鬼憑きの姫なのに総モテなんて!

鳩子

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第三章 千年に一度のモテ期到来? 

11.気鬱ながらも

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「ちょっと、陰陽師さま!」

 抗議の声を明けると、陰陽師は、私をじろっと睨み付けた。

「直親」

 あー、そうだった。名前呼びしちゃったんだ。

「……直親さま! 御所は不浄なものを忌まれるのでしょう? 宮仕えの方なんかは、月のものでも宿下がりすると聞きましたわよ!」

 なのに、この、ザ・不浄のものを連れて参内しても良いものか。

「うむ。構わぬ構わぬ。……大抵、幽霊だなんて気付かぬから。大体、この中将なる幽霊女房は、作法なども危なげがない。かえって、あなたのほうが、あちこちをきょろきょろして、落ち着きがない分不審者に見えるだろう」

 言うなぁ……。

 呆れていた私の手を、陰陽師はそっと取った。

「とにかく、あの宮中という場所は、魑魅魍魎が巣くっている場所と言っても過言でない。おそらく、管絃の宴が張られるのは、後宮になるだろうから、私が訪ねていくことは難しい……」

「まあ、管絃だけなら、大丈夫でしょうけれど」

「いや、私は、あなたを巡り、二つの太陽が回っていると言うことだ」

 そういえば、それを陰陽博士にきくとか言っていたような……。

「陰陽博士に、それもお尋ねになったの?」

「ああ。気になったので聞いておいた。たしかに、あなたを巡って、尊き影が二つあると言うことで……、私は、あなたの身も心配で溜まらぬし、あなたが、帝にさらわれないかも心配だし……陰陽師の私としては、帝の御身についても、多少の心配はある」

 いや、臣なんだから、真っ先に帝の心配をしなさいってばっ!

 けれど、陰陽師は、深々と溜息を吐いているだけで、帝の心配なんか二の次という風情だ。

「私は、心配なのだ」

 ぐい、と陰陽師に腕を引かれる。あっという間に、私は陰陽師の腕の中に収まってしまって、『しまった』と思うけれど、この陰陽師は、藻掻いても放してくれない。

「帝や関白殿下が、あなたに、これほどご執心なさっているのだから、権力で、あなたをほしいままにすることも考えられる。なにせ、あちらを拒むという発想が、まず、通常はあり得ない方々だ。………だから、管絃などと称して、宮中へ行ったが最後、帝の御寝所にお仕えするようなことになったら……」

 私は、ぞっとした。笑えない。

「姫さま、万が一、そんなことになったら、すべて、帝の仰せのようになさるのですよ」

「ちょっと、早蕨。あなた、誰の味方なのよ!」

「それはもちろん、姫さまですけれど……諦め時というのもありますから」

『大丈夫ですよ、わたくしも、帝を驚かせて差し上げますからね。わたくしたち、姿ははっきり見えるでしょうけれど、消えたり現れたりするのは自由なのですよ』

「それで、不気味がられるのだ。そういう突拍子もないことを謹んで貰えれば、我ら陰陽師も、仕事の何割かは減るというのに、この者達ときたら平然と人を驚かすのだ。……まったく、胆の小さいジジイなどは、年に数人死んでいるのだぞ?」

 陰陽師は、なおも私を抱きしめたまま……。困ったなあ。

「直親さま……あの、そろそろ、お離し下さいませ……」

「なぜ?」

「……えーと……帝とか関白殿下の件が片付かないと……、落ち着きませんもの。まさか、こういう所に、検非違使が乗り込んでくることはないと思いますけれど……」

「ふむ。今のところは、あちらを立てて、忍ぶ恋にしておくか……」

 やっと解放されたので、私はとりあえずホッとした。

「それで、あなたは、宮中へ行くのだな」

「行かざるを得ないでしょう……。急病にでもなったとか嘘を吐いても、人を差し向けられるだけだろうし……」

「まったく、気の重いことだ……」

 本当に、先が思いやられる。


 


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