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『機灰の孤島』編

可能性

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「……はっ」



俺は、ふと目が覚める。



それは束の間か長らくか、周りを見れば聖の壁が俺達を囲むよう聳え立っている。……樹の魔法だろう。



そして俺は、異変に気付く。



「…………」



俺の『左腕』を抱いて、樹が眠っているのだ。



無くなったはずの、左腕に。



樹の回復魔法は……俺が考えていたより遥か上のモノだった様だ。



『樹が居なければ』、ずっとそう思っていたが――まさか無くなった腕をも回復するとは。



王国から追われるのも納得、か。



「ありがとう……ごめんな」



俺はそう呟き、先程の戦闘を反省する。



樹には……本当に恐い思いをさせてしまった。



最悪、俺と樹両方とも――いや、よそう。



「よっと、おやすみ樹」



俺の服で簡易布団セットを敷いて、樹を寝かす。



「……んっ……ん……」



腕から樹を離すと寂しそうに寝言を立てていたが……



頭を撫でてやると、心地良さそうに眠ってくれた。




「このままじゃ、駄目だ」



俺は、灰色の空に嘆く。



『ゆっくりと地道に強くなる』、そんな事を言っている場合ではない。



「なら、どうする」



自身に問いかける。



「俺は、逃げていただけじゃないのか?」



自身を追い詰める様に。



「覚悟を決めろ。俺は――『強さ』を手に入れる」



それが、幾ら辛いものだとしても。



なりふり構っていられない。



立ち上がり、俺は鞄からあるモノを取り出す。



逃げていた――ある、『電気』の可能性。



その可能性が、このモバイルバッテリーの中に有る。

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