主の兄君がシスコン過ぎる!

鳩子

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10.シスコンの極み

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 さて、肝心の姫様ですが、こちらは、無事に主上のご寝所にお仕えされまして、入内、ということになりました。

 最初、女御との仰せだったとのことですが、あの関白殿下シスコンが、妹がないがしろにされてはかなわない! などと言い出して、今、ご寵愛を賜るお后さまが、闇に葬られる……などとなりましたら、恐ろしいので、ここは、穏便に、中宮を賜りまして、後宮の主に君臨されることになりました。

 姫様は、愛らしいお姿と聡明さで主上からの寵愛をほしいままとされ、お子様を五人あげられて、八十の賀まで久しく、幸せな人生をあゆまれますが、こちらは、私の語るところではありますまい。

 私、のことは良いのですが、問われもせずにかたりますと、瞶子さまの入内に伴いまして、私も宮中にて瞶子さまお側つかえの女房として働いておりましたところ、通う男がありまして、その男の、間に五人の子供を設けました。

 懐妊の度に、実家へ下がりましたが、丁度、瞶子さまのご懐妊と同時期でございまして、瞶子さまのお子様の乳母めのとに抜擢をされ、そのお子様のうち、お二人が帝となりましたので、私は、もったいなくも、帝の乳母とのことで、

『二条のおの人』

 と呼ばれるようになって、通う男が関白殿下ということもありましたので、私のような下々のものには勿体ないほど、きらびやかな生涯になりました。

 一つ申し添えておきますと、私に通う男は、私との子を、ご正室さまのお手元で育てられました。

 私のような者の子どもが、関白家の一員として、立派になりましたのは、私も存外の喜びです。

 けれど、中宮さまに、ほんの僅かなご懐妊の兆しがあるとみるや、せっせと私へと通って、

『君が一番信用できるから、かならず、乳母になるのだよ』

 などと、真剣に、私に挑まれましたのは、さすがにシスコンも、ここまで極めれば、かえって、立派なものではないかと、いまは、感心しているところです。


---了----
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