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第七章 鬼憑きの姫なのに、鬼退治なんてっ!
13.安心してください!
しおりを挟む私が居た方が呪いに対抗できる。
そう言った嵯峨野の太閤殿下の根拠は解らないけど、とにかく、院の御所の女房さんの手引きで、私は鷹峯院のところまで急いだ。
途中、何度か長袴のせいで、つんのめりそうになって、顔面から転びそうになったけど、流石に、ここで袴をたくし上げるわけにも行かないし、ねぇ。
はたして、鷹峯院の所へ行くと、源大臣と陽、そして鷹峯院が(おそらく)暇にあかして、双六なんかやっているところだった。
「えーと……わりと、暢気ですね?」
「うん。こっち、鉉珱来てないしね。鬼ちゃん、そっちはどういう状況?」
のんびりと、陽が私に問い掛ける。
「えーと、わりと、悲惨な状況? ……まず、呪いに掛かっているのが、『二条関白家』の血筋を引いている方というのが解ったので、現時点で、呪いで倒れているのは、鬼の君、実敦親王、関白殿下、二条の姫君、その他阿闍梨様だとかも居るみたいですけど……鷹峯院も、嵯峨野の太閤殿下もピンピンしておいでですね」
まあ、倒れているよりは良いけど。
「あのバカの名前を、アタシの前で出さないで頂戴、山吹。………そりゃあ、アタシたちはヒヨッコたちとは年期が違うわよ! 一体、なんで、アタシがこの格好をして居ると思ってるの?」
正直趣味かと。
「アンタ、今、趣味とか思ったでしょ? ……そりゃあ、趣味半分っていうところはあるけどね。殆どが呪い返しとか、暗殺防止とか、そういうことだからね? ……だから、アタシと全く同じ格好した女房ってのが、その辺に二三人居るのよ」
思わず周りを見回す。
たしかに、紫の表着に、朽葉色から白へとグラデーションする花橘の襲という装いの女房が、二人居る。
「女装のおかげで呪いは掛かりにくいし、いざ、暗殺者が居ても、アタシは紛れ込むことが出来る」
「随分な暗殺対策ですね……」
「仕方がないでしょ? こういう運命に生まれたんだから。……だから、せめて殺されないように、策を打っているだけよ。まあ、そのせいで、実敦親王の恨みを買っていたとは思わなかったけどね」
カラカラと鷹峯院は笑う。
「あ、良いんです。ここに鉉珱が来なければ。……あれだけ血を流していれば、もう、ここに来る途中で死んでいるのかも知れませんし……、それなら、その方が……」
「呪いが解ければ、僕は何でも良いけどさ。……じゃあ、うちのもので、門の警備とかさせた方が良いかな」
「いや、待ちなさい、陽。……我が家の侍で、院の御所を取り囲めば、源家が鷹峯院を幽閉して政変を起こそうとしているなどと取られかねない。関白殿下などは、今回の件に関してはお味方してくれるだろうが、こういうことが、他家の耳に入れば大事になる。だから、慎重にならねばならない」
ぞっとした。これで、源家まで巻き込まれてたら、本当に、目も当てられない自体になって居たわ。
二条関白家、源家が失脚したら、文字通り、朝廷は完璧なる転換を迎えることになる。
それこそ、鉉珱たちの宿願ではないか!
「門の所は、現在、嵯峨野の太閤殿下がお守りしていますから、きっと、ここまで鉉珱が来ることはありません!」
安心して下さい! と言い切ったら、すぅ、と鷹峯院の双眸が引き締まった。
「なんですって……? アタシは、あの男の出入りを許してないわよっ!」
やおら鷹峯院が立ち上がり、苛立たしげに檜扇を投げ捨て、双六を足蹴にした。
そのまま、鷹峯院は、ズカズカと歩き出す。
「お待ち下さい!」
呼びかけても、頭に血が上っていて、聞き入れてくれない!
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