増幅使いは支援ができない

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『機灰の孤島』編

苦節

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「……やるか」


深呼吸をして、俺は座る。


正直、まだこれに触るのは怖くてたまらない。あの時の電撃の痛みは忘れもしない。


でも――俺がこのまま、弱いままでいる方がずっと怖いんだ。


「……『増幅』!」


意を決し、俺は前の通り詠唱と共に伸びるコードへ魔力を送り込む。


「――っ、がっ……」


違和感と共に、変換された感覚の後に電気が俺を襲う。


言葉に出来ない痛みと魔力の減少。


葉を食いしばって耐える。


苦しい――しかし俺は、コードを離さず握り続けた。


やがて『電気』が、俺から離れていくような、そんな感覚。


「はあ、はあ……」


その感覚が無くなるのを感じた後、俺はコードを離す。


一瞬だが、途轍もなく長い時間。


震える手を抑え、思考する。


「……まるで、俺の魔力が充電されたみたいだな」


この世界に来てモバイルバッテリーの電気残量を示すランプは、消えたままだ。


4つあるランプの内、1つも点いていない。


……もしかしたら、こいつに魔力を貯めておける、のか?


仕組みも全く分かる訳が無い。あえて言うなら俺の『魔法』。


……試す価値は、きっとあるはずだ。


「『増幅』、『増幅』、『増幅』」


もう止まれない、俺は魔力を増幅させて。


「『増幅』!――っ!」


再度コードに魔力を送る。


気を抜いたら、あっという間に意識を失ってしまいそうだ。


―――――――――――――――――


「……点いた、か……」


何度魔力を送っただろう。


緑のランプが、そこには1つ光っている。


「次だ」


朦朧とする頭を抑え、俺は思考する。


俺の考えが正しければ俺の魔力は今、このモバイルバッテリーの中に貯まっているはずだ。


そしてそれを電気として引き出し、理由する事が出来れば。


俺自身に『電気』として――先程とは真逆、こちらが貯めた魔力を返してもらう。


その通りになるよう、綿密にイメージを描く。


「『増幅』!」


詠唱と共にモバイルバッテリーのランプが消えて。


『電気』として――俺の身体を伝ってくる。


「っ……ぐっ!」


痺れる痛みが、全身を駆け巡った。


紛れもなく、俺に電気として魔力が俺の元へ来ている。


しかし、他人から見れば何も見た目は変わっていない。ただ俺が痛がっているだけに見えるだろう。


「がっ……」


先ほどとは真逆の反応。痺れと共に電気が魔力へと変換されたようなそんな感覚を覚える。


連続して電気の痛みを味わい続けたせいだろう……俺は段々と痛みに慣れていた。


やがて胸に広がる魔力の充足感。


「消えないな」


その充足感は、自身で魔力を増幅した際の様に消えることは無い様だ。


これは使える……しかし、俺の求めている力はこんなモノではない。


俺は――『電気』の力が欲しいんだ。

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