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73.わたくし、男装束ですのよ~っ!!
しおりを挟む案の定、香散見さんは、それに気がついて、肩を震わせて笑っていらっしゃる。
この方、案外、性格悪いわよっ!
「……なんですの? お笑いになって」
「んー? ……やっぱり、アンタって可愛いと思って、さ」
と、わたくしの腕を、ぐい、と引っ張る。
胸の中。抱きしめられてしまって、わたくしは、胸が苦しい。
邸の奥から出してきて、適当に香をたきしめた衣は、なんだか、うっすらとカビの匂いがした。わたくしの着ている装束もそうなのだけど。
「ねえ、高紀子」
「はい?」
「やっぱり、ちゃんと、文を交わしたり、蘇芳色の装束がないとイヤ?」
わたくし、なんのことだか、さっぱり解らなかったので、きょとん、としていると、香散見さんが、わたくしの耳許に低く囁く。
「アンタが欲しいの」
掠れた声で囁かれた瞬間。
鼓動が、倍位の速さになって、眩暈がしそうだった。
「わかる?」
ぐい、と香散見さんは、わたくしに、身体を密着させる。……というか、その、密着したくても出来ないというか、その……、香散見さんの、その、『男の人』の部分は……、熱く脈打っていて……固く、……香散見さんが、雄であることを、主張していた。
逃げ腰になったわたくしの手を、香散見さんが捕らえる。
「わりと、アンタに最初にあってから、こうなのよ。……でも、ちょっと、アタシ、限界。この部屋、アンタの匂いで、満ちてるの。………アタシ、ガマン出来ないわ」
香散見さんは、私の答えを待っている。
わたくしも、香散見さんは嫌いじゃないし、香散見さんの、妃の一人になると言うことは、納得してはいたけれど。
わたくしの乙女心としては!
お文の一枚、蘇芳色の衣装(これが花嫁装束なのです)というより……。
なんで、この……この状態で! という気分。
女言葉の香散見さんは、東宮殿下の姿形で、男装束で。わたくしだって、男装束。
せめて、女装束……っ! わたくしだけでも、女装束!
目で訴えると、香散見さんは、笑ってから、私に口づけた。
存外……男の方の口唇も、柔らかいのね、なんて感心していると、するり、と香散見さんの舌先が、わたくしの口の中に忍びこんで来る。驚いて、身をよじろうとしたのに、香散見さんは、びくともしない。
「んっ……っ」
自分のじゃないような声が漏れる。
「アンタ、装束のことなんか気にしてたみたいだけど……どーせ脱ぐから一緒」
んふふっ、と香散見さんは、人の悪い笑みを浮かべた。
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