オネェな東宮に襲われるなんて聞いてないっ!

鳩子

文字の大きさ
2 / 106

02.わたくし、参内いたします

しおりを挟む



「中宮さまが女楽の管絃かんげんを催すようよ。ぜひ、あなたも参内しなさいと使いが来ましたけれど……」

 母様に呼ばれて母屋に参ると、そんな嬉しい知らせがあって、わたくしはとびあがりそうになるほど嬉しくなってしまった。

 管絃というのは、楽器の演奏会のことで、たびたび宮中や公家のやしきで催されて、楽器の得意な方が呼び出されたりもする。

「参内してもよろしいのですか?」

「ええ、ここにはそう書いてありますよ」

 母様は、わたくしに中宮さまのおふみを見せて下さる。たしかに、『管絃を催すから、参内するように』という旨の言葉が書いてある。

 中宮さまは、わたくしにとっては、叔母上さまに当たる方。当今様(今の帝)のご寵愛を一身に受けて、『中宮』という重い立場に冊立された美しく聡明な女人。

 わたくしたち藤原氏(二条関白家)にとっては、なくてはならない方で、二条関白家の隅々まで気を配っている素晴らしい方でもある。

 おそらく、今、わたくしをお召し下さったのは、一月後に、帝と中宮様の四男である実敦さねあつ親王と、わたくしが結ばれるのを考慮して下さってのことなのだと思う。

 実敦親王は、親王というお立場なので、宮中にお住まいとして、襲芳舎しゅうほうしゃ雷鳴壺かんなりのつぼ)を賜って居ると言うから、皇太子殿下と同じように、将来は、朝廷の為にご尽力される立場になるのだろうと思う。

 そんな実敦親王をお支えするには、わたくし自身も、宮中の人間関係などをよく知っておく必要がある。それで、宮中へ呼んで下さったのだ。

 実敦親王は、折々、お和歌うたを贈って下さったり、お文を下さったり……宮中に参内した時なども、お話しに来て下さったり(勿論、御簾越しにだけど)する優しい方なので、わたくしも、すっかり打ち解けて、一月後に、むすばれるのが本当に嬉しい。

 顔も知らない、ひととなりもしらない方に嫁がされた、姫達の話など、いくらでも耳にしている。そういう意味で、わたくしは、気心しった方と結ばれるなんて、幸福なことだと胸を熱くしていたのだけれど。

 ……最近、実敦親王は、お忙しいのか、お文も下さらない。だから、わたくしは、寂しいような、心細いような、物足りないような気持ちになっていた。

 ならば、わたくしの方から、宮中に参内するついでに、お訪ねしたら、ヘンかしら。はしたないと言って、怒られてしまうかしら……。

 わたくしは、少しの好奇心と、冒険心の混じった―――イタズラ心のような気持ちを抱きつつ、母様に訪ねていた。

「参内したら、実敦親王とも、お会いできるかしら?」

「訪ねてきて下さったら、逢えるでしょうし……きっと、あなたが参内したことを知ったら、会いに来て下さるでしょう。あの方は、とても、気を遣って下さる方だから」

 母様の言う通りだ。

 気を遣って下さる。……でも、それじゃ、すこしだけ、物足りない、ような心地で。一月後には、結ばれる方だとは解っているのに、どうしても、お会いしたい気持ちが先に立ってしまう。

 仲の良い、他家の姫君とお話ししていると、お和歌うたのやりとりをした殿御と、御簾のしたで手を握ったり、こっそり抜け出して、よりそって過ごしたり、牛車の中で……その、親密になったり……したことがあるというのに、実敦親王は、そういうことは、なさらない。

 多分、わたくしが、お願いしても……分別のないことをなさらない方。

 勿論、あの方に嫌われたくないから、そんなことは申し上げないけれど―――季節の折々につけて、贈って下さる、優しいけれど素っ気ないようなお和歌うたじゃなくて、もっと、私を、好きだと言って欲しい。

 気遣って―――では、物足りないわ。

 わたくしを、求めて欲しいのですもの。

「では、管絃は三日後ですから、折角お誘い下さった中宮さまの顔に泥を塗るようなことにならないよう、いまから、しっかり楽器を練習しましょうね」

 母様に言われて、少し、憂鬱な気分になったけれど(わたくしはすこし、楽器が苦手なの)、管絃に参加するのだったら、必要なことだから……と、わたくしは、気持ちを切り替えて、そうの練習をすることにした。






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...