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第5話 恐怖との戦い
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《ベロニカ視点》
氷の神殿の前に広がる雪原。
異様な気配を察知して私はゼランと2人、そこに立っていた。
私たちの前に現れたのはゲームで散々見てきた勇者アスレイその人に間違いない。
あ、あの人とこれから戦うの?
ヤバ。もうすでに私の心臓は張り裂けそうになっていた。
私なりに覚悟をしてきたつもりだったけど、いざ目の前にしてみるとその決心が脆くも霧散する。
さっきまで寒さで震えていた身体が、別の理由で小刻みに痙攣し出す。
だって、剣を構えたアスレイ。めっちゃ怖い顔してるんだもん!
だけど、本当はそれだけじゃない。赤竜になったことで私の中に息づく魔物としての本能が一斉に危険信号を発してる。
今の時点の勇者が相手なら、実力では赤竜である私の方が上のはず。なのに、単純な戦力差だけでは計り知れないなにかが私の恐怖心をひっきりなしに煽り立てる。
でも、ここまで来て引き下がるわけにはいかない!
私は意を決して足を踏み出した。
「ワタクシは魔王軍四天王の紅蓮姫ベロニカ。アナタが勇者ね?この先には進ませないわよ!」
自分の心を鼓舞するように、勇者に向かって居丈高に名乗りを上げる。
「……四天王。へえ、それは手強そうだね」
ひっ。
勇者の視線がこちらを捉えた途端、背筋が凍った。
底知れない殺意。容赦なんて一切感じない冷たい瞳が私を射抜く。
隣でゼランが勇者に向かってなにか叫んでるけど、まったく耳に入ってこない。
あの人から少しでも目を離したら、その瞬間に切り伏せられる。
そんな考えが頭の中でグルグルまわる。
「せっかくだから、自己紹介しておくよ?俺は勇者アスレイ。魔王を倒す男だ」
その声が聞こえた時、アスレイの視線がゼランの方にスライドする。
動いた!
アスレイは爆発的な加速で、隣にいるゼランに向かって一気に距離を詰めてくる。
危ない!そう思った瞬間、アスレイの眼が再びチラリとこちらを見た。
うぐ、やっぱ無理。動けない。身構えるだけで声も出せなかった。
アスレイは視線をゼランに戻してさらに加速。
ゼランは初撃を寸前で避けて、2人が交戦状態になる。
私はその様子を見ていることしかできない。
「くっそ!『烈氷壊撃』!!」
ゼランが得意技を繰り出して、辺りが雪の粉塵で覆われた。
アスレイが見えなくなって、焦る。
どこ!?見失ったらいつやられるか分からないのに!
必死で煙幕の中から脱出。
アスレイがどこにいるか急いで探す。
「ベロニカ!お前は僧侶の女をやれ!」
すると、ゼランの叫び声が聞こえた。
そ、そっか!相手はアスレイだけじゃないんだ。
ゼランが勇者を引きつけてる間に、私もできることをしないと……。
でも、さっき感じたアスレイの氷のような視線が頭から離れない。
絶対あの人に隙を見せちゃダメだ。
もし私が僧侶のメイジーを倒そうとしたらどうなるか。
あっという間に、嫌な想像が頭の中を埋め尽くす。
ムリムリ!怖すぎるよぉ。メイジーを倒すなんて私にはできっこない!
そんなことを考えてる間に、煙幕の隙間から光が差した。
メイジーがアスレイに補助魔法をかけてる。
それを見て、ハッとする。
私、さっきから怯えてばかりで本当になにもしてない。
ゼランは頑張って戦ってるのに。
これじゃあ、なんのために2人でここまで来たのか分からない。
でも、どうしても足が竦んで動けない。
そもそも命のやり取りなんてしたことないのに、いきなり戦えるわけなかったんだ。
そんな言い訳の言葉すら浮かんできて、自分が嫌になる。
「食らえ!『氷結剛拳撃』!!」
ゼランの雄たけびがこだまして、2人の体が交錯する。
あっ!
「な、に!?」
ゼランが斬られた。血しぶきが宙を舞って、彼は後ろに倒れ込んでしまう。
いけない。今動かないと。助けないと。ゼランが。
アスレイがゼランの目の前で長剣を構えた。
「ここまでだ」
「待ちなさい!!」
やっと、声が出た。
アスレイと視線がぶつかる。
負けるもんか。ベロニカは、私は、強い。あんな勇者なんかより強いの!
右手を前に突き出して、魔力を集中させる。
ベロニカの身体とゲームでの知識が、どうすればいいかを私に教えてくれた。
そう。ベロニカには多彩な遠距離攻撃があるんだ。
「『灼熱弾』!」
真っ赤な火の玉が掌から打ち出され、高速でアスレイめがけて飛翔する。
アスレイはヒラリと身を翻して迫る炎を避けた。
今は当たらなくてもいい!
とにかく、弾幕を張ってゼランに近づけないようにしないと。
「はああぁぁあああ!」
両手を掲げ、狙いすまして灼熱弾を連射する。いくつもの火炎の塊がアスレイに向かって降り注ぐ。すると、アスレイは力強く地を蹴りこちらに向かって駆け出した。
え。ちょっと待って!やだやだ!なんでこっちくるの!?
「近寄らないでっ!!」
夢中で放った火の雨がアスレイの頭上を埋め尽くす。
なのに、アスレイは火球の隙間を縫うようにしてどんどん迫ってくる。
どうして!?ちゃんと彼の動きを目で追って狙ってるのに、ぜんぜん当たらない!
アスレイは不規則に進行方向を切り替えて、時には減速し、時には加速し、確実に間合いを詰めてきてる。こうなったらもう、いちいち狙ってなんかいられない!
両手を重ねて構えを取る。
「これならどう!?『灼熱弾・拡散射撃』!」
一段と大きな熱の球体を作り出して射出。放たれた業火は空中で弾け、無数の散弾となって突き進む。この範囲攻撃なら避けられないはず!
爆音が轟き、辺り一面が火の海と化す。なのに、次の瞬間アスレイは爆炎の中を突っ切ってついに私の目の前に現れた。
ひぃっ!この人ホントに人間なの!?
大きく身をよじったアスレイが、すうっと深く息を吸い込む。
「『紫電光断』」
構えたアスレイの剣が稲光を纏って凛然と輝く。
見覚えのある動き。たしか勇者の必殺剣の1つだ。
背筋に冷たいものが走った。これは、絶対に当たっちゃいけない。
私は思い切り地面を蹴って飛び上がる。
音もなく振り抜かれた剣閃から迸る雷撃が脚先を掠めた。
あ、あぶないっ。
身体をひねって上空から地上を見下ろすと、アスレイはすでに私の飛んだ方向に走り出していた。
げげっ、このままじゃ着地の隙を狙われちゃう。
ど、どうしよう!?こんな姿勢じゃ遠距離攻撃できないじゃん。
えっと、ベロニカって他にどんな技使えたっけ!?
パニックで頭が全然回らない。滞空時間もあっという間に過ぎ去って、地面とアスレイの姿が近づいてくる。
「そうだっ!『竜鱗盾』!」
変身能力の応用だ。両腕の鱗が瞬時に硬質化した。
着地を狙ったアスレイの剣をなんとか腕を盾にして受け止める。
うっ!イッ、イタいイタいッ!
凄まじい気迫で振り下ろされた刃が鱗の抵抗をものともせず私の腕にめり込む。
急いで刃先を逸らすけど、その度にアスレイは畳みかけるように連撃を放ってくる。
こっちからも攻撃……、で、できるわけないっ!
ちょっとでもアスレイの動きを見誤ったら斬られておしまいだ。
剣と鱗がぶつかり合う音がひっきりなしに響く。腕がみるみる傷だらけになっていく。体に当たらないよう凌ぐのが精一杯。このままじゃいつかはやられちゃう。
無言でひたすら攻撃を続けるアスレイの鋭い視線が痛い。怖い。
やっぱり私、ここで死……。
い、いやだ。誰か助け……。
「こっちだ!アスレイっ!」
この声っ!?
アスレイの後ろから不意に飛び込んで来たのは、ゼランだった。
氷の神殿の前に広がる雪原。
異様な気配を察知して私はゼランと2人、そこに立っていた。
私たちの前に現れたのはゲームで散々見てきた勇者アスレイその人に間違いない。
あ、あの人とこれから戦うの?
ヤバ。もうすでに私の心臓は張り裂けそうになっていた。
私なりに覚悟をしてきたつもりだったけど、いざ目の前にしてみるとその決心が脆くも霧散する。
さっきまで寒さで震えていた身体が、別の理由で小刻みに痙攣し出す。
だって、剣を構えたアスレイ。めっちゃ怖い顔してるんだもん!
だけど、本当はそれだけじゃない。赤竜になったことで私の中に息づく魔物としての本能が一斉に危険信号を発してる。
今の時点の勇者が相手なら、実力では赤竜である私の方が上のはず。なのに、単純な戦力差だけでは計り知れないなにかが私の恐怖心をひっきりなしに煽り立てる。
でも、ここまで来て引き下がるわけにはいかない!
私は意を決して足を踏み出した。
「ワタクシは魔王軍四天王の紅蓮姫ベロニカ。アナタが勇者ね?この先には進ませないわよ!」
自分の心を鼓舞するように、勇者に向かって居丈高に名乗りを上げる。
「……四天王。へえ、それは手強そうだね」
ひっ。
勇者の視線がこちらを捉えた途端、背筋が凍った。
底知れない殺意。容赦なんて一切感じない冷たい瞳が私を射抜く。
隣でゼランが勇者に向かってなにか叫んでるけど、まったく耳に入ってこない。
あの人から少しでも目を離したら、その瞬間に切り伏せられる。
そんな考えが頭の中でグルグルまわる。
「せっかくだから、自己紹介しておくよ?俺は勇者アスレイ。魔王を倒す男だ」
その声が聞こえた時、アスレイの視線がゼランの方にスライドする。
動いた!
アスレイは爆発的な加速で、隣にいるゼランに向かって一気に距離を詰めてくる。
危ない!そう思った瞬間、アスレイの眼が再びチラリとこちらを見た。
うぐ、やっぱ無理。動けない。身構えるだけで声も出せなかった。
アスレイは視線をゼランに戻してさらに加速。
ゼランは初撃を寸前で避けて、2人が交戦状態になる。
私はその様子を見ていることしかできない。
「くっそ!『烈氷壊撃』!!」
ゼランが得意技を繰り出して、辺りが雪の粉塵で覆われた。
アスレイが見えなくなって、焦る。
どこ!?見失ったらいつやられるか分からないのに!
必死で煙幕の中から脱出。
アスレイがどこにいるか急いで探す。
「ベロニカ!お前は僧侶の女をやれ!」
すると、ゼランの叫び声が聞こえた。
そ、そっか!相手はアスレイだけじゃないんだ。
ゼランが勇者を引きつけてる間に、私もできることをしないと……。
でも、さっき感じたアスレイの氷のような視線が頭から離れない。
絶対あの人に隙を見せちゃダメだ。
もし私が僧侶のメイジーを倒そうとしたらどうなるか。
あっという間に、嫌な想像が頭の中を埋め尽くす。
ムリムリ!怖すぎるよぉ。メイジーを倒すなんて私にはできっこない!
そんなことを考えてる間に、煙幕の隙間から光が差した。
メイジーがアスレイに補助魔法をかけてる。
それを見て、ハッとする。
私、さっきから怯えてばかりで本当になにもしてない。
ゼランは頑張って戦ってるのに。
これじゃあ、なんのために2人でここまで来たのか分からない。
でも、どうしても足が竦んで動けない。
そもそも命のやり取りなんてしたことないのに、いきなり戦えるわけなかったんだ。
そんな言い訳の言葉すら浮かんできて、自分が嫌になる。
「食らえ!『氷結剛拳撃』!!」
ゼランの雄たけびがこだまして、2人の体が交錯する。
あっ!
「な、に!?」
ゼランが斬られた。血しぶきが宙を舞って、彼は後ろに倒れ込んでしまう。
いけない。今動かないと。助けないと。ゼランが。
アスレイがゼランの目の前で長剣を構えた。
「ここまでだ」
「待ちなさい!!」
やっと、声が出た。
アスレイと視線がぶつかる。
負けるもんか。ベロニカは、私は、強い。あんな勇者なんかより強いの!
右手を前に突き出して、魔力を集中させる。
ベロニカの身体とゲームでの知識が、どうすればいいかを私に教えてくれた。
そう。ベロニカには多彩な遠距離攻撃があるんだ。
「『灼熱弾』!」
真っ赤な火の玉が掌から打ち出され、高速でアスレイめがけて飛翔する。
アスレイはヒラリと身を翻して迫る炎を避けた。
今は当たらなくてもいい!
とにかく、弾幕を張ってゼランに近づけないようにしないと。
「はああぁぁあああ!」
両手を掲げ、狙いすまして灼熱弾を連射する。いくつもの火炎の塊がアスレイに向かって降り注ぐ。すると、アスレイは力強く地を蹴りこちらに向かって駆け出した。
え。ちょっと待って!やだやだ!なんでこっちくるの!?
「近寄らないでっ!!」
夢中で放った火の雨がアスレイの頭上を埋め尽くす。
なのに、アスレイは火球の隙間を縫うようにしてどんどん迫ってくる。
どうして!?ちゃんと彼の動きを目で追って狙ってるのに、ぜんぜん当たらない!
アスレイは不規則に進行方向を切り替えて、時には減速し、時には加速し、確実に間合いを詰めてきてる。こうなったらもう、いちいち狙ってなんかいられない!
両手を重ねて構えを取る。
「これならどう!?『灼熱弾・拡散射撃』!」
一段と大きな熱の球体を作り出して射出。放たれた業火は空中で弾け、無数の散弾となって突き進む。この範囲攻撃なら避けられないはず!
爆音が轟き、辺り一面が火の海と化す。なのに、次の瞬間アスレイは爆炎の中を突っ切ってついに私の目の前に現れた。
ひぃっ!この人ホントに人間なの!?
大きく身をよじったアスレイが、すうっと深く息を吸い込む。
「『紫電光断』」
構えたアスレイの剣が稲光を纏って凛然と輝く。
見覚えのある動き。たしか勇者の必殺剣の1つだ。
背筋に冷たいものが走った。これは、絶対に当たっちゃいけない。
私は思い切り地面を蹴って飛び上がる。
音もなく振り抜かれた剣閃から迸る雷撃が脚先を掠めた。
あ、あぶないっ。
身体をひねって上空から地上を見下ろすと、アスレイはすでに私の飛んだ方向に走り出していた。
げげっ、このままじゃ着地の隙を狙われちゃう。
ど、どうしよう!?こんな姿勢じゃ遠距離攻撃できないじゃん。
えっと、ベロニカって他にどんな技使えたっけ!?
パニックで頭が全然回らない。滞空時間もあっという間に過ぎ去って、地面とアスレイの姿が近づいてくる。
「そうだっ!『竜鱗盾』!」
変身能力の応用だ。両腕の鱗が瞬時に硬質化した。
着地を狙ったアスレイの剣をなんとか腕を盾にして受け止める。
うっ!イッ、イタいイタいッ!
凄まじい気迫で振り下ろされた刃が鱗の抵抗をものともせず私の腕にめり込む。
急いで刃先を逸らすけど、その度にアスレイは畳みかけるように連撃を放ってくる。
こっちからも攻撃……、で、できるわけないっ!
ちょっとでもアスレイの動きを見誤ったら斬られておしまいだ。
剣と鱗がぶつかり合う音がひっきりなしに響く。腕がみるみる傷だらけになっていく。体に当たらないよう凌ぐのが精一杯。このままじゃいつかはやられちゃう。
無言でひたすら攻撃を続けるアスレイの鋭い視線が痛い。怖い。
やっぱり私、ここで死……。
い、いやだ。誰か助け……。
「こっちだ!アスレイっ!」
この声っ!?
アスレイの後ろから不意に飛び込んで来たのは、ゼランだった。
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希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
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