鬼憑きの姫なのに総モテなんて!

鳩子

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第四章 後宮には危険が一杯!

37.セクハラは撲滅すべしっ!

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「どなたを、選ぶとか、そういう問題ではなくて、今は、私も命が掛かっているんですけど」

 しかし、陰陽師に抱き締められるのも、どうなんだろう?

「じゃあ、鬼ちゃん、陰陽師と、一晩過ごすんだ」

 ふうん? と、陽がジト目でみつめてくる。一晩過ごすとか、ヘンな意味に聞こえるから止めて欲しい。

「仕方がないじゃない。それに、陰陽師も、これは、お仕事だから、へんな、下心とかは、ないですよね?」

 私は、必死に陰陽師にいうと、

「通常は、勿論」

 と、微妙な、回答をした。

 ああ! もうっ! 

「じゃあ、こうなったら、みんなで居ようか。その方が、あなたも安心でしょう、山吹」

 関白殿下は、唐突に思いついたように、仰有る。

「みんなで?」

「そうそう、みんなで。まさか、二人きりじゃないと、無理だとかは謂わないでしょうからね、ここは、みんなで休めば」

「では、私が山吹を抱き締めて、あなた方が、部屋の守護をすると?」

「いいや、そもそも、帝の場合、御衣おんぞでも身固めできるんだから、必ずしも、抱き締める必要は、ない。
 君の大先輩には悪いが、その先輩は、きっと、ヨコシマな気持ちだったのだろうよ。
 どうしても、体が触れていた方が良いなら、手を繋ぐとか、髪に触れるとか、色々あるよ。
 山吹だって、まだ、通う男も居ないのだから、夜通し抱き締められるのは、辛いことだろう。
 仮に山吹が、あなたを好いていたとしたら、呪法の為に抱き締められたのが一番最初……というのは、妙齢の乙女にとっては、耐え難いことなんじゃないかな。
 私が、山吹の立場なら、その前にせめて一夜、二人きりで過ごしたかった……と思うだろうねぇ」

 チラっと、関白殿下は、私に任せなさい目配せした。

 ああ、本当に、この口先八丁、有り難いわ!

 そりゃあ、三人とも立派な殿方だけど、やっぱり、こういう選び方って、嫌だもの。

 ありがとう、関白殿下。芝居に乗らせてもらいます!

「本当に、関白殿下の仰せの通りです。私も、まだ、殿方を知らないので、こういうことは……」

「そうそう、口づけも、まだなのに、ねぇ」

 ふふっと、関白殿下は笑う。

 こいつめ! 勝手に口づけしたくせに。

「では、そうときまったら、私は、手を繋ごうか。陰陽師は、後ろから抱いてあげるといいよ。左兵衛大尉は手で。これなら、実質、山吹を抱き締めているのは、陰陽師、で代わりはないし」

 なにか、腑に落ちない。結局、それって、陰陽師に抱きしめられているには変わりがないような……。

 が、とりあえず、みんな、それで納得してしまったのが怖い。

 淑景北舎に褥を誂えて、それから、関白殿下が提案した通り、私を、陰陽師が背中から抱き締める。

 左手を陽が取りながら、

「これなら、陰陽師が、なにかよからぬことをしても、すぐ、わかるから、良かったよ」

 などと言う。

「よからぬことなど、するものか。私は、割りと必死に身固めをしないと、死ぬかもしれないのだぞ?」

「強力な呪詛、と言っていたものねぇ……」

 呑気に、関白殿下は言いながら、私の右手を取った。

 なぜ、右手、なんだろうなあとは、ほんの少しだけ不安に、なったけど、余計なことは云わないでおいた。

 ともかく、男三人に囲まれて、私の夜はスタートしたのだ。



 ◇◇◇


 存外、陰陽師は強い力で、私を抱き締める。少し、苦しいくらいだ。

 首の真裏の辺りに、ぶつぶつと、なにかの呪文を、唱えているのも聞こえるけど一体、なんなのか、よくわからない。

 だけど、ちょっとくすぐったくて、身を捩りたくなる。

 陽も関白殿下も、一言もしゃべらないけど、まだ、起きてるみたいで、なんだか、気まずい。

 ふいに、陽が私の左手を握る手に力を込めた。

「鬼ちゃん、僕が付いてるから、安心してね」

「おや、頼もしい幼なじみだね、山吹」

 ふふ、と笑いながら関白殿下は、私の手の甲に口づけを落とす。

 ちょっとっ!

 声を上げようにも、後ろで集中している陰陽師に悪いし、割と命がけだし……。

「関白殿下も、割と、源大臣の事を悪く仰有ることが出来ないようですね」

 セクハラだ、セクハラ。

「おや、そうかなあ。左兵衛大尉はどうおもう? 私、セクハラジジイ?」

 そう言われて、『はいっ!』と言えるメンタル強い子じゃないのよ、陽は!

「えーと……そんなことは、ないと思います?」

「だってさ。君は、少し、過敏になりすぎているのかもね。色々あったし……」

 する、と関白殿下の手が、私の袴の横から、入ってきた。

「関白殿下っ!」

 睨み付けるけど、全く気にも留めてない。全く、この人はっ!

 仕方がないので、思い切り腕をふりほどくと、ゆうらりと、陰陽師殿が鬼の形相で立ち上がった。

「山吹を残して、あんたら二人は外に出て行ってくれ! 仕事の邪魔だっ!」


 結局陰陽師殿の手によって、陽と関白殿下は追い出され、私は、陰陽師殿にぎゅっと抱きしめられてしまった。

 えーと、やっぱり、セクハラを耐えるべきだったかしら?

 いや、セクハラは撲滅すべしっ!

 しかし、こんなに密着したまま、朝まで過ごすなんて、結構、無理……かも……。



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