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0049.火の精
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健は拾ってきた枯れ枝を使って焚き火を起こし始めた。見えない橙色の音を使った火起こしも手慣れたものである。銀髪の女は、物珍しそうに健の手つきを見ていたが、焚き火に火がついた後は後ずさりして焚き火から離れてしまった。
「やっと体を温められる。」
健は赤く燃える火を見ながら喜んでいたが、銀髪の女は火を怖がって焚き火に近寄らなかった。
「こっちにおいでよ。すげえ暖かいよ。」
「無理よ。怖いわ。その色の光はとても怖いわ。」
「え、まさか火を見たことがないってことはないよな。」
「火は知ってるわ。怖いけど、大事な思い出があるのよ。」
「怖いけど、大事な思い出って何だか難しいな。」
健がうなりながら焚き火に枯れ枝を追加していると、焚き火の真ん中辺りの炎が噴き上がって小さな人型になった。
「やっと出てこれたぜ。長くて長くて長かった。」
その人型の炎は意外とイケボで喋った。驚いた健が警戒体制をとっているのを見て、慌てて言葉を続ける。
「落ち着け、俺は敵じゃないぞ。というか、よく火を起こしてくれた。もう一生出てこれないかと思ってたぜ。」
「お前は何だ。」
健が魔法の短剣を構えながら聞くと、人型の炎は簡単に答えてきた。
「オイラは火の精さ。火のあるところならどこでも行けるんだが、この世界は火がまったくないんだよ。本当にゼロ。20年ほど前にどこからか来たユウって奴が火を起こしてくれて以来だ。」
「ユウ。今、ユウって言ったか。」
「ああ、確かユウって名前だったはずだ。」
チビ助の言ってた人だ。こんなところにも来てたんだな。
「俺が名前を知ってる人かも知れないな。ユウのことをもっと教えてくれ。ユウのことなら何でもいい。」
「そうだな。ユウは、何でもできたし、とても強かったな。この世界は毎日ものすごい量の雪が降るんだ。だが、ユウは天気まで変えてしまった。強力な力を持つユウが現れたことにこの世界の主が恐れをなして隠れてしまったんだ。」
「ユウは、かつて私の恋人だったのよ。」
後ろから銀髪の女の声がした。
「おう、あんたか。20年ぶりだな。」
「久しぶりね。私は火が苦手だから感動の再会とはいかないけど。」
焚き火をきっかけにして色々と話が進んでいくので、健は不思議な感じがした。猛吹雪に自分の無力さを思い知り、閉じ込められた気持ちも味わって絶望しそうになったが、今は焚き火のおかげで体も温まっている。
「恋人だったなら、君はユウのことをよく知ってるのかい。」
「残念ながらよくは知らないわ。ユウは、この世界の主から私を救い出してくれたの。」
「やっと体を温められる。」
健は赤く燃える火を見ながら喜んでいたが、銀髪の女は火を怖がって焚き火に近寄らなかった。
「こっちにおいでよ。すげえ暖かいよ。」
「無理よ。怖いわ。その色の光はとても怖いわ。」
「え、まさか火を見たことがないってことはないよな。」
「火は知ってるわ。怖いけど、大事な思い出があるのよ。」
「怖いけど、大事な思い出って何だか難しいな。」
健がうなりながら焚き火に枯れ枝を追加していると、焚き火の真ん中辺りの炎が噴き上がって小さな人型になった。
「やっと出てこれたぜ。長くて長くて長かった。」
その人型の炎は意外とイケボで喋った。驚いた健が警戒体制をとっているのを見て、慌てて言葉を続ける。
「落ち着け、俺は敵じゃないぞ。というか、よく火を起こしてくれた。もう一生出てこれないかと思ってたぜ。」
「お前は何だ。」
健が魔法の短剣を構えながら聞くと、人型の炎は簡単に答えてきた。
「オイラは火の精さ。火のあるところならどこでも行けるんだが、この世界は火がまったくないんだよ。本当にゼロ。20年ほど前にどこからか来たユウって奴が火を起こしてくれて以来だ。」
「ユウ。今、ユウって言ったか。」
「ああ、確かユウって名前だったはずだ。」
チビ助の言ってた人だ。こんなところにも来てたんだな。
「俺が名前を知ってる人かも知れないな。ユウのことをもっと教えてくれ。ユウのことなら何でもいい。」
「そうだな。ユウは、何でもできたし、とても強かったな。この世界は毎日ものすごい量の雪が降るんだ。だが、ユウは天気まで変えてしまった。強力な力を持つユウが現れたことにこの世界の主が恐れをなして隠れてしまったんだ。」
「ユウは、かつて私の恋人だったのよ。」
後ろから銀髪の女の声がした。
「おう、あんたか。20年ぶりだな。」
「久しぶりね。私は火が苦手だから感動の再会とはいかないけど。」
焚き火をきっかけにして色々と話が進んでいくので、健は不思議な感じがした。猛吹雪に自分の無力さを思い知り、閉じ込められた気持ちも味わって絶望しそうになったが、今は焚き火のおかげで体も温まっている。
「恋人だったなら、君はユウのことをよく知ってるのかい。」
「残念ながらよくは知らないわ。ユウは、この世界の主から私を救い出してくれたの。」
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