100 / 186
第四章 後宮には危険が一杯!
37.セクハラは撲滅すべしっ!
しおりを挟む「どなたを、選ぶとか、そういう問題ではなくて、今は、私も命が掛かっているんですけど」
しかし、陰陽師に抱き締められるのも、どうなんだろう?
「じゃあ、鬼ちゃん、陰陽師と、一晩過ごすんだ」
ふうん? と、陽がジト目でみつめてくる。一晩過ごすとか、ヘンな意味に聞こえるから止めて欲しい。
「仕方がないじゃない。それに、陰陽師も、これは、お仕事だから、へんな、下心とかは、ないですよね?」
私は、必死に陰陽師にいうと、
「通常は、勿論」
と、微妙な、回答をした。
ああ! もうっ!
「じゃあ、こうなったら、みんなで居ようか。その方が、あなたも安心でしょう、山吹」
関白殿下は、唐突に思いついたように、仰有る。
「みんなで?」
「そうそう、みんなで。まさか、二人きりじゃないと、無理だとかは謂わないでしょうからね、ここは、みんなで休めば」
「では、私が山吹を抱き締めて、あなた方が、部屋の守護をすると?」
「いいや、そもそも、帝の場合、御衣でも身固めできるんだから、必ずしも、抱き締める必要は、ない。
君の大先輩には悪いが、その先輩は、きっと、ヨコシマな気持ちだったのだろうよ。
どうしても、体が触れていた方が良いなら、手を繋ぐとか、髪に触れるとか、色々あるよ。
山吹だって、まだ、通う男も居ないのだから、夜通し抱き締められるのは、辛いことだろう。
仮に山吹が、あなたを好いていたとしたら、呪法の為に抱き締められたのが一番最初……というのは、妙齢の乙女にとっては、耐え難いことなんじゃないかな。
私が、山吹の立場なら、その前にせめて一夜、二人きりで過ごしたかった……と思うだろうねぇ」
チラっと、関白殿下は、私に任せなさい目配せした。
ああ、本当に、この口先八丁、有り難いわ!
そりゃあ、三人とも立派な殿方だけど、やっぱり、こういう選び方って、嫌だもの。
ありがとう、関白殿下。芝居に乗らせてもらいます!
「本当に、関白殿下の仰せの通りです。私も、まだ、殿方を知らないので、こういうことは……」
「そうそう、口づけも、まだなのに、ねぇ」
ふふっと、関白殿下は笑う。
こいつめ! 勝手に口づけしたくせに。
「では、そうときまったら、私は、手を繋ごうか。陰陽師は、後ろから抱いてあげるといいよ。左兵衛大尉は手で。これなら、実質、山吹を抱き締めているのは、陰陽師、で代わりはないし」
なにか、腑に落ちない。結局、それって、陰陽師に抱きしめられているには変わりがないような……。
が、とりあえず、みんな、それで納得してしまったのが怖い。
淑景北舎に褥を誂えて、それから、関白殿下が提案した通り、私を、陰陽師が背中から抱き締める。
左手を陽が取りながら、
「これなら、陰陽師が、なにかよからぬことをしても、すぐ、わかるから、良かったよ」
などと言う。
「よからぬことなど、するものか。私は、割りと必死に身固めをしないと、死ぬかもしれないのだぞ?」
「強力な呪詛、と言っていたものねぇ……」
呑気に、関白殿下は言いながら、私の右手を取った。
なぜ、右手、なんだろうなあとは、ほんの少しだけ不安に、なったけど、余計なことは云わないでおいた。
ともかく、男三人に囲まれて、私の夜はスタートしたのだ。
◇◇◇
存外、陰陽師は強い力で、私を抱き締める。少し、苦しいくらいだ。
首の真裏の辺りに、ぶつぶつと、なにかの呪文を、唱えているのも聞こえるけど一体、なんなのか、よくわからない。
だけど、ちょっとくすぐったくて、身を捩りたくなる。
陽も関白殿下も、一言もしゃべらないけど、まだ、起きてるみたいで、なんだか、気まずい。
ふいに、陽が私の左手を握る手に力を込めた。
「鬼ちゃん、僕が付いてるから、安心してね」
「おや、頼もしい幼なじみだね、山吹」
ふふ、と笑いながら関白殿下は、私の手の甲に口づけを落とす。
ちょっとっ!
声を上げようにも、後ろで集中している陰陽師に悪いし、割と命がけだし……。
「関白殿下も、割と、源大臣の事を悪く仰有ることが出来ないようですね」
セクハラだ、セクハラ。
「おや、そうかなあ。左兵衛大尉はどうおもう? 私、セクハラジジイ?」
そう言われて、『はいっ!』と言えるメンタル強い子じゃないのよ、陽は!
「えーと……そんなことは、ないと思います?」
「だってさ。君は、少し、過敏になりすぎているのかもね。色々あったし……」
する、と関白殿下の手が、私の袴の横から、入ってきた。
「関白殿下っ!」
睨み付けるけど、全く気にも留めてない。全く、この人はっ!
仕方がないので、思い切り腕をふりほどくと、ゆうらりと、陰陽師殿が鬼の形相で立ち上がった。
「山吹を残して、あんたら二人は外に出て行ってくれ! 仕事の邪魔だっ!」
結局陰陽師殿の手によって、陽と関白殿下は追い出され、私は、陰陽師殿にぎゅっと抱きしめられてしまった。
えーと、やっぱり、セクハラを耐えるべきだったかしら?
いや、セクハラは撲滅すべしっ!
しかし、こんなに密着したまま、朝まで過ごすなんて、結構、無理……かも……。
10
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる