばいいだけ。
なのにどうして、こんなに魔力が減っている?
「『増幅』」
どうやらこの炎は、かなりの厄介ものらしい。
「『増幅』」
三回目の詠唱で、ライターにて現れるその火。
「ほう。で……そこからどうするんだ?」
面白い物を見るかのように、そう言うアルス。
「……」
考えろ。
俺のスタッフは、剣で言う刃の部分はほとんど全て切り落とされている。
そこだけ、『創れば』いい。そんなイメージを。
「『付加』……ぐっ」
身体へ纏うと共に、とてつもない熱が俺の身体を這いずり回る。
とてつもない熱、痛みが俺を襲った。
同時に、炎が身体から燃え盛っている。まるで、俺の体を食らうかのように。
「あああああああ!」
痛みで可笑しくなりそうになるのを、声で誤魔化す。
考えろ。イメージしろ。
俺ならやれる。
「……っ、駄目か」
詠唱しようとすると共に、魔力が、恐ろしい勢いで無くなっていく。
同時に身体を覆っていた炎は、少しずつ消えていた。
感覚で駄目だと判断し、詠唱を止める。
……無理か?いいや。
イメージはもう出来ている。
あとは、そう――『魔力』だけ。
目を、瞑る。
「……『増幅』、『増幅』……『増幅』。『増幅』、『増幅』『増幅』『増幅』!」
合計七回。濃密に描いたイメージと、詠唱は重なる。
魔力が溢れてくる感覚を確かに覚えながら、俺は立ち尽くす。
これまで何回、唱えてきただろうか。
身体の痛みや気持ち悪さは、もう限界を越えたのか消えていた。
まあ、関係ないか。
「食らえよ。これで足りないなんて言わせないから」
胸に、スタッフの斬られた断面を押し付けた。
アルスの剣筋のせいか、断面は鋭く、胸を突き刺し血が流れる。
俺はそれに構わず、更に奥へと押し付けていく。
――ここが一番、近いだろ?
イメージするのは、剣。
炎を鋼とし、鍛錬して、形を整え、研ぐ。
そして創られる、炎の刃。
「『創造』」
イメージと詠唱が合致し、絡まっていく。
胸から魔力が消えていくのを感じながら。
俺は、ゆっくりと持ち手を胸から引き抜いていく。
「……ああ、これだ。俺のイメージしたのは」
俺が目を開けると、漆黒と紅が混じったような色の『鋼』が、斬られた断面から轟々と燃えて。
刀のように伸びたその『炎』は、鈍く光っていた。
炎とも鋼とも言えるそれは、間違いなく刃として形を変え、存在している。
「ありがとう、応えてくれて」
物に心なんて無いなんて分かってはいるが、それでも俺は。
斬られても尚、俺と戦ってくれるスタッフへと礼を告げた。
それだけ言うと、アルスは剣を俺のスタッフへと向ける。
「お前は、その武器でやるのか?」
「ああ。これじゃないといけない」
「はっ……そうかよ、好きにしろ」
『これじゃないといけない』ってのは、何も愛着が沸いているからってわけじゃない。
《黒衝石って言ってね。とても頑丈で、しかも魔法を増幅させる特徴も持ってるんだ》
マールさんのあの言葉。それが確かなら……
「……『増幅』」
魔力をブーストし、目を瞑りイメージする。
俺が出そうとしている炎は、硬く、鋭い火。
アルスの刃へ対抗できる、そんな炎。
が、中々イメージが沸かない。当然といえば当然だが。
普通の火でやるか?いや、それじゃ駄目だ。
集中を解くため、一度目を開く。
そして、目に再度映る光景。
――これは……
「感謝するよ、アルス」
すぐ、近くに『それ』はあった。
「……ん?何だってんだ」
俺は、後ろの炎の壁に手を突っ込む。
熱く、硬い。不思議な炎。
色は赤黒い、濁った血のような炎。
この世のものではないような、地獄のような炎。
「『増幅』!」
簡単だ。
今俺が触れている炎をライターに灯せばいいだけ。
なのにどうして、こんなに魔力が減っている?
「『増幅』」
どうやらこの炎は、かなりの厄介ものらしい。
「『増幅』」
三回目の詠唱で、ライターにて現れるその火。
「ほう。で……そこからどうするんだ?」
面白い物を見るかのように、そう言うアルス。
「……」
考えろ。
俺のスタッフは、剣で言う刃の部分はほとんど全て切り落とされている。
そこだけ、『創れば』いい。そんなイメージを。
「『付加』……ぐっ」
身体へ纏うと共に、とてつもない熱が俺の身体を這いずり回る。
とてつもない熱、痛みが俺を襲った。
同時に、炎が身体から燃え盛っている。まるで、俺の体を食らうかのように。
「あああああああ!」
痛みで可笑しくなりそうになるのを、声で誤魔化す。
考えろ。イメージしろ。
俺ならやれる。
「……っ、駄目か」
詠唱しようとすると共に、魔力が、恐ろしい勢いで無くなっていく。
同時に身体を覆っていた炎は、少しずつ消えていた。
感覚で駄目だと判断し、詠唱を止める。
……無理か?いいや。
イメージはもう出来ている。
あとは、そう――『魔力』だけ。
目を、瞑る。
「……『増幅』、『増幅』……『増幅』。『増幅』、『増幅』『増幅』『増幅』!」
合計七回。濃密に描いたイメージと、詠唱は重なる。
魔力が溢れてくる感覚を確かに覚えながら、俺は立ち尽くす。
これまで何回、唱えてきただろうか。
身体の痛みや気持ち悪さは、もう限界を越えたのか消えていた。
まあ、関係ないか。
「食らえよ。これで足りないなんて言わせないから」
胸に、スタッフの斬られた断面を押し付けた。
アルスの剣筋のせいか、断面は鋭く、胸を突き刺し血が流れる。
俺はそれに構わず、更に奥へと押し付けていく。
――ここが一番、近いだろ?
イメージするのは、剣。
炎を鋼とし、鍛錬して、形を整え、研ぐ。
そして創られる、炎の刃。
「『創造』」
イメージと詠唱が合致し、絡まっていく。
胸から魔力が消えていくのを感じながら。
俺は、ゆっくりと持ち手を胸から引き抜いていく。
「……ああ、これだ。俺のイメージしたのは」
俺が目を開けると、漆黒と紅が混じったような色の『鋼』が、斬られた断面から轟々と燃えて。
刀のように伸びたその『炎』は、鈍く光っていた。
炎とも鋼とも言えるそれは、間違いなく刃として形を変え、存在している。
「ありがとう、応えてくれて」
物に心なんて無いなんて分かってはいるが、それでも俺は。
斬られても尚、俺と戦ってくれるスタッフへと礼を告げた。
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