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第一章 花の宴の夜は危険!
1.二条関白邸・宴のまえ
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当代の関白殿下は、藤原忠季さま。
代々、見目麗しい、上つ方とのお噂だけど、まだ、お姿を見たことはない。
関白殿下のお側に用事が有るときは、邸の女房達が我先にと争っているので、私は、ちょっと近付かないようにしているのだ。
だって、鬼に魅入られた、鬼憑きの姫だなんてバレたら困るものね。
せっかくのお邸勤めなのだから、静かにして、目立たずにいるのが最重要。
ここでバレたりしたら、うちの父親から苦情をいわれるだろうし、兄さまにも、迷惑が掛かるものね。
だから、『私は、早蕨』と言い聞かせながら、宴の席をやり過ごす算段。
噂に依ると、今回の宴の禄は、豪華な反物らしいから、しっかり頂いて、早蕨と一緒に、表着に仕立てようと心に決めているんだ。
綺麗な装束を身に纏うと、気分が良いものね。だけど、うちは、あまり裕福ではないから、めったに新品の装束なんて、作れないのだ。だから反物は、本当に嬉しい。
実は、関白殿下のお邸で働くから、と言うことで、今、私が、着ている装束フルセットは、父親の妾(側室)から御借りしたもの。
この季節に相応しい、『山吹』の襲。
青色の単の上に淡朽葉ばかりを重ねた五衣は、地味だけど、私には丁度良いかと思う。
ハデな『色々』の襲なんか私には似合わない物だしね。(色々の襲は、紅の単の上に、蘇芳、黄色、紅梅、萌黄、薄紫と五衣をかさねたハデなもので、一体、どんな美人なら似合う物か、逆に見てみたい)
うちの母は、あまり装束とかには頓着しない方だから、本当にありがたい。
その上、お裁縫の得意な方なので、ささっと小袖(下着)を作って『出仕のお祝いに』なんて下さったので、本当に、あの方の方には足を向けて寝られない。
とはいえ、うちの父親の妾と云うくらいだから、あまり、裕福ではないので、古びてはいるから、見劣りするけど。(古びた淡朽葉には、それなりの風情が漂う物よ!)
それだって、私の手持ちよりは、大分上等なものだから、ありがたい。
だけど、ちょっと、寂しいから、小袖に、とっておきの香をたきしめておいた。
香は、様々な香料をブレンドして、その上、一年以上熟成して作るから、貴重なものなのね。
私の香は、特別で熟成に三年も掛かるし、調合も大変。
昔、鬼に教えて貰ったもので、本当は、この香を人に聞かせてはならないのだけど。
衣にたきしめるわけでもないし、小袖だけなら、気づかれることもないでしょうから、まあ、良いか、と気軽な気持ちでたきしめた。
だって、ほかの女房たちは、都に慣れていて、キラキラ輝くようだし。
殿方との受け答えなども、難なくなさる。私なんか、田舎暮らしなものだから、本当に、殿方なんかとはお話したことは、殆んどない。
だから、
「そこな、女房」
なんて気軽に呼び掛けられると、声が裏返るほど、驚いてしまうのよね。
それを、お邸の女房に笑われる。
どうせ、田舎暮らしですよ! まったく、都の女って、性格が悪いのね。
「早蕨は、お仕えする姫がいるのでしょう? そんな粗忽な様子で務まるのかしら。主が知れるわねえ」
「あら、揚梅さん。そんなことをいっては、可哀想よ。早蕨さんの主は、あの、鬼憑きの姫なんですから」
「ああ、ただの『鄙つ女』じゃないのね。早蕨さんも、お可哀想に」
この場合、私本人も、しっかり馬鹿にされているのだけど、もう、反論も馬鹿馬鹿しい。
どーせ、反論したら『まぁ! 口答えしたわ』と言われるのは、目に見えているのだ。
「ご心配下さって、有り難うございます」
などと言いながら、そそくさと去るのが、ここは上策だ。
あ~、肩が凝る!
華やかなお邸は、素敵だけど、やっぱり、私は、のんびり田舎暮らしが性にあってるのだ。
早く、宴、終わらないかなあ。
今日が準備の最終日。明日から宴本番。とにかく、無事に、宴が終わりますように! と、私は、祈らずにはいられなかった。
代々、見目麗しい、上つ方とのお噂だけど、まだ、お姿を見たことはない。
関白殿下のお側に用事が有るときは、邸の女房達が我先にと争っているので、私は、ちょっと近付かないようにしているのだ。
だって、鬼に魅入られた、鬼憑きの姫だなんてバレたら困るものね。
せっかくのお邸勤めなのだから、静かにして、目立たずにいるのが最重要。
ここでバレたりしたら、うちの父親から苦情をいわれるだろうし、兄さまにも、迷惑が掛かるものね。
だから、『私は、早蕨』と言い聞かせながら、宴の席をやり過ごす算段。
噂に依ると、今回の宴の禄は、豪華な反物らしいから、しっかり頂いて、早蕨と一緒に、表着に仕立てようと心に決めているんだ。
綺麗な装束を身に纏うと、気分が良いものね。だけど、うちは、あまり裕福ではないから、めったに新品の装束なんて、作れないのだ。だから反物は、本当に嬉しい。
実は、関白殿下のお邸で働くから、と言うことで、今、私が、着ている装束フルセットは、父親の妾(側室)から御借りしたもの。
この季節に相応しい、『山吹』の襲。
青色の単の上に淡朽葉ばかりを重ねた五衣は、地味だけど、私には丁度良いかと思う。
ハデな『色々』の襲なんか私には似合わない物だしね。(色々の襲は、紅の単の上に、蘇芳、黄色、紅梅、萌黄、薄紫と五衣をかさねたハデなもので、一体、どんな美人なら似合う物か、逆に見てみたい)
うちの母は、あまり装束とかには頓着しない方だから、本当にありがたい。
その上、お裁縫の得意な方なので、ささっと小袖(下着)を作って『出仕のお祝いに』なんて下さったので、本当に、あの方の方には足を向けて寝られない。
とはいえ、うちの父親の妾と云うくらいだから、あまり、裕福ではないので、古びてはいるから、見劣りするけど。(古びた淡朽葉には、それなりの風情が漂う物よ!)
それだって、私の手持ちよりは、大分上等なものだから、ありがたい。
だけど、ちょっと、寂しいから、小袖に、とっておきの香をたきしめておいた。
香は、様々な香料をブレンドして、その上、一年以上熟成して作るから、貴重なものなのね。
私の香は、特別で熟成に三年も掛かるし、調合も大変。
昔、鬼に教えて貰ったもので、本当は、この香を人に聞かせてはならないのだけど。
衣にたきしめるわけでもないし、小袖だけなら、気づかれることもないでしょうから、まあ、良いか、と気軽な気持ちでたきしめた。
だって、ほかの女房たちは、都に慣れていて、キラキラ輝くようだし。
殿方との受け答えなども、難なくなさる。私なんか、田舎暮らしなものだから、本当に、殿方なんかとはお話したことは、殆んどない。
だから、
「そこな、女房」
なんて気軽に呼び掛けられると、声が裏返るほど、驚いてしまうのよね。
それを、お邸の女房に笑われる。
どうせ、田舎暮らしですよ! まったく、都の女って、性格が悪いのね。
「早蕨は、お仕えする姫がいるのでしょう? そんな粗忽な様子で務まるのかしら。主が知れるわねえ」
「あら、揚梅さん。そんなことをいっては、可哀想よ。早蕨さんの主は、あの、鬼憑きの姫なんですから」
「ああ、ただの『鄙つ女』じゃないのね。早蕨さんも、お可哀想に」
この場合、私本人も、しっかり馬鹿にされているのだけど、もう、反論も馬鹿馬鹿しい。
どーせ、反論したら『まぁ! 口答えしたわ』と言われるのは、目に見えているのだ。
「ご心配下さって、有り難うございます」
などと言いながら、そそくさと去るのが、ここは上策だ。
あ~、肩が凝る!
華やかなお邸は、素敵だけど、やっぱり、私は、のんびり田舎暮らしが性にあってるのだ。
早く、宴、終わらないかなあ。
今日が準備の最終日。明日から宴本番。とにかく、無事に、宴が終わりますように! と、私は、祈らずにはいられなかった。
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