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第六章 大ピンチ! 呪いも運命も蹴散らして
22.秘密の約束
しおりを挟む私は、思わず鬼の君に抱きついた。
気分的には、抱きしめたかった……んだけど、どうにも上手くいかない。体勢的には、鬼の君を抱きしめ返したような………そんな感じだ。
「姫?」
「……主上って、大変なんですね」
「まあ、幸福な立場などではないかな」
鬼の君は苦笑する。
「世の中のすべてが、何でも思い通りに進むような方だと思っていたのに……そう。望めば、天上の陽も、月も、思い通りになさる方だと思っていたのに、存外、思い通りになることなど少ないのですね」
「そうだな」
「それでも、また、高御座へお戻りになるんですか?」
「それが、余の運命だからだ。……今も、私は、たいした後ろ盾もなく、身一つ。それでも、実敦親王に、高御座を渡すわけには行かぬ。
実敦親王は、罪を犯した。許されぬ罪だ。……このまま、実敦親王が高御座に折れば、この国には、災いが訪れるだろう。高御座に居ると言うことは―――天子はその徳をも天に問われる。
ゆえに、余は、母の仇である実敦親王を、高御座から引きずり下ろさねばならない」
鬼の君の口調は、静かだったけれど、強い意志を秘めていた。
こんな強い意志を持つ鬼の君ならば、やはり、妃となる方は、有力な貴族の娘であることが望ましいだろう。
「後ろ盾のない我が身は、頼りないだろうが―――それでも、私は、必ず、あなたを妃にする。そう、決めたのだ。それは、あなたにも約束する。この命を賭けてもかまわない」
鬼の君は、真剣に仰有る。
私は、胸が高鳴って、気が遠くなるのをなんとか堪えながら、鬼の君に申し上げた。
「身分の低いの娘が、立后した例はありません。それこそ、国が乱れます」
「……まあ、ここでは、詳しく言わないけれど。その辺のことは、以外に簡単に片付くと思うよ。……なにせ、今、宮中は、二条関白家が幅を利かせているからね。ここで、二条関白家から立后されれば、余計に、混乱するだろうし」
「朱鳥帝の中宮になった太皇太后様から、鷹峯院、鬼の君、今上までの三帝が二条関白家の血筋ですものね……」
「そう。だから、これ以上はマズイだろう。幸い、今の東宮は、源家だけどね」
はた、と気がついた。
源大臣としては、今の主上が帝位に居た方が、権力を得るはず。
こんなところで、私や鬼の君に荷担して、源家としては、損になるのではないかしら。
「源家は……」
「私の御代では、東宮の外祖父として、格別に引き立てる。それと、子息二人についても」
この確約があれば、今回、源大臣は、間違いなく味方になるはずだと、私はホッとする。
「そうだな。……一筆書いておくか」
鬼の君は、私を解放すると、外に居る小鬼に向かって、書き物の用意と、源大臣を呼ぶようにと命じた。
やっと解放してくれた、と思いつつ、私はなんとなく、鬼の君のぬくもりが消えていくのが淋しいような心地になって居た。
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