100 / 100
『機灰の孤島』編
雷電
しおりを挟む
「……ふー……」
深呼吸を挟む。
モバイルバッテリーへと、電気として魔力を送る……その行為は『充電』と言えるだろう。
俺はモバイルバッテリーに対し、電気を流している事になる。
なら――その行為の中、電気を流したままコードを離すとどうなるか。
例えば電源を入れたままコンセントを抜くと、プラグとコンセントの間で火花を起こす放電が起こる。
その場合は勝手に電源が落ち、放電は止むが……それをもし止まらなかったら?
スタンガンのスパーク放電を想像すれば分かりやすいだろう。
要はコードに流れようとしている電気を無理やり放電させ、魔力ではなく電気として俺に取り込んでやろうという考えだ。
「滅茶苦茶だな……でも、やってみるしかない」
出来るかは分からない、がイメージは出来る。
俺がどうなってしまうかは分からない、でも新しい可能性が見える。
身体が震える。これは恐怖か武者震いか。
「……ん……」
寝返りを打つ樹。心地良さそうだな。
……樹が居てくれるから、俺はこんなに強くなろうと思えるんだ。
本当に、ありがとう。
「待っててくれよ」
そう告げて、俺は樹から離れた場所に移動する。
何が起こるかなんて分からないからな。
「……」
黙って、精神を整える。これから起こらせる事をイメージしながら。
「やるか」
コードに手を繋ぎ、俺はイメージする。
流れる汗と震えを感じながら――
「『増幅』!」
魔力を流す。
身体の中で魔力が電気へと変換。
「ぐっ……」
そして、コードへと電気が流れる。
後は、自分のタイミングで。
力など要らない。この手を、電気を流しながら離す。
「っ!」
俺は――手を、離した。
瞬間。
「あああああああ!」
これまでの比ではない痺れ。身体の制御が効かない、気を抜けばすぐに失神するだろう。
俺は立つこともままならず地面に膝をついてしまう。
そしてその中――俺の手に、小さな雷が流れているのが『見えた』。
「……負けて、たまるかよ、『増幅』!」
この雷電が途切えてしまう事のないよう、俺は魔力を流す。
思うように動かない腕を無理やり上げ、手の先に宿る雷を俺の心臓の方に持っていく。
「ぐっ!ああああああ!」
そのまま、俺はバチバチと鳴る雷を胸に当てた。
鼓動が乱れ、身体が痺れて震えて痙攣する。
気を失いそうな痛みを耐えて、耐えて……俺自身に、俺の雷に叫ぶ。
「これが、この電気が、俺の持つ力だって言うのなら――」
思考などもう出来るわけがない。
しかし、強くなりたいという思いは消える事無く、寧ろ増えていく。
「――黙って、俺のモノになれ!!!」
心臓を掴む勢いで、雷電を胸に押し付ける。
脳裏に作られていくイメージのまま、俺は詠唱を。
「『充電』!!!」
詠唱が終わると、これまでの痛みが、痺れが、震えが嘘の様に消えていく。
それでも、雷電は消える事無く身体に広がっていった。
青白い電気が、俺の身体を包むように放電している。
「やった、のか」
流す魔力を止めると、その雷電はぱったりと消える。
「……は、はは、流石に限界だ」
もっと試したい事もあるが――それは今度にしよう。魔力ももうないし、気力も使い切ってしまった様だ。
地面に横になればもう、灰色の空が明るくなっていた。
深呼吸を挟む。
モバイルバッテリーへと、電気として魔力を送る……その行為は『充電』と言えるだろう。
俺はモバイルバッテリーに対し、電気を流している事になる。
なら――その行為の中、電気を流したままコードを離すとどうなるか。
例えば電源を入れたままコンセントを抜くと、プラグとコンセントの間で火花を起こす放電が起こる。
その場合は勝手に電源が落ち、放電は止むが……それをもし止まらなかったら?
スタンガンのスパーク放電を想像すれば分かりやすいだろう。
要はコードに流れようとしている電気を無理やり放電させ、魔力ではなく電気として俺に取り込んでやろうという考えだ。
「滅茶苦茶だな……でも、やってみるしかない」
出来るかは分からない、がイメージは出来る。
俺がどうなってしまうかは分からない、でも新しい可能性が見える。
身体が震える。これは恐怖か武者震いか。
「……ん……」
寝返りを打つ樹。心地良さそうだな。
……樹が居てくれるから、俺はこんなに強くなろうと思えるんだ。
本当に、ありがとう。
「待っててくれよ」
そう告げて、俺は樹から離れた場所に移動する。
何が起こるかなんて分からないからな。
「……」
黙って、精神を整える。これから起こらせる事をイメージしながら。
「やるか」
コードに手を繋ぎ、俺はイメージする。
流れる汗と震えを感じながら――
「『増幅』!」
魔力を流す。
身体の中で魔力が電気へと変換。
「ぐっ……」
そして、コードへと電気が流れる。
後は、自分のタイミングで。
力など要らない。この手を、電気を流しながら離す。
「っ!」
俺は――手を、離した。
瞬間。
「あああああああ!」
これまでの比ではない痺れ。身体の制御が効かない、気を抜けばすぐに失神するだろう。
俺は立つこともままならず地面に膝をついてしまう。
そしてその中――俺の手に、小さな雷が流れているのが『見えた』。
「……負けて、たまるかよ、『増幅』!」
この雷電が途切えてしまう事のないよう、俺は魔力を流す。
思うように動かない腕を無理やり上げ、手の先に宿る雷を俺の心臓の方に持っていく。
「ぐっ!ああああああ!」
そのまま、俺はバチバチと鳴る雷を胸に当てた。
鼓動が乱れ、身体が痺れて震えて痙攣する。
気を失いそうな痛みを耐えて、耐えて……俺自身に、俺の雷に叫ぶ。
「これが、この電気が、俺の持つ力だって言うのなら――」
思考などもう出来るわけがない。
しかし、強くなりたいという思いは消える事無く、寧ろ増えていく。
「――黙って、俺のモノになれ!!!」
心臓を掴む勢いで、雷電を胸に押し付ける。
脳裏に作られていくイメージのまま、俺は詠唱を。
「『充電』!!!」
詠唱が終わると、これまでの痛みが、痺れが、震えが嘘の様に消えていく。
それでも、雷電は消える事無く身体に広がっていった。
青白い電気が、俺の身体を包むように放電している。
「やった、のか」
流す魔力を止めると、その雷電はぱったりと消える。
「……は、はは、流石に限界だ」
もっと試したい事もあるが――それは今度にしよう。魔力ももうないし、気力も使い切ってしまった様だ。
地面に横になればもう、灰色の空が明るくなっていた。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
『宿 』
終わりのほうのセリフ
「上手かったろ~~~・・・」
↓
「旨かったろ~~~・・・・」
もしくは
「美味かったろ~~~・・・・」
料理にたいしての表現だと「旨い」か「美味い」になります。
予測変換のでの誤変換でしょうか?
「上手い」だと技術力が高いというような表現になりますね。
「料理が上手(じょうず)」という意味では「上手い」
「料理が美味しい(おいしい)」という意味では「美味い」
同じ「料理がうまい」でも全然違いますよね~~。
今回の場合だと美味いになりますね!細かい所も気を付けないと、ありがとうございます。