好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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一年ぶりの異世界

9 どうした?じゃねーよ!

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『んっ、ふ……』

 最初は軽く落とされただけの口づけは、何度かくり返されるうちにしだいに深くなり、部屋には衣擦れの音と、二人の息遣いだけが響く。
 会えなかった時間を埋めるように、俺もルーシェンも行為に没頭していた。痛いくらい抱きしめられているのに、それが気持ちいい。身体がしびれるように熱くなる。

「シュウヘイ」

 ルーシェンが、口づけの合間に俺の名前を何度も呼ぶ。

「……シュウヘイ」

 名前を呼ばれながら、頬や耳朶にキスされると、どうしようもなく切ない気持ちになった。

『……ここにいます』

 目を開けてルーシェンを見ると、王子は、いつか魔法村で見せたすがるような表情をしていた。そんな表情を見ると俺も不安になる。ルーシェンの髪に手を伸ばして、頭を撫でた。

『……ルーシェン、髪切りました?』

 少しだけ痩せた王子は、以前より髪が短くなっていた。まだ俺よりは長くて、後ろで無造作に結べるくらいはあるけど、サムライみたいな長さじゃない。

「ああ」

『短いのも似合ってます』

「そうか」

 嬉しそうだな。

「シュウヘイは少し髪の色が変わった」

『もとはこんな色です。似合いますか?』

 最近染めてなかったから、昔より黒に近い。ルーシェンみたいな光沢のある黒とは違うけど。

「シュウヘイなら何でもいい」

 そう言って髪に口づけを落とすルーシェン。さすがに恥ずかしくて顔に熱が集まった。

『……あっ、ちょっと、待っ』

 照れている間に、ルーシェンの手が服の下に侵入してきた。

「どうした」

 どうした?じゃねーよ!乳首触ってるから!それも左側!

『さ、先にいろいろ……話が、あ、あ』

「話?」

『会えなかった時、の……事とか、もっといろいろ、話した、あっ』

「そうだな。聞いてやるから話せ」

 無理だろ!
 乳首いじられながら会話とか。どう考えてもエロになだれ込むパターンだ。会えたばっかりで、嬉しいけど、何ていうか、心の準備が……。

『ま、待ってください……ま、まだ……あ、ああっ』

「お前は王子の俺をどれだけ待たせるつもりだ」

 ルーシェンの攻撃が容赦ない。乳首を強めにぐりぐりいじられて、腰が揺れる。

『す、すみません。謝ります……だから』

 謝りながらも、体に(特にお尻)覚悟を決めろと脳から指令を出している時だった。ルーシェンが唐突に愛撫を止めた。

「……分かった。今日は待ってやる。シュウヘイも来たばかりで疲れているだろうからな」

 ふてくされたようにそう言い放つルーシェン。

 え?本当に待つのか?聞き分け良すぎませんか?いやもう半分以上覚悟を決めてたんだけど。急に止められてこの体の熱どうしたらいいんだよ。

「なんだ、不服か?」

『いえ、何でもありません』

 今さらやっぱり止めないでとか言えない。
 もし言ってしまったら、絶対一回や二回じゃ終わらないだろう。明日から異世界で初めての仕事なのに、足腰立たないとか恥ずかしすぎる。

 ……ルーシェンが帰ったら一人で自分を慰めよう。

『ええと……何か飲みませんか?』

 ルーシェンの下からなんとか抜け出して、取り繕うようにそう言う。言った後で、何も飲み物を買っていない事に気づいた。日本みたいに、部屋に冷蔵庫とかなさそうだな。魔法村には瓶に入った水が常備されていたけど。

「シュウヘイが何か飲みたいのなら、部下に頼んで何か持ってこさせるが」

『頼まなくて大丈夫です』

 ベッドから下りて、キッチンらしき部屋を覗いてみる。少し前かがみなのは仕方がない。誰かとキスしたのは一年ぶりだ。そういえば、一年前の最後のキスもルーシェンが相手だった。

 そんな事を考えていると、ルーシェンもキッチンにやって来た。

「シュウヘイが何か作ってくれるのか?」

『着いたばかりでまだ食材も何も買っていません』

 あ、でもさっき夜食とおやつ買ったな。それに、ルーシェンに渡そうと思っていたお土産もある。

『夜食食べますか?』

「そうだな。今日はこっちに戻るために、夕食は軽く済ませたから物足りないと思っていた所だ」

 ルーシェンの言葉を聞いて、俺はさっそく準備にとりかかる事にした。キッチンには魔法村のように、水の入った瓶や少量の果物、魔法石も用意されていた。

『ルーシェン、実は日本からお土産を持って来ました。私が一番好きな料理です』

 キャリーケースから袋ラーメンを取り出すと、ルーシェンは嬉しそうな顔をした。

「ラーメンカラアゲテイショクか?」

 覚えていた事にびっくりした。魔法村で飲み明かした時、ちらっと口にしただけの話だったのに。

『ラーメンだけです』

「それでもいい。楽しみだ。シュウヘイの料理は美味い」

『それは誤解です。料理は得意ではありません』

 否定したがルーシェンはご機嫌で、俺が果物を皿に盛りつけたり、魔法石で作ったお湯で麺を茹でたりする間ずっと俺の背後にくっついて、興味深そうに見守っていた。しかも頻繁に腰を撫でられたり、髪にキスを落とされたりする。

『そのお皿を運んでください。コップを用意してください』

 料理中にベタベタされて邪魔だし恥ずかしいので、最後の方は王子といえどもこき使う事にした。

『出来ました』

 ベッドのある部屋の小さなテーブルに、ささやかだけど夜食が並んだ。俺はマイ箸持参で、ルーシェンはフォークとスプーンだ。

「シュウヘイの世界では、地面に座って食事をとるのだな。新鮮だ」
『のびるので早く食べてください』

 ルーシェンが興味深そうに眺めているだけなので、手本として先に食べる事にした。けっこうお腹がすいてたらしく、食べ始めると止まらない。ルーシェンも俺を見ながら、フォークで麺をすくっている。

 あっという間にラーメン完食だ。次はおやつに買った異世界フードを広げる。

「シュウヘイが褒めるだけあって、なかなか良い味だな。乾いている時は持ち運びにも適している」

 変な所に感心しながら、ルーシェンは優雅にラーメンを食べている。優雅すぎて麺がのびてる気がするが、初めてだから目をつぶろう。

『一般人の部屋にやって来て、部下や親に怒られないんですか?』

 ある程度お腹が落ち着いたので、気になった事を聞いてみる事にした。王子だから怒られたりしないのかな。でも一般人とは立場が違うから、いろいろマズイ気がする。

「部下には伝えてある。シュウヘイが俺の部屋に泊まると手続きが面倒だからな。俺がシュウヘイの部屋に来た方が早い」

 え?今泊まるって言いました……?

「シュウヘイがもう少しこの世界に慣れたら、俺の両親に会って欲しい」

 王子オーラ全開の真顔で言われて、思わず食べ物を口からこぼしそうになった。
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