立日の異世界冒険記

ナイトタイガー

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0113.宝石の力

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「おー、そいつは良かった。じゃあ聞きたくないけど聞くよ。悪い方は何だい。」
「それはですね。あの宝石は、とんでもなく価値があるだけあって、とんでもなく難物です。」
「そうなのか。まあでも、俺はあんたを信じてるぜ。」
「有難うございます。私どもの力は微力ですが、ご期待に添えるように頑張ります。」
 ウサギは双眼鏡を懐にしまい、代わりに何か呪文のような文字が書いてある丸く平べったい白い石を取り出した。そして、ウサギは床に白い石を置いてから壁に向かって滑らせた。石は反対側の壁まで滑っていき壁に当たって止まった。次に、ウサギは懐からチョークのような物を取り出して、それで床に少し大きな円を描いた。
「さあ、そろそろ開始しましょう。岩石ゴーレムを台から離してもらえますか。ちなみに、ここに描いた円の中にうまく誘いこめれば、30秒だけは岩石ゴーレムの動きを止められます。キツくなったら、うまく使って下さい。」
「了解だ。助かる。ただ、それでもあまり持たないかもしれないから早めに頼むぜ。」
 健は岩石ゴーレムに向かって歩き出した。岩石ゴーレムまで4メートル位の距離に近付くと、カチッと音がして岩石ゴーレムは健の方を向いた。そして、健の方に向かってノロノロと動き出した。
「よし。コイツを台から引き離すから、後は頼むぞ。」
 健は岩石ゴーレムを誘う為にある程度近付いて囃し立てたりして、追いかけてくる岩石ゴーレムが健から注意を逸らさないようにする。岩石ゴーレムが台からある程度離れた段階で、ウサギは宝石の置いてある台に歩み寄った。そして、ウサギは近くで宝石を10秒ほど観察していたが、ゆっくりと宝石に手を伸ばした。ウサギが宝石を掴んで持ち上げた瞬間、カチッと音がした。そしてウサギは、さっきの龍とまったく同じように、宝石の中に煙のように吸い込まれていった。
「あっ。」
 健は思わず声が出た。岩石ゴーレムは、さっきと同じように動きが加速する。
「おいおいおい。俺の最後の頼みの綱のウサギまで吸い込まれちゃったよ。俺は、この後はどうすればいいんだ。もう手がないぞ。」
 どんどん加速していく岩石ゴーレムから走って逃げ回りながら色々考えるが、健にはもう絶望感しかなかった。龍を見捨てる訳にはいかないが、何もできそうにない。この部屋を出てしまえば、岩石ゴーレムは追って来なさそうなので、龍を見捨てれば迷宮の探索は続けられそうではある。だが、この部屋をクリアできない俺が、果たして一人で迷宮の他の場所を進んで行けるのだろうか。迷宮を出る為に必要な紋章すら手に入れられず、迷宮内で野垂れ死ぬ可能性が高い気がする。
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