立日の異世界冒険記

ナイトタイガー

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0045.残された者達

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 陽炎のリーダーが手にした虹色のクリスタルを覗きこむと、クリスタルは呼応するようにゆっくりと光り出す。そして陽炎のリーダーはクリスタルを見つめたまま動かなくなった。健には何が起こったかよく分からなかったが、どうやらクリスタルから陽炎のリーダーに情報が流れ込んでいるようだ。しばらくしてから陽炎のリーダーが静かに口を開いた。
「長老が代々引き継いで隠してきた秘密を知って、すべてが分かった。我々の一族は報いを受けたようだ。」
「どういうことだ。」
 長老が乗り移ったかのように陽炎のリーダーは、話し始めた。
「その昔、我々とベイル達は同じ仲間だった。ところが、ある年を境に事件が起きる。その年は世界が終わるかと思われるほどの過酷な天候が一年中続いた。激しい雷と雨と強風がやまず、食料もどんどんなくなっていく。そんな中、ベイル達が我々一族の隙を見て、そのわずかな食料を全部食べるという愚行をしでかすのだ。我々の一族は、その行為に烈火のごとく怒り狂い、ベイル達に襲いかかると、その一部を殺して食べてしまったのだ。我々がベイル達を食料にするという歴史がそこから始まっている。そして、ベイル達はその時から言葉を失い、我々は姿を失った。愚かな行動をとった為に、お互いに呪われてしまったのだ。」
「マジかよ。お前らは、ベイル達を食ってたのか。え、ちょっと待て。ひょっとして俺が食べた肉もそうなのか。」
「ああ。肉料理に入ってるのはベイルの肉だ。」
「うげえええええ。」
 健は、話を聞いて気持ちが悪くなり、吐きそうになった。そして、自分に襲いかかってきた真紅の陽炎の謎の言葉を思い出した。だから、アイツは俺に共食いと言ってきたのか。
「だが、それも今日で終わりのはずだ。どうやら言い伝えだと、導く者が現れる時に呪いが解けるらしい。」
 そう言っている陽炎のリーダーの姿が、いつの間にか普通の人間の姿に近付いていく。思ったよりイケメンのナイスガイだ。このヤロウと健は内心思った。
「確かにお前の姿が変わってきているぞ。よし、外にも行ってみよう。」
 健達が外に出ると、陽炎達も怪物の姿をしていたベイル達も人間に戻っている。さらに、ベイル達は言葉を話せるようになっていた。そして、ベイル達は言葉を話せなかった時の記憶が一切ないようだ。
「ここはどこだ。俺達は何をしているんだ。」
 それだけではない。人間の姿に戻った陽炎達も今までの記憶をなくしている。記憶が残っているのは陽炎のリーダーだけのようだ。すべてを理解した陽炎のリーダーが皆に呼びかける。
「みんな。聞いてくれ。我々は今まで長い悪夢を見ていたのだ。今日になって皆は一斉に目覚めたのだ。記憶がなくしていても大丈夫だ。一緒にやっていこう。」
 残された者達は皆、記憶をなくして不安になっていたが、陽炎のリーダーの力強い言葉で明るい表情を取り戻した。
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