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第13話 ベロニカの告白
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《ベロニカ視点》
今、私は人生で初めての経験をしている。
自分の部屋に、男の人を招き入れてしまったのだ。
「入って」
「お、おう。失礼するぞ」
ゼランはそう言って私の部屋に足を踏み入れた。
きっかけはゼランからの誘いだった。
強くなるための訓練に付き合って欲しいっていう依頼。
話を聞いて、勇者との再戦のために私も鍛えた方がいいと思った。
それが、間違いだったんだ。
訓練場でいざ模擬戦が始まったら、頭が真っ白になった。
あの勇者との戦いで感じた恐怖も蘇って来た。
結局、私ができたのは逃げ回ることだけ。
ゼランの必殺技を前にした時は、足が竦んで動くことすらできなかった。
私は思った。
やっぱり勇者と戦うなんて無理だって。
だから、ゼランに正体を明かすことにした。
私が異世界の人間だと分かったら、どうなるだろうか。
魔王たちから酷い扱いを受けるかもしれない。
だとしても、勇者と戦って死ぬよりはマシ。
もう絶対に戦場には出たくない。
正体をバラして楽になりたい。
他の選択肢なんて、考えられなくなっていた。
それで、すぐゼランと2人で話そうとしたのはいいんだけど。
誰もいない場所がパッと思いつかなくって。
つい、自分の部屋に来て欲しいって言ってしまった。
もぉ!なんでこんな時までおっちょこちょいなのよ!私ぃ!
部屋の奥には私がいつも使ってる天蓋付きのベッドが鎮座している。
こんなところで、男の人と2人きりなんて無理すぎる!
誘った時の自分自身をひっぱたきたい。
これじゃあ、緊張してうまく話せないよぉ。
「それで、話ってなんだ?」
「えぁ、その。と、とりあえず、座って」
1人用の部屋とは思えない広い室内に置かれたテーブルと椅子。
私はそこを指さした。
ゼランは真っすぐ椅子の方へと歩を進める。
その間に、私はゆっくり深呼吸した。
ゼランが座るのを見届けてから、私も向かいの椅子に腰かける。
「話って言うのは、そう。あなたに伝えたいことがあるの」
簡単なことだ。言いたいことを言えばいい。
「さっきの訓練で思い知ったの。私、戦うのが怖い。もう勇者とは戦えない」
あとは、異世界から転生して来たって言えばそれですべて終わる。
終わる、よね?
いや、ちょっと待って?
この世界で転生なんて言って、ゼランに意味が伝わるのかな。
もし信じてもらえなかったら、変なヤツだと思われるだけだ。
それは最悪すぎる。
説明はキチンとしないと。
だけど、他にどんな言い方があるだろう。
生まれ変わり?憑依?魂の転移とか?
ダメだ。なんだかどれもしっくりこない。
とにかく言えることから話しながら、頭をフル回転させる。
「……だから、私の正体をあなたに教えるわ」
ゼランは私の顔を真剣に見てる。
なにも言わず、私の言葉を待っている。
どうしよう。
まだなんて言うか決まってないのに。
「私、実は……」
は、早く言わないと。ええと、ええと。
「本物のベロニカじゃないの!」
「本物のベロニカじゃ、ない?」
ゼランは困惑気味にそう言うと、眉間に皺を寄せた。
考え込むように腕を組んでいる。
な、なに言ってるのよ、私!
考えが迷走しすぎて、直球で事実を述べただけになっちゃった。
どう考えてもうまく説明できてないよね。
慌てて、もう一度口を開く。
「えっと。わ、私は赤竜なんかじゃなくて、本当はただの……」
その時、ゼランが不意に掌をこちらに向けた。
「いや、もう言わなくてもいい。分かったよ。お前が思ってること」
あれっ、伝わったの?ホ、ホントに?
「本物の自分じゃないなんて。まさか、お前がそこまで思いつめていたとはな」
ゼランは額に右手を当てて深刻そうに呟く。
そして、真っすぐにこちらを見据えて言葉を紡いだ。
「ここからは俺も正直に話す。お前が隠しごとをしているのには、気づいていた」
へっ?
「気弱な自分を偽って、赤竜の名に恥じない強者を演じていたんだろ?」
ちょっ、ちょっと待って?
それって今までの私の演技、全部バレてたってこと?
はっ、恥ずいっ!!
一気に顔が熱くなる。頭がクラクラする。
「理想の自分であろうとする気持ちは大事だ。とはいえ、心の弱さを恥じて自分が本物じゃないだなんて卑下しなくていい」
恥ずかしさで一瞬、思考回路が爆発しかけた。
両手を胸に当てて息を吐きだし、なんとか気を取り直す。
ゼランの言葉を落ち着いて反芻。そして気づく。
なんか勘違いされてない?
もしかしなくても、私が転生者だって伝わってないよね。
あ。ひょっとして、比喩表現かなにかだと思われてる?
待って待って!
そうじゃなくて、文字通りの意味なんだってば!
でも、どうやって誤解を解けばいいんだろう。
頭がこんがらがる。
「ち、違うの!私は弱虫だし、怖がりだけど……。本物じゃないっていうのはそういう意味じゃなくて……」
伝えたいことが纏まらない。
しどろもどろ喋っていると、ゼランが立ち上がった。
「怖がりなんて普通だ。俺だって戦うのは怖い」
その言葉を聞いて、私は驚いた。
「えっ。でも、ゼランは戦いには慣れてるし。勇者と戦った時だって勇敢だった。私なんかとは全然違うよ」
「そんなことはない。戦いに負ければ死ぬ。怖いのは当たり前だ。俺だって、戦う前はいつも震えを抑えるのに必死になってる」
意外だった。ゼランは恐怖なんて感情とは無縁なんだと勝手に思ってた。
ゼランはこちらに近寄って、屈んで目線を合わせてきた。
彼の顔が近づく。
「それでも、生き残るために勇気を出してなんとかしてきた。お前が自分の立場を背負って、怖くても踏ん張ってたのと同じだ」
なんか、胸がポカポカする。
ゼランも私と同じ気持ちだったんだ。
この世界に来てから、ずっと孤独だった。
でも、今この瞬間。
私はひとりじゃないんだと思えた。
「お前はちゃんと本物だよ。お前の頑張りをそばで見ていた俺が保証してやる」
その言葉を聞いて、ハッとする。
そうだ。まだ勘違いは解けてないんだった。
なのに、不思議。
気がつくと、気持ちがとても軽くなっていた。
話はすれ違っていたけど、ゼランが励ましてくれたおかげだ。
私の中のなにかが、音を立てて動いた気がした。
「だが、戦えないというなら無理強いはできないな。俺からエルガノフに伝えておこうか?」
「ううん、大丈夫。私、やっぱり戦う。もう少し、頑張ってみることにする」
自然と、言葉が口から出ていた。
「いいのか?」
私は咳払いを1つして、ベロニカの演技を始める。
「ええ。ワタクシが抜けたら戦力が下がるでしょう?それでアナタがやられてしまったら張り合いがなくなるもの」
すると、ゼランは柔らかく微笑んだ。
「調子、戻って来たみたいだな。そういうことなら、心配いらないか?」
「アナタは自分が強くなることだけ考えていた方がいいんじゃないかしら」
「それはその通りだな」と、ゼランは笑った。
自分の弱さを自覚して、それでも前に進もうとする彼。
ゲームの時の印象よりも、何倍も強く頼もしく感じた。
立ち上がったゼランは、右手の人差し指を立てて付け加えるように呟く。
「そうだ。この部屋でお前が伝えようとしてた話。あれは全部聞かなかったことにしておいてやるよ」
ゼランのわざとらしいセリフに、私も言葉を返す。
「アナタの本音も、ワタクシの胸の内にしまっておくわ。野心家のアナタのことだから、他の四天王に知られたくはないんでしょ?」
ゼランは口の端に微笑を浮かべた。
「ああ」
これで、私たちはお互いの秘密を共有することになった。
なんだか、とても心強い。
私はさっきまで逃げ腰だったのが嘘みたいに、前向きな心持ちになっていた。
「そういえば、訓練が途中だったわね。勇者が神殿に着くまではまだ日があるはずだし。またやるなら、付き合ってあげてもいいわよ」
「そいつは助かる。強くなろうぜ。お互いにな」
ゼランの言う通りだ。
強くならないと。
まだ時間はある。
恐怖を克服しなきゃ。
自分が生き延びるためだけじゃない。
私を勇気づけてくれた彼の命を守るためにも、戦えるようになるんだ。
私は心の中で、そう強く決意した。
今、私は人生で初めての経験をしている。
自分の部屋に、男の人を招き入れてしまったのだ。
「入って」
「お、おう。失礼するぞ」
ゼランはそう言って私の部屋に足を踏み入れた。
きっかけはゼランからの誘いだった。
強くなるための訓練に付き合って欲しいっていう依頼。
話を聞いて、勇者との再戦のために私も鍛えた方がいいと思った。
それが、間違いだったんだ。
訓練場でいざ模擬戦が始まったら、頭が真っ白になった。
あの勇者との戦いで感じた恐怖も蘇って来た。
結局、私ができたのは逃げ回ることだけ。
ゼランの必殺技を前にした時は、足が竦んで動くことすらできなかった。
私は思った。
やっぱり勇者と戦うなんて無理だって。
だから、ゼランに正体を明かすことにした。
私が異世界の人間だと分かったら、どうなるだろうか。
魔王たちから酷い扱いを受けるかもしれない。
だとしても、勇者と戦って死ぬよりはマシ。
もう絶対に戦場には出たくない。
正体をバラして楽になりたい。
他の選択肢なんて、考えられなくなっていた。
それで、すぐゼランと2人で話そうとしたのはいいんだけど。
誰もいない場所がパッと思いつかなくって。
つい、自分の部屋に来て欲しいって言ってしまった。
もぉ!なんでこんな時までおっちょこちょいなのよ!私ぃ!
部屋の奥には私がいつも使ってる天蓋付きのベッドが鎮座している。
こんなところで、男の人と2人きりなんて無理すぎる!
誘った時の自分自身をひっぱたきたい。
これじゃあ、緊張してうまく話せないよぉ。
「それで、話ってなんだ?」
「えぁ、その。と、とりあえず、座って」
1人用の部屋とは思えない広い室内に置かれたテーブルと椅子。
私はそこを指さした。
ゼランは真っすぐ椅子の方へと歩を進める。
その間に、私はゆっくり深呼吸した。
ゼランが座るのを見届けてから、私も向かいの椅子に腰かける。
「話って言うのは、そう。あなたに伝えたいことがあるの」
簡単なことだ。言いたいことを言えばいい。
「さっきの訓練で思い知ったの。私、戦うのが怖い。もう勇者とは戦えない」
あとは、異世界から転生して来たって言えばそれですべて終わる。
終わる、よね?
いや、ちょっと待って?
この世界で転生なんて言って、ゼランに意味が伝わるのかな。
もし信じてもらえなかったら、変なヤツだと思われるだけだ。
それは最悪すぎる。
説明はキチンとしないと。
だけど、他にどんな言い方があるだろう。
生まれ変わり?憑依?魂の転移とか?
ダメだ。なんだかどれもしっくりこない。
とにかく言えることから話しながら、頭をフル回転させる。
「……だから、私の正体をあなたに教えるわ」
ゼランは私の顔を真剣に見てる。
なにも言わず、私の言葉を待っている。
どうしよう。
まだなんて言うか決まってないのに。
「私、実は……」
は、早く言わないと。ええと、ええと。
「本物のベロニカじゃないの!」
「本物のベロニカじゃ、ない?」
ゼランは困惑気味にそう言うと、眉間に皺を寄せた。
考え込むように腕を組んでいる。
な、なに言ってるのよ、私!
考えが迷走しすぎて、直球で事実を述べただけになっちゃった。
どう考えてもうまく説明できてないよね。
慌てて、もう一度口を開く。
「えっと。わ、私は赤竜なんかじゃなくて、本当はただの……」
その時、ゼランが不意に掌をこちらに向けた。
「いや、もう言わなくてもいい。分かったよ。お前が思ってること」
あれっ、伝わったの?ホ、ホントに?
「本物の自分じゃないなんて。まさか、お前がそこまで思いつめていたとはな」
ゼランは額に右手を当てて深刻そうに呟く。
そして、真っすぐにこちらを見据えて言葉を紡いだ。
「ここからは俺も正直に話す。お前が隠しごとをしているのには、気づいていた」
へっ?
「気弱な自分を偽って、赤竜の名に恥じない強者を演じていたんだろ?」
ちょっ、ちょっと待って?
それって今までの私の演技、全部バレてたってこと?
はっ、恥ずいっ!!
一気に顔が熱くなる。頭がクラクラする。
「理想の自分であろうとする気持ちは大事だ。とはいえ、心の弱さを恥じて自分が本物じゃないだなんて卑下しなくていい」
恥ずかしさで一瞬、思考回路が爆発しかけた。
両手を胸に当てて息を吐きだし、なんとか気を取り直す。
ゼランの言葉を落ち着いて反芻。そして気づく。
なんか勘違いされてない?
もしかしなくても、私が転生者だって伝わってないよね。
あ。ひょっとして、比喩表現かなにかだと思われてる?
待って待って!
そうじゃなくて、文字通りの意味なんだってば!
でも、どうやって誤解を解けばいいんだろう。
頭がこんがらがる。
「ち、違うの!私は弱虫だし、怖がりだけど……。本物じゃないっていうのはそういう意味じゃなくて……」
伝えたいことが纏まらない。
しどろもどろ喋っていると、ゼランが立ち上がった。
「怖がりなんて普通だ。俺だって戦うのは怖い」
その言葉を聞いて、私は驚いた。
「えっ。でも、ゼランは戦いには慣れてるし。勇者と戦った時だって勇敢だった。私なんかとは全然違うよ」
「そんなことはない。戦いに負ければ死ぬ。怖いのは当たり前だ。俺だって、戦う前はいつも震えを抑えるのに必死になってる」
意外だった。ゼランは恐怖なんて感情とは無縁なんだと勝手に思ってた。
ゼランはこちらに近寄って、屈んで目線を合わせてきた。
彼の顔が近づく。
「それでも、生き残るために勇気を出してなんとかしてきた。お前が自分の立場を背負って、怖くても踏ん張ってたのと同じだ」
なんか、胸がポカポカする。
ゼランも私と同じ気持ちだったんだ。
この世界に来てから、ずっと孤独だった。
でも、今この瞬間。
私はひとりじゃないんだと思えた。
「お前はちゃんと本物だよ。お前の頑張りをそばで見ていた俺が保証してやる」
その言葉を聞いて、ハッとする。
そうだ。まだ勘違いは解けてないんだった。
なのに、不思議。
気がつくと、気持ちがとても軽くなっていた。
話はすれ違っていたけど、ゼランが励ましてくれたおかげだ。
私の中のなにかが、音を立てて動いた気がした。
「だが、戦えないというなら無理強いはできないな。俺からエルガノフに伝えておこうか?」
「ううん、大丈夫。私、やっぱり戦う。もう少し、頑張ってみることにする」
自然と、言葉が口から出ていた。
「いいのか?」
私は咳払いを1つして、ベロニカの演技を始める。
「ええ。ワタクシが抜けたら戦力が下がるでしょう?それでアナタがやられてしまったら張り合いがなくなるもの」
すると、ゼランは柔らかく微笑んだ。
「調子、戻って来たみたいだな。そういうことなら、心配いらないか?」
「アナタは自分が強くなることだけ考えていた方がいいんじゃないかしら」
「それはその通りだな」と、ゼランは笑った。
自分の弱さを自覚して、それでも前に進もうとする彼。
ゲームの時の印象よりも、何倍も強く頼もしく感じた。
立ち上がったゼランは、右手の人差し指を立てて付け加えるように呟く。
「そうだ。この部屋でお前が伝えようとしてた話。あれは全部聞かなかったことにしておいてやるよ」
ゼランのわざとらしいセリフに、私も言葉を返す。
「アナタの本音も、ワタクシの胸の内にしまっておくわ。野心家のアナタのことだから、他の四天王に知られたくはないんでしょ?」
ゼランは口の端に微笑を浮かべた。
「ああ」
これで、私たちはお互いの秘密を共有することになった。
なんだか、とても心強い。
私はさっきまで逃げ腰だったのが嘘みたいに、前向きな心持ちになっていた。
「そういえば、訓練が途中だったわね。勇者が神殿に着くまではまだ日があるはずだし。またやるなら、付き合ってあげてもいいわよ」
「そいつは助かる。強くなろうぜ。お互いにな」
ゼランの言う通りだ。
強くならないと。
まだ時間はある。
恐怖を克服しなきゃ。
自分が生き延びるためだけじゃない。
私を勇気づけてくれた彼の命を守るためにも、戦えるようになるんだ。
私は心の中で、そう強く決意した。
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彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
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