運極さんが通る

スウ

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道具屋さんに行こう

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未だに倒されていないフィールド裏ボス、「デュラハン」。私達はその「デュラハン」を倒すべく、Live台でプレイヤー達の勇姿を観ながら研究をしている。殆どのプレイヤーは、状態異常攻撃である【不浄】を食らい、撃沈している。そして、「デュラハン」に到達する前に、お供の「リビングアーマー」に殺されていくのがここ何時間かで行われたことである。正直、なんの参考にもならない。
だって、「デュラハン」は微動だにせず、だもん。時々飛んでくる矢を大剣で防いでいるが、それくらいだ。

「「「攻略組だ!!」」」
「お!今日こそは行けるだろ」
「いや、俺は行けないことに金貨3枚!」
「俺は行けることに金貨1枚!」
「デュラハンあんまし動かねぇからなぁ。攻略法が分からん!!」
「おい、あれ軍服じゃね?ってことは、軍服がデュラハン攻略しに行くってことなんじゃ…」
「…あれ見ろよ!あそこにいる6体全部テイムモンスターだぜ?しかも、あれは…限定の装備シコンソウコンじゃねぇか!!」
「いくら積んでんだよ…やっぱ、積めば報われんのかな」

攻略組が、一斉に攻撃を仕掛ける。今回はMAX10人パーティーのようだ。1人ずつが「リビングアーマー」の相手をし、残った5人で「デュラハン」に突っ込む作戦のようだ。だが、「リビングアーマー」は正規のフィールドボス。たかが1人で止められるものではない。が、そこは攻略組だと言うだけあって、足止めを目的に「リビングアーマー」の攻撃を避け続けている。「デュラハン」に到達した5人。それを見た「デュラハン」は、ゆっくりと重い腰を上げた。

『久しぶりの客人ダ。御手柔らかにタノム』

「デュラハン」喋れるの?どうやって喋ってるの?顔ないじゃん!!

「るし様、あのデュラハンと呼ばれた鎧、強そうですね。私なんて一捻りで潰れてしまいそうです」
「…テキーラ、私達アレと戦おうとしてるんだけど…」
「大丈夫じゃ。テキーラ、妾がお前さんを守るからの!」
「バレンシア様、私なんか守る価値すらないというのに。…私も皆様の役に立てるよう頑張ります」

テキーラ、私も君を守りたいところなんだけど、私達の場合も1人ずつが「リビングアーマー」と戦うっていう作戦だから自分の身は自分で守ろうね。でも、危なくなったら隙を見て助けるから。

「「「うぉぉぉぁぁ!!!」」」

どうやら攻略組が「デュラハン」に攻撃を当てたらしい。

『少しはやるよウダが、これは避けキレルかな?』

「デュラハン」は、大剣を十字にきり、その中心を大剣の剣先で勢いよく貫いた。すると、十字が風をきって真っ直ぐ突き進み、2人のプレイヤーを狩った。

「んなっ!?」

斬撃を飛ばすというのか?これは厄介な相手になりそうだ。
突如仲間が2人死に戻りをしたことに気づいた残りの3人は「デュラハン」との距離をとろうとするが、身体が動かないようだ。恐らくは【不浄】で麻痺にでもかかったのだろう。
動けぬ3人に、「デュラハン」は何をすることなく元いた位置に戻り、胡座をかいて座った。止めは刺さないのかと誰もが思った瞬間、3人の首が飛んだ。映ったのは「リビングアーマー」。足止めプレイヤー達は狩られてしまったのだろう。画面に映るのは無敗のフィールドボスだけになった。

「るしー。いつアレを倒しに行くのー?」
「明日のつもりなんだけど、いいかな?」
「いいよー。でも、何で今日じゃないのー?」
「今日はね、装飾品を買いに行くんだ」

私の【神域拡張】は半径12mの状態異常を無効化出来るんだけど、戦闘になると飛ばされたりして12m圏外に出ちゃうかもしれないから念のために、耐性装飾品を買っておく。ジンとウォッカは状態異常を無効化出来るけど、バレンシア達には出来ないからね。
装飾品ていくらするのだろうか。…高いかな?









帝国の大通りを進むと、装飾品の店が多く並んだ通りに出た。どの店がいいのか分からないが、取り敢えず空いている店に行こう!
覗き覗き進むと、1件だけ異様に空いている店があった。空いているというか、お客様が誰もいない。

「お邪魔しまーす」

カランカランと明るいベルの音が鳴るが、店内は不気味な程に静まり返っていた。ふと、美しい宝石が目に入ったため、手にとろうとすると、バレンシアに止められた。

「るし、ここに置いてあるもの全て呪いがかかっとるみたいじゃ」
「え、ホントに?」
「無闇に触らん方がいいと思うんじゃ」

呪いなら反転出来るから別にいいんだけどね。しかも、【神域拡張】で呪いはゆっくりとだけど浄化されるはずだし。…でも、バレンシアを心配させたくないし、とりあえず店員さんを待とう。



待てど暮らせど店員さんはやって来ない。まず、人の気配もしない。オープンて書かれた看板が立っていたけど、もしかして買出しにでも行っているのかな。

「すみません。誰もいらっしゃらないですか?」

帰ってくる返事もない。もう少し待っていれば帰ってくるかもしれないから、そのうちに欲しいものでも決めておこう。今必要なのは、状態異常対策の装飾品。
麻痺、毒、混乱、呪い、ステータス低下、くらいだろうか。
【鑑定】を使い、店内を歩き回る。【鑑定】で、耐性がマイナスになっているものが本来のプラスだから、すごい低いヤツを探さないと。

「るし、あの奥においてあるやつの呪いが1番強そうじゃ」

どれどれ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 種類  懐中時計
 名前  呪われし思い出
 パッシブスキル
 ・全耐性-50
 ・ステータスの低下-20
 QUA  A
 …呪われた懐中時計。元は中睦まじき夫婦が持っていたもの。触れたものには災いが起こる。☆5

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

おー。バッチバチの呪いですなぁ。
【全耐性】と【ステータスの低下】が美味しい。是非ともこの時計を購入したいところだが、肝心の店員が帰ってこない。

「るしーこれ良くないー?」
「ジン!触るなと言うとるじゃろ!!」
「だってさー僕とウォッカの装備には状態異常無効化付いてるから大丈夫なのー」
「じゃからというて、もしもの事があったらどうするのじゃ?」

大人バレンシアからすれば、目に入れたものを嬉嬉として触ろうとする子供ジンを放っておけないのだろう。

ジンの指したものは真っ黒のネックレス。チェーンに指輪がついているやつだ。時に唸り声が聞こえるのは置いといて、バレンシアにバレないようそっと手に取る。キラリと妖しく光るその黒い指輪には文字が掘ってあったが、文字が掠れていて上手く読めなかった。


 バンッ
勢いよく扉が開き、一人の男性が入ってきた。この店の名前が入ったエプロンをつけているから、店員さんだろう。その店員さんは私達を見て笑顔を浮かべた。

「お客様ですか。お待たせしてすみません」

ボロボロで、今にも倒れそうになる身体をカウンターで支えている。震える足は、とっくに限界がきているのだろう。

「あの、大丈夫ですか?」
「はい、少々転びましてね。私、ドジ何ですよ。あはは」

その傷は転んだ程度で付くはずがないだろうと言う言葉をグッと飲み込み、ベルモットに【回復魔法】を掛けるよう指示を出す。

「きゅ!」

傷は見る見るうちに回復し、顔に出来ていた痣も消えた。よく見ると、皮膚に鱗があるのに気付いた。帝国は人間主義のため、男性のような人ではない者にはキツく当たっているのだろう。

「あの、ありがとうございます。貴重な魔力を使っていただき、誠に光栄です」
「いえ、当然のことですよ」
「お金はいくら払えばよろしいでしょうか」

ん?何で話がそっちに転がっちゃうの?

「お金は要らないです」
「そんなっ!申し訳ないです!!人間ヒューマン様には多大な迷惑をお掛けしました。ですから、お金を払わせて下さい!!」

頑としてお金を払おうとする男性。一体何が彼をそこまで追いやるのかはよく分からないが、一旦ここは落ち着いてもらおう。彼は私を人間ヒューマンだと勘違いしているみたいだし。

「えーと、私、人間ヒューマンじゃないですよ?」
「え?」
「うーん、なんて言えばいいかなぁ。私は、通りすがりの正義の味方です。貴方にそんな傷を負わせるような悪い人ではありません。だから、怯えないで下さい。私は、貴方の味方です」

ほら、と頭に生えている角を指すと、男性は目をパチパチと瞬かせ、呆けた表情になった。
まぁ、急に私は、貴方の味方ですと言われても信用ならんだろうから仕方ないけど。
男性がなにか言おうとしたその時、

 バンッ
今度は扉が吹っ飛んだ。
外から侵入してきたのは茨の刺繍が入ったマントを着た男2名。厳つい顔に、額に傷が入っていて、より 恐い顔に仕上がっている。

「おい、亜人ハーフ。我らが騎士団から逃げるなど、言語道断。よって、貴様の死刑が確定した。速やかに投降しろ」
「すみません!!堪忍して下さい!!この通りです」

男性は額を地面に擦りつけ、騎士団と名乗った2人組に綺麗に土下座した。これが、土下座の極み、などと場違いなことを考えていると、騎士団の人…分かりにくいからそいつを騎士1としようか、と目が合った。

「貴様は、こいつの仲間か?」

はて、どう応えようか。

 →▲無論だ。
    ▲いえ、違うであります!!
    ▲家族です。
    ▲いや、初対面だ。

うん、この四択なら、これだ。

「いや、初対面だ」

その言葉を聞いて、男性は悲しげに目を伏せた。騎士団の2人は嫌な笑みを浮かべて、土下座をしていた男性を起き上がらせた。

「ふっ。命拾いをしたな。だが、賢明な判断だ」

そしてそのまま男性を引っ立てようと店を出ようとしたところで、騎士1の手を掴んだ。

「初対面だが、私は、彼の味方だ」
「何言って」

右拳を騎士1の腹に沈み込ませ、撃沈させる。

「き、貴様っ!!」

腰に掛かっていた剣を抜こうとした騎士2の頭にウォッカの容赦ない鉄拳が落ちた。まるで鈍器に殴られたかのような音がした。
…あれは痛そうだ。

「安心しろ。手加減はした」

いや、してないでしょ。素手であの音が出るのはどう考えても手加減してないよ。
パンパンと手を払い、伸びている騎士達をロープで巻いて外に吊るしておく。
そして、床に座り込んでいる男性に手を差し出した。

「えっと、装飾品を買いに来たんですが、麻痺、毒、混乱、呪い、ステータス低下を防止する装飾品で、幾つか買いたいんですが、どれがおすすめですか?」
「へ?」










道具屋さんで幾つか装飾品を購入し、【反転】をかける。
バレンシア達には、麻痺、毒、混乱、呪い、ステータス低下を防ぐための装飾品を渡しておく。
その他にも、気になったものを一つずつプレゼントして上げた。

右耳についているイヤリングを触り、思わずにやける。実はこれ、皆がお金を出しあってプレゼントしてくれたのだ。曰く、日頃の感謝の印だそうで。頬がゆるゆるな私は、家に帰るまでイヤリングから手を離さなかった。

陽の光に反射したアメジストは、軍服の耳元でより一層輝いた。
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