立日の異世界冒険記

0172.ご馳走の謎

　女主人の合図で運ばれて来たご馳走は、迷宮の地下にいるとは思えぬほど、多種多様で見た目を味も質が高かった。緑、赤、黄の色とりどりのサラダは、特製のマヨネーズがかけられており、美味しいだけではなく、とても健康に良さそうだ。肉料理は、シチューとグリルステーキが出され、何の肉か分からないが、味と匂いは最高級品である。
　魚料理もカルパッチョとフライ料理の二品出された。驚くことに、カルパッチョの方の魚は明らかに川魚ではなく、海の魚である。パンはロールパン、クロワッサン、フランスパン風のパン等、5種類のパンが選びたい放題だ。スープは、コーンクリームスープであり、迷宮のどこからコーンを調達しているのかが非常に不思議である。
　おまけに酒もかなりの種類の中から選ぶことができ、まさかのビールまであったので、健が頼むとキンキンに冷えた最高のビールが運ばれてきた。女主人は、年代物のワインを持って来させて飲んでいる。
　健は、思わずうなった。俺は今、夢を見ているんじゃなかろうか。現実世界ですら、お目にかかったことのない最高の料理達を、迷宮の最下層の地下で堪能しているのだ。しかも、地下なのにとても明るい日差しを浴びながら、褐色の美女と一緒に食事しているのだ。最高の状況にいるのに思考回路がおかしくなりそうだ。
　健は、かつて森の中でサキュバスの鞭に騙されたことを思い出して自分の体をつねったり、色々してみるが、しっかりと痛みを感じるし、どうも夢ではなさそうだ。健のおかしい挙動を見て女主人が声をかけてきた。
「どうした。何をしておる。」
「いや、こんなすげえご馳走がここで食べられるのが、とても信じられなくて頭がおかしくなりそうなんだよ。」
「ハハハ、面白い奴だの。かなり久しぶりの訪問者だから大歓迎するのは当然のこと。」
「いや、それはとても嬉しいし、有難いんだが、迷宮の地下深くのこの場所でこのご馳走の材料をどうやって手に入れるんだ。」
「ほほう。そんなことが気になるのか。前にご馳走を振る舞った訪問者達はそんなことを気にせずに思う存分に堪能しておったぞ。ほれ、そこの小さい龍のように。」
　確かに健の横にいる龍は、何も言葉を発さずに集中し、全力でご馳走を食べている。健が微妙な顔をしていると、女主人は笑顔で続けた。
「まあ、別に隠すことではないし、お前に分かる範囲で説明してやろう。食材は、神殿の外の庭で作っているのもあるし、迷宮の他の場所まで出向いて調達してきたものもある。お前が知ってるか分からんが、迷宮には川もあるし、かなり広い世界なのじゃ。それだけではなく、迷宮の外からも食材を調達しておる。商売人から手に入れたり、部下に外まで出向かせたり、魔法を使ったりしての。こんな感じだが、答えになってるかの。」