運極さんが通る

スウ

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予選

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今日は10時から予選が始まる。
あと2時間で本番だ。
緊張するぜ。
ここは、緊張を解すために対人の練習をしておいた方がいいのかもしれない。
今更だけどね。
「ヴィネ、良かったらなんだけど、対人の練習を軽くしてくれない?」
「うむ。いいぞ?」
快く引き受けてくれて良かったです。
「あ、ヴィネも鑑定したらわかるけど、私の基本のステータスは運以外が0だからね。その、ガチでこられると、死んじゃうから」
「あいわかった」
本当にわかってくれたのかな?
心配だ。





ピロリん。
『大会予選30分前となりました。予選10時からの方は遅れないようお急ぎください』

「む?ここまでにしておこうか」
ヴィネは汗一つかかずに立っている。
対して私は汗びっしょりで地に伏している。
ヴィネの剣さばきは恐ろしい。
目で追えない早さで、襲って来るからいつの間にか私がひっくり返っている。
「ヴィネ…強し…ガクッ」
「るしー!」
「おい、ヴィネ!るしが死んじまったじゃねぇか」
「なに、わっぱがるしの頭に愛の拳を落とせば起きるはずだ」
ニヤリと笑うヴィネ。
私はガバッと起きる。
「し…死んでないよっ!」
ウォッカの拳骨は痛いのだ。
私は急いで自分に【生活魔法クリーン】をかけて風の鎧一式に着替える。
「そう言えば、るしは軍服をもっているそうだな?わっぱ共から聞いたぞ?今回の大会で見れるとよいな。」
「あら、私も見たいですわ。るし様、どうかギムレットに、大会で勝ち抜いて軍服を見せて下さい」
ジン、ウォッカ、ヴィネに告げ口したな?
いつからそんなに口が軽くなったんだい。
「るしー。行かなくていーの?」
はっ!
ヤバイ!
「そろそろ行くね!じゃ!」
「応援行くからねー」
「ま、頑張れよ!」
「「いってらっしゃい」」








大会の闘技場は広場よりも大きく、また、空にも客席が浮いている。
リアルでは当分真似出来ないような技術だ。
そんな広場よりも大きいはずの闘技場は既に一つの空席もなく埋まっている。
予選だというのに、そんなに集まらなくてもいいんだよ?
体の震えが止まらない。
武者震いだ。
緊張じゃないからね?

『では、予選1日目の第一試合を始めます!司会はやっぱり、田中と…』

『長谷川ですっ!!さぁ、第一試合目の方、場内に入ってください!』

私はヘルムを深く被り、石畳の上に上がる。
心臓がバクバクいっているのが聞こえる。
周りの人に聞こえるかもしれないという程に聞こえてくる。

『皆様上がりましたね?では、カウントをします。開始5秒前』

皆それぞれに武器を握りしめる。

『4』

震える足を気合で抑え込む。

『3』

目を闘志で滾らせる。

『2』

優勝するのは自分だと思い込む。

『1』

相手に襲いかかるごとく目を見開く。

『go!!!』

「「「「ウォォォォォォォォォ!!!!」」」」

彼方此方で剣を振るう音が聞こえる。
私もここで止まっているわけにはいかない。
「スティール・ラック!!」
近くにいるプレイヤーに切りかかる。
そいつは私の剣を受け止めた。
【鑑定】をする。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

種族  ドワーフ:打  ☆4
名前  ゾモ
Lv  10

ーーーーーーーーーーーーーーーー

わー!
ヤバイ。
私と同Lvの強敵に斬りかかってしまった。
だが、運は剣越しに吸い取ったぜ。
これでどう上手く転がるかが問題だ。
もしかすると、私と同じで運に極振りしているかもしれないからね。

ガギィンッ
互いに刃を弾く。
ジリジリと距離を縮める。
その時、首がチリチリした。
バッとその場を離れると、他のプレイヤーが打った魔法が、私がいた場所を焼いていた。
怖い。
これが集団戦闘。
気を抜けばいつ背後を刺されてもおかしくはない状況。
息が上がる。
ここは一旦隅に寄った方が良さそうだ。
私は2人を睨みながらジリジリと下がる。
その間に、何人かのプレイヤーが私の相手だった人達に襲いかかる。
その隙に私は隅に移動するため走り出す。

「「「スティール・ラック!!」」」

スキルを発動させながら隅に移動する際に攻撃を与えていく。
運よければそのまま倒れてほしいと願いながら。

トスッ
「いっつ~!」
鎧を貫通して何かが攻撃を与えてきた。
見ると矢が貫通していた。
幸いにも攻撃力が低いのか、私の体力は10分の1程しか減っていない。
だが、これをあと10回食らえば死ぬ。
攻撃をしてきた奴を探す。


「へっ?」
間抜けな声を出してしまった。
攻撃を仕掛けてきたのは、なんと…アルザスだった。
…鍛冶士だけど、弓を使っていたな。
身体を軽い装備で揃えているから、俊敏力重視なのだろう。
その軽いフットワークで何人ものプレイヤーを倒すことが出来るだろう。
【鑑定】を入れる。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 種族  ドワーフ
 名前  アルザス
 Lv 8
 HP  350/460  MP  200/260

ーーーーーーーーーーーーーーーー

強くなったなぁ。
だけど、友達だからって容赦はしないよ。
だって、これは大会だし、アルザスから襲ってきたんだからね。

私は大太刀を構えてアルザスに突っ込む。
アルザスはそれを予想していたようで、アイテムボックスから短剣を取り出した。

ガギィッ
ギリギリ

短剣は軽いからリーチが長い武器には有利だ。
受け流した後に、腹に攻撃を仕掛けてくる。
鎧越しにダメージが入る。
「~~~っっ!!」
痛いな。
でも、短剣は接近戦だろ?
だから、アルザス、君がいる場所は私の攻撃範囲内だ。
大太刀を持ち変えて、再度振るう。
「せいっ!」
「ごはぁっ!」
私に接近しすぎたせいで避けきれなかったようだ。
体力は残り半分をきっている。
元から入っていたダメージのお陰だろう。

アルザスは出血したお腹を抑えながらも向かってくる。
「フラッシュ!!」
短剣が眼前に迫ってきたその時、閃光が迸った。
「ぐぁぁぁあ、目がぁ!目がぁぁ!!」
ごめん、アルザス。
私、【光魔法】覚えたんだよね。
友達を手にかけるのは辛い。
だから【無心】を発動させる。
直後、目の前のドワーフの首が飛んだ。



私はアルザスが消えるのを待った後、他のプレイヤーを探す。
残りはあと半分くらいだろうか。
「はぁっ!」
1人のプレイヤーが斬りかかってくる。
「スティール・ラック!」
受け流しながら、【蹴り技】も入れる。
プレイヤーが少し横に吹っ飛んだ。
と、近くにいたプレイヤーにぶつかり、そのまま横転。
近くにいたプレイヤーと戦っていた他のプレイヤーに2人諸共倒される。
なんという不運バッドラック
可哀想に。


私はいいことを思いついた。
スティール・ラックを使いまくって行けばそのまま皆倒されてくれるのではないかと。
だけど、私のMPにも限界があるし、杖で威力を底上げしている魔術士には迂闊に近づけない。
そして、ことはそんなに上手くは行かないものなのだ。


目の前に2人のプレイヤーがいる。
1人はドワーフ、1人はエルフだ。
2対1の組み合わせとなっている。
これはヤバイ。
見たところ、パーティーを組んでいたのであろう。
連携がよく出来ている。
ドワーフが私の攻撃を止めている隙にエルフが私に攻撃を入れてくる。
これはかなりヤバイ。
この状況をどうにかしなくては。

まずはこのドワーフからだ。
目の前のドワーフは私が他にも武器を使っていると知らないだろう。
だからそこをつく。
武器は一瞬出して、斬って、仕舞う。
それだけでも動揺するはずだ。
その動揺が私が勝てるかどうかを決める。

「スティール・ラック!!」

私はアイテムボックスからダンデスさんから買った双剣を取り出し、素早くドワーフに斬りつけ、仕舞う。
大太刀がなくなり、一気にバランスを崩したドワーフは理解出来ぬままダメージを負ったため、は大きく動揺していた。
運盗みスティール・ラック】も一応発動しておいた。

「おい、ジャズ!こいつ変なスキル使うから気をつけろ「Bob!余所見するんじゃない!危ないっ!」
たまたま空から降ってきた火の玉にドワーフは焼かれていく。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあッ!!」
「Bob!?今助ける!」
「させないよ」
これは好機だ。
このままエルフを片付けるッ!
「スティール・ラックッ!」
「邪魔だっどけぇぇ!」
エルフはレイピアで次々とダメージ入れてくる。
流石にそれを全て防ぐことは出来ない。
ダメージを受けながらも大太刀を大きく振り抜く。
それを軽々と避けるエルフ。
だが、それでいい。
またもや空から火の玉が降ってきたようだ。
「ギャぁぁぁぁぁぁぁ熱い熱いあづいぃぃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

私は遠くにいる魔術士と視線を交わす。
そして、双方とも、違う相手に向かって行った。






『しゅーりょぉぉおう!!第一試合の予選を勝ち抜いたのはあっ!!場内で今立っている奴らだ!!皆、応援ありがとなっっ!!』

『あんたじゃないでしょっ!残った5人のプレイヤーの皆様、お疲れ様でした!言い忘れてましたが、今大会は痛覚設定100%になっていますので、お気をつけを~。さぁ、第二試合は午後1時からだよー。勝ち残った皆様は、明日の予選を控えて、ゆっくり羽を伸ばしてくださいねー!!』

「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」


痛覚100%だったんだね。
だから、ぎゃぁぁぁあ、とか言ってたんだ。
大袈裟な奴らだとは思ってたけど、100%なら仕方ない。
てか、運営さんや。
それって大事な情報じゃないですかい?
後から苦情が来るのは確定ですね。


私はチラリと助けてくれた魔術士の方を見る。
あっちも私に視線を投げていたようだ。
ぺこりと頭を下げておく。


さて、応援してくれた皆と羽を休めに屋台を周りに行こう。
もしかすると、ヴィネからの対人訓練があるかもしれないけどね。


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