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モンスターオークション
しおりを挟む只今私たちは路地裏を移動している。
モンスターオークションは、闇オークションと言われる違法なオークションだということで、公の場では開催されない。
だから、帝国の裏であるスラム街で行われている。そこは無法地帯であるため、取り締まられることはないんだとか。
まぁ、帝国に法なんてものは無いに等しいんだけどね。
「るしさん、着きやしたぜ」
「うん」
今日はアルザスと2人で行動している。オークション内にテイムモンスターを連れていくと、目をつけられ、翌日には誘拐されるということが何度か起こったらしい。万が一のことを考えてジン達を置いてきたのは言うまでもない。
黒塗りの建物に入り、チケットを渡す。
このチケットは、課金ショップで買ったり、ガチャで引き当てることが出来るそうな。
私の分は、アルザスがガチャを引いてダブったものだ。申し訳ないと思うところもあるが、少し得をした気分だ。
会場内の空いた席に座る。
周りは高貴な身分の人が多く見られた。
舞台袖から黒い服に包まれた司会者と思われる男がマイクを持ってツカツカと出てきた。
「只今より、モンスターオークションを開催します!今回の品々は、いつもよりも品質が高くなっていますので、最低金額は金貨3枚とします!皆様、お楽しみなさってください」
「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」」」
会場内の雰囲気に酔い、テンションが上がる。これはある意味奴隷オークション。不謹慎なのかもしれないのだが、初めてのオークションで興奮してしまう。
横にいるアルザスも子供のように目をキラキラさせて前を向いている。
「さて、まずはグリーンワームから参りましょう!」
げぇっ。
あんな気持ち悪いブヨブヨを買う人がいるのか?
いや、いるはずないだろう!だってブヨブヨだよ?クリクリな目だよ?考えるだけで肌が粟立つよ。
舞台下手袖から引っ張られて来たのはミニマムな「グリーンワーム」だった。大きさは50cm前後だろうか。
「このモンスター、グリーンワームは特殊なスキルを所持しています。それは硬化と成長停止。これ以上大きくなることはないので、家に入れることも可能です!さぁさ、今回は金貨3枚からですよ!」
「金貨4枚!」
「いや、5枚だ!」
「7枚!」
嘘ん。この世界の貴族は「グリーンワーム」が好きなの?え?マジすか。
金額はどんどん上がっていき、遂に「グリーンワーム」は金貨15枚で落札された。
し、信じられぬ。あの「グリーンワーム」がこんなに値が張るなんて。
「俺は絶対ぇにグリーンワームを仲間にしたくはないな」
「それな」
アルザスもどうやら私と同じ心境ようだった。
良かったぜ。私の感性がおかしいのかと危うく疑うところだった。
「いやぁ、意外とグリーンワームは好評で驚きました。お次はゴブリンです!このゴブリンは、全ての言葉を喋ることが出来る言語理解、そして何とも珍しい氷魔法というスキルを所持しています。こちらも金貨3枚から!」
「氷魔法!?」
「そんな馬鹿な!」
「き、金貨20枚!」
「21枚!」
おっと、【言語理解】と【氷魔法】だって?
【言語理解】はよくある主人公が異世界に行ったら貰えるチートスキルの一つじゃないですか。
もしや、あの「ゴブリン」はこの世界の主人公?
いや、そんなことは無いか。考え過ぎだな。
でも、【氷魔法】が使えるのには目を剥いた。
なぜなら、【氷魔法】は存在しないからだ。
取得可能スキル一覧に載っていないということはそういう事だろう。
【水魔法】と【風魔法】を使って氷を作り出せることは出来るが、そもそも【氷魔法】という概念がこの世界にはない。
…欲しい。是非とも仲間にしたい。
あのゴブリンを購入したらゴブリン四天王が作れそうだ。
えーと、確か自分の持っている番号札を上げて落札額を言うんだったよね。緊張するなぁ。
「金貨40枚!」
「もういませんか?」
「金貨60枚」
どよめきが会場内に漣を打つ。
幸いにも私の手持ちは金貨60枚程度で揺るぐことはない。それに、今から仲間になるであろうあの「ゴブリン」には金貨60枚以上の価値がある。
「お、おい!!貴様の様な青二才なんぞに払えるのか!?アア?」
ズボンからはみ出た肉を揺すりながら唾を吐く貴族と思わしき男。頭が鳥に食い散らかされたようになっているため、思わず吹いてしまう。
「ぷっ…」
いや、仕方ないよね。私、禿げ察知能力高いから。あんなの見せられたら吹いちゃうよ。好きで禿げになったって訳じゃあないんだろうけど、禿げになるくらいなら剃ったほうがマシかな。
「き、貴様!私を笑ったな!?ぐっ…!!」
「別に悪気がある訳では無い。気にするな」
「気にするわ!!貴族に向かって何たる態度か!貴様、覚えてろよ!」
「そう言えば、お金が払えるかどうかだったな?それなら大丈夫だ。こう見えても私は金持ちだからな」
貴族さんは荒い鼻息を立てて席を立とうとするが、それを隣の貴族に止められる。
「貴様、何をするか!!私が愚弄されたのだぞ!」
「落ち着いてください、ホーキンス様。あの服を見てください。…例の軍服ですよ?」
そう、今日は軍服でやって来ました。
風の鎧プレイヤーはこの帝国で何故か一昨日から指名手配になっているからね。何でだろうね。全っ然心当たりがありませんわ。あはは。
「く…くそっ!!軍服…だと…?ぐぬぬ」
「ここでは何も手出しは出来ませんので、ここは貴方の尊大な聡明な心で軍服をお許しになってください」
「…そうだな。たかがゴブリン如きで熱くなる私も私だったな。首の皮一枚繋がったなぁ、軍服」
「五月蝿い、禿げ」
「ハゲ?貴様私のどこを見ている!」
「ホーキンス様!!お静まりを」
顔を茹でダコのように赤らめさせた貴族さんは再び自身の席に座り直した。頭から蒸気がプシューと言いながら出てきているのに再度吹いた。
「で、では、誰もいらっしゃらないようなので、番号札260番の金貨60枚で落札です」
先ほどの貴族からの恨みがましい視線を受け流し、番号札を下げる。受け流す技術を身につけた私を褒めてやりたいね。
「やりやすね。流石るしさん」
「あのゴブリンはどうしても欲しかったからね。それにー」
「それに?」
「いや、何でもない」
それに、ゴブリン四天王を作ってみたいんだなんてことは口が裂けても言えないからね。だって恥ずかしいんだもん。
「気を取り直して次に行きましょう!なんと、お次はドワーフです!」
ドワーフ?ドワーフってあの?え?ドワーフはモンスターじゃないでしょ。
「るしさん、この国は人間主義国家ですぜ。人間以外はモンスターと同じ扱いになるんだと思いやす」
そうでした。帝国は人以外は認めない主義の国でした。…ってアレ?私、堕天使だけどいいの?
「るしさんは軍服という肩書きがありやすからね。そうそう襲われることはないと思いやす」
「え?じゃあ、アルザスは?」
「俺はシナンティシで貰った偽装の腕輪を嵌めてるからな。種族は人間にになってるはずですぜ」
それなら納得だね。【鑑定】を使っても種族はドワーフではなく、人間になってたから、ちゃんと偽装の腕輪は機能しているようだ。
どんどんとオークションが進んでいき、これまでにエルフやリザードマンといったモンスターではない者達も次々に落札されていった。
その中で、アルザスは「フォレストウルフ」を落札した。結構ギリギリの 戦いだった為、見守る私も手汗が滲んだよ。
「さてさて、本日最後の大トリとなりますは、何と、オークション史上発のレア度?モンスター」
うほぉ。レア度?ですか。
…落札だ。これは確定事項だ。
「永遠卵だぁぁぁぁ!!!」
「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」」」」
永遠の卵?何ですかいそれ。不思議卵の従兄弟的な感じなのかな。
白をベースとした卵に黒い蛇模様が絡みつくように入っている。
アルザスは「フォレストウルフ」を落札出来たから満足気な顔をしている。
だが、私はこのままでは満足出来ない!こんなに強そうな卵が目の前にあるんだから、手を伸ばさないわけにはいかないね。
「るしさん、一応鑑定しておいた方がいいでげすよ」
「そうだね」
もしも偽物だったら笑い事じゃ済まないからね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
種類 卵 ☆?
名前 永遠卵
…永遠に孵化することはないと言われている伝説の卵。これまでに、幾万人という人の手を渡ってきたのだが、孵化した試しがない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本物だった。良かったぜ。もしも偽物だったら戦争だね!
「落札金額は、金貨100枚から!」
高いが、これが正当な値段だろう。必ず落としてみせる!
「120!」
「123」
「白金貨15!(150)」
「金貨200」
「金貨290」
グッと値段を上げたのは先ほどの禿げ貴族。ニタニタと重い頬肉を上げている。
「300!」
「310」
他にも粘るものが居るが、その笑みは崩れ去ることは無い。余裕の表情を浮かべている。
「450」
さらに金額を釣り上げ、粘るもの達が少なくなってきた。
「4…460!」
このまま行くと、金貨1000枚超えるもしれない。
それだけは阻止したいところだ。ということで、そろそろ出陣しよう。
「金貨800」
「「「は?」」」
よし、誰も手を挙げなくなった。このまま挙げないでくれると助かるのだけど。
「き、貴様!!!そんな大金持っとるはずがなかろう!?馬鹿にしておるのか!?」
「ん?払えるから大丈夫だ!心配してくれたのか?流石は尊大で聡明な心を持っていらっしゃるホーキンス様だ」
「ぐ…ぬぬぬぬぅ」
これだけの支出はギムレットには内緒にしておこう。ギムレットのお説教は長いからね。
「ほ、他に手を挙げる人がいらっしゃらないため、番号札260番の金貨800枚で落札です!!」
「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
スタンディングオベーションが起こる。…何故に?凄く恥ずかしいんだけど。
ホーキンスさん、憎悪のこもった目でこちらを睨みつけられても困ります。私だって永遠卵が欲しかったんです。
ホーキンスさんは、隣に座っている貴族に何やら耳打ちされ、怒りで般若と化していた顔が再びあのニタニタ顔に戻った。
どうせ帰りに際に襲撃しようとかそういう手のことではないでしょうか。…望むところだ。返り討ちにしてくれるわ!フハハハハ!
「いやぁ大金が動きましたね~!!私、年甲斐もなく興奮しました!さて、これにて、モンスターオークションを終了とさせていただきます。落札された方は、番号事にお呼びしますので、席を立たないようお願いします。おかえりの皆様、お忘れ物にご注意ください。そして、またのお越しをお待ちしております」
「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
番号を呼ばれ、舞台裏にまわると檻に入った「ゴブリン」と永遠卵が入ったガラスケースが待っていった。
「番号札260番のるし様でいらっしゃいますね?」
「はい」
司会者と同じ黒い服を纏った男の人がいた。
「では、この紙にサインを」
紙には支払い金額が書かれており、サインした瞬間にそのお金が渡るようになっているらしい。
便利だ。
ササッとサインをし、まずは檻に入れられた「ゴブリン」と向き合う。クネクネして顔を下に向けているため、女の子何じゃないだろうか。
「るし様、あのゴブリンには奴隷の首輪が着いているので、逆らえば殺してもらっても構いませんよ?貴方ならばまた買えば済むことなので」
「外す方法は?」
「…首輪の後ろについている赤い宝石に手を当てると外れます。ただ、これは主人限定ですがね」
と言って、男の人は檻の中からゴブリンを引っ張り出した。
「Ga……」
「よろしくね。君は今日から私の仲間だ。あぁ、これは要らないね」
「ゴブリン」の首輪に手を当てると、カシャリと音を立てて首輪が外れた。
それに対して「ゴブリン」と男の人が困惑した顔を向ける。
「よ、宜しいのですか?」
「ああ。では、永遠卵を貰おうか」
「は、はい。少しばかりお待ちを」
男の人は大きな鍵を取り出し、ガラスケースの鍵穴に差し込んだ。
ガチャ
ゆっくりとガラスケースが開き、永遠卵が手渡される。
腕の中に入りきらない大きさに驚きながらも、そっと地面に下ろす。
確かこれはアイテムボックスの中に収納可能だったっけ。素のまま持ちかけるのも辛いから入れておこう。
さて、夕陽も落ちかけてきたし、もう帰ろうかな。
「ラム、行こうか」
ラムと呼ばれた「ゴブリン」は頭にハテナマークを浮かべた。
「君は今日からラムだよ。私はるしって言うんだ。宜しくね。私の新しい家族さん」
「Ga…?」
やはりハテナマークを浮かべたラムは首を傾げながらもるしについていく。
…内股だ。これは女子決定だね。
「またのお越しを!」
男の人の声が後ろから聞こえ、一応手を挙げておいた。
また行く機会は当分来ないと思うけど。
アルザスと合流し、スラム街を抜けるために足早で進む。
「るしさん、気づいていやすか?」
「うん。テンプレだね」
いつの間にか周りをぐるりと囲まれていた。
【鑑定】を入れると、大体一人一人のLv平均は15くらいだ。
「軍服さんよぉ。大人しくそのゴブリンと永遠卵を渡してくれやせんかねぇ?」
リーダーと思われる男がそう喋りかけてきた。
渡すつもりは毛頭ない。
しかも、タダで渡せというのだ。コイツらは馬鹿か?金貨860枚をタダでというのは何とも馬鹿らしい話しだ。まぁ、払うからくれと言われてもあげないんだけどね。
「私の進む道を遮るということは死を意味するが?」
「るしさん!?相手はNPCでげすよ?(ボソッ)」
「分かってるよ。殴って気絶させるだけ(ボソッ)」
警告のつもりで【王の威圧】をonにする。
これで引いてくれると有難いんだけど。
「…っ!!流石噂に名高い軍服様だ。だが、俺らもこれが仕事でな。野郎共、かかれぇ!!」
「「「うぉぉぉぉおおおお!!!」」」
うわぁ、来たぁ。人数は全部で18人か。
強そうな武器も見当たらないし、これくらいなら1人で勝てそうだな。
「ラム、アルザス、私1人で大丈夫だと思うから見ててね」
「るしさんなら大丈夫だな。ほら、ラムさん、下がるでげすよ」
「Ga…?」
短剣を振り上げる男の鳩尾に拳をめり込ませる。
「ぐあっ…」
「スティールラック!」
【運盗み】を発動させ、友達直伝の回し蹴りを放つと、飛ばされた男が他の奴にぶつかり、そのまま気絶。
軍服の性能を上手く使い、スピードに乗ったまま、近くで武器を構えていたヤツにアッパーを食らわせる。
相手の骨の折れた嫌な感触がしたが、死んでないからセーフだ。
振り降ろされた武器を上手く避け、襟首を掴み他のヤツに向けて投げつける。
「うわぁ。るしさん荒れてるなぁ」
「Ga…」
ものの数分で決着はついた。いつの間にか死体の山が出来ている。(死んでないけど)
ピロリん。
『Lvが上がりました』
『2ポイント獲得しました。任意のステータスに割り振ってください』
『スキル【闘術】を習得しました』
っしゃ!「ゾンビ」と戦った経験が積み重なって、ここでついに開花したぜ!!
「るしさん、やりすぎですぜ。途中から奴ら逃げ出そうとしていたですぜ?」
「まじ?気づかなかった…」
ごめんね。貴族の差金さん。
恨むなら貴族を恨むんだよ?私は恨んじゃダメだからね?
「こっちです!警備員さん!」
おっと、騒ぎを聞きつけて、誰かが警備員さんを呼んだようだ。ここは早く撤退しましょう。
「るしさん、1度ユニオンハウスに戻りやしょう」
「だね。ラム、こっちにおいで」
恐る恐る私の手を握るラム。見ると足が震えている。
落ち着かせるようにポンポンと頭を撫で、警備員の足音が近くなってきた頃、ユニオンハウスに転移した。
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