立日の異世界冒険記

0111.三つの条件

　健は正直に事情を話した。元々嘘をつくつもりもなかったのもあるが、そもそも得体の知れないこのウサギに嘘は通じないと思ったからである。
「このお話の背景と事情はよく分かりました。ただ、私どもの率直な意見を言わせてもらいますと、この商談は、問題の宝石にそれ相応の価値がある場合にのみ成り立つものだと思われます。特に、私どもがお客様のご友人の救出を試みることは、かなりのリスクがあるように見受けられます。」
「確かにその通りだな。だが、俺はあの宝石にそれだけの価値はあると思っている。理由もちゃんとある。宝石自体が罠のような仕組みになっているのに、さらに手強い岩石ゴーレムにその宝石を守らせているからだ。」
「お客様の考えは非常に筋が通っており、とてもよく理解できます。その上であえてお伝えしますと、私ども商売人は理屈だけで動くことは固く禁じられております。従って、残念ながらそのお話にそのまま合意することはできません。そこで一つご提案があります。私共のご提案をお聞きになりますか。」
「勿論、聞くさ。こっちも無理なお願いをしているし、多少は無理な条件でも飲むよ。」
「そこまで、無理をいうつもりはありません。リスクと利益の観点から、私どもが契約可能な条件をご提案させていただこうと思います。」
「分かった。何だい。」
「まず一つ目ですが、お売りいただくことになる宝石にそこまでの価値がないと私どもが判断した時点で、この契約を破棄させていただきます。」
「それは、しょうがない。受け入れるよ。」
「有難うございます。二つ目ですが、私どもは、宝石のみのご対応とさせていただきます。つまり、宝石を守る岩石ゴーレムのお相手は致しかねますので、私どもが宝石の対応をできる状況にしてくださるようお願い致します。」
「それも了解した。岩石ゴーレムは俺が囮になって何とかするよ。」
「最後に三つ目の条件、というよりご確認事項となりますが、お客様のご友人の救出についての保証は致しかねます。勿論、私どもにできる限りのことはしますが、必ずしも救出できるとは限りません。特に、まだ宝石も拝見しておらず、何も分かりませんので、救出できない可能性もある点を予めお伝えさせていただきます。」
「それも了解した。ただ、俺はあんたの力ならできると信じている。むしろ、あんたが動いてくれる程の価値が宝石にちゃんとあるかどうかの方が心配だ。あんたが、引き受けてくれたら絶対に成功するさ。」
「私どもをそこまで信頼していただけるとは、光栄です。では、三つの条件すべてにご同意いただけたということでよろしいでしょうか。」
「ああ、同意する。交渉成立だな。」