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74.わたくし、とうとう・・・。
しおりを挟む香散見さんの手が、わたくしの素肌を辿る。
存外大きくて、温かくて……少し、かさついた手をしていらっしゃった。その手が触れたところが、すべて、痺れるような甘い刺激があって、わたくしは、香散見さんの手が動く度、身を竦ませて、びくっと、反応してしまう。
ああ、恥ずかしい。
「……もっと、素直に、アタシに反応してイイのよ?」
わたくしが装束のことばかり気にしていたので、香散見さんは、まず、わたくしを丸裸にしてしまった。褥の上ではじめたわけではなかったので、下は床。冷たそうだと思って居ると、香散見さんは、わたくしが着ていた装束を、わたくしの身体の下に敷いてしまった。
「皺に、なりますわ」
抗議の声を上げたつもりだった。けれど、と香散見さんは、ちょっと、ずれておいでだった。
「大丈夫よ、それ、もう、アンタ着ないでしょ?」
着ないかも知れませんけれど、うちの衣装部屋にはしっかり保存されると思いますわよ。
装束のように高価なものは、大切にして長々と使う。ある程度の体格差があっても大丈夫なのだ。
なので、汚したり皺になったりすると、ちょっと、わたくし、恥ずかしいのだけれど。
勿論、香散見さんが、そんなことを考えて下さるはずもなく。
わたくしは、身体の下で、装束に皺が付いていくのを、感じているほか、なかったのだけれど。
ともかく、香散見さんは、わたくしを丸裸にした以上、途中で止めるつもりなんて、これっぽっちもなかった。
手で、じっくりと身体中を弄られてから、唇が重なる。
舌を絡み合わせる、濃厚な口づけをかわしてから、香散見さんの唇が、わたくしの肌をたどる。
わたくしの頬に口づけて、鎖骨のくぼみのところに、一つ、口づけを落とす。
思わず、わたくしの腰が、甘く跳ねた。
「あっ……っ」
思わずもれてしまった声に、わたくしは、恥ずかしくなる。自分の口から迸った声とは思えないほど、あまくて……イヤラシイ声だった。
「んふっ……、アンタ、感じてるのね?」
「えっ?」
まさか、そんなことを聞かれるとは思ってもみなくて、わたくしは、顔から火が出るのではないかと思うほど、本当に恥ずかしくなって、顔を背けた。
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