10 / 13
お盆の話
しおりを挟む
「こんにちは~」
ホースで庭に水を撒いていたおばさんに声をかける。
相変わらず広くて手入れの行き届いている庭だ。今は真夏だから、植物たちも少ししんなりしてるけど、それでも庭は緑で溢れている。
「あら、由香ちゃん帰ってたの?」
「はい。お盆休みとれたんで」
「綺麗になったわね~」
「いえいえ。これ母からです」
社交辞令と分かっていても嬉しい。私は袋に入れた六本入りの缶ビールをおばさんに渡した。
「まあ!気にすることないのに。でもちょうど良かったわ。正樹達が帰ってきてるから」
隣のおばさんとは家族ぐるみの付き合いだ。私も子供の頃は頻繁に入り浸ってた。社会人になってからは実家に帰ったときに顔を出す程度だけど。
おばさんの家は小さな畑もあるから、野菜もおすそ分けしてもらってる。昨日もおばさんから大きなスイカをいただいたらしい。
庭では小さな子供が走り回って遊んでいた。手足が泥で汚れてる。おじいちゃんと一緒に泥遊びをしているみたい。
おじさんはタオルを首に巻いてるけど、タンクトップにズボン姿なのは孫と一緒。無口なおじさんだけど、やっぱり孫には甘いみたい。
「もしかして、愛ちゃんも帰ってるんですか?」
「愛はまだだけど、お盆明けまでには帰るって」
愛ちゃんはおばさんの子供で私とは幼なじみだ。
結婚して県外に住んでる。子供も生まれたって聞いてたから、久々に会いたいな。
「じゃあ正樹兄ちゃんの子供ですか?」
「そうなのよ。孫のお守りは目が離せなくて大変ね」
そう言うおばさんは嬉しそうだった。
「由香ちゃんは彼氏はいないの?」
「うう、全然です」
「キャリアウーマンなんでしょ?」
「仕事に追われてるだけですよー」
おばさんと少し話をして、隣の家を後にした。
蝉の声が響いて、夕方でも全然涼しくならない。
「ただいま。渡してきたよ」
「あら、ありがとう」
「おばさん元気そうだったよ。こんなに暑いのに、畑仕事とか大変だよね。私絶対無理」
「あんたは虫嫌いだからね」
おばさんにもらったスイカを冷蔵庫から出してきて頬張る。
甘くて美味しい。
「正樹兄ちゃん、子供と帰ってきてたよ。愛ちゃんも帰ってくるって」
「良かったじゃない」
「おじさんも元気そうだったよ」
枝豆を茹でていた母が手を止めて私を見た。
「あんた何言ってんの?おじさん去年亡くなったでしょ?」
「え?嘘!」
「急に倒れて亡くなったのよ。言ってなかったかしら。あんたなかなか帰ってこないから」
でも、孫と遊んでたけど……。
見間違いだったのかな。でも、おじさんの顔間違えるはずない。
蝉の声が少しだけ止んで涼しい風が吹いてきた。暑さも少しだけやわらいだみたい。
今はお盆だから、おじさんも孫の顔が見たかったのかな。
少しだけ切ない気持ちになって、私はスイカをのみ込んだ。
ホースで庭に水を撒いていたおばさんに声をかける。
相変わらず広くて手入れの行き届いている庭だ。今は真夏だから、植物たちも少ししんなりしてるけど、それでも庭は緑で溢れている。
「あら、由香ちゃん帰ってたの?」
「はい。お盆休みとれたんで」
「綺麗になったわね~」
「いえいえ。これ母からです」
社交辞令と分かっていても嬉しい。私は袋に入れた六本入りの缶ビールをおばさんに渡した。
「まあ!気にすることないのに。でもちょうど良かったわ。正樹達が帰ってきてるから」
隣のおばさんとは家族ぐるみの付き合いだ。私も子供の頃は頻繁に入り浸ってた。社会人になってからは実家に帰ったときに顔を出す程度だけど。
おばさんの家は小さな畑もあるから、野菜もおすそ分けしてもらってる。昨日もおばさんから大きなスイカをいただいたらしい。
庭では小さな子供が走り回って遊んでいた。手足が泥で汚れてる。おじいちゃんと一緒に泥遊びをしているみたい。
おじさんはタオルを首に巻いてるけど、タンクトップにズボン姿なのは孫と一緒。無口なおじさんだけど、やっぱり孫には甘いみたい。
「もしかして、愛ちゃんも帰ってるんですか?」
「愛はまだだけど、お盆明けまでには帰るって」
愛ちゃんはおばさんの子供で私とは幼なじみだ。
結婚して県外に住んでる。子供も生まれたって聞いてたから、久々に会いたいな。
「じゃあ正樹兄ちゃんの子供ですか?」
「そうなのよ。孫のお守りは目が離せなくて大変ね」
そう言うおばさんは嬉しそうだった。
「由香ちゃんは彼氏はいないの?」
「うう、全然です」
「キャリアウーマンなんでしょ?」
「仕事に追われてるだけですよー」
おばさんと少し話をして、隣の家を後にした。
蝉の声が響いて、夕方でも全然涼しくならない。
「ただいま。渡してきたよ」
「あら、ありがとう」
「おばさん元気そうだったよ。こんなに暑いのに、畑仕事とか大変だよね。私絶対無理」
「あんたは虫嫌いだからね」
おばさんにもらったスイカを冷蔵庫から出してきて頬張る。
甘くて美味しい。
「正樹兄ちゃん、子供と帰ってきてたよ。愛ちゃんも帰ってくるって」
「良かったじゃない」
「おじさんも元気そうだったよ」
枝豆を茹でていた母が手を止めて私を見た。
「あんた何言ってんの?おじさん去年亡くなったでしょ?」
「え?嘘!」
「急に倒れて亡くなったのよ。言ってなかったかしら。あんたなかなか帰ってこないから」
でも、孫と遊んでたけど……。
見間違いだったのかな。でも、おじさんの顔間違えるはずない。
蝉の声が少しだけ止んで涼しい風が吹いてきた。暑さも少しだけやわらいだみたい。
今はお盆だから、おじさんも孫の顔が見たかったのかな。
少しだけ切ない気持ちになって、私はスイカをのみ込んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる