好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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研修生活スタート

11 なんですかそのニヤニヤ笑い

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 パーティー会場の入り口で如月が俺の帰りを待っていてくれた。
 ルーシェンとアークさんは第二庭園にある偉い人専用通路から会場に戻ったので一人だ。

「その様子を見ると……王子のご機嫌はなおったみたいですね」
「そうなんだ。ところで如月、俺を見て何か気づいた事ない?」

 如月が日本語で話しかけてきたので、俺も日本語で返す。

「え……さすがに屋外では何もしてませんよね……」
「ち、違うって!魔力とか!」
「魔力?」
「そう」

 手を伸ばして、ゲームやアニメでありがちな魔法を使うポーズを取ってみる。自分じゃよく分からないけど。

「岬さん……頭のネジがどこかに行きましたか?幸せボケですかね」

 魔力が増えたの、如月には分からないのかな。まあいいや。気付かれるまで黙っておこう。

 会場ではアークさんが言っていた通り、王妃様が登場して盛り上がっていた。綺麗な女の人がいると、やっぱり華やかになるな。魔法村で会った時と同じ姿の王妃様は遠目から見ても不思議なオーラがある。

「どうします?パーティーは多分まだ続きますけど、先に部屋に戻りますか?」

 あ、如月が異世界語に戻った。

『部屋に戻ってもいいんですか?』
「もうメインイベントは終わりましたし、あとは日本でいう二次会、三次会みたいなものです。参加は自由ですよ」

 メインイベントって結局何だったんだろう。ルーシェンしか見ていなかったから分からない。しかしラキ王国のパーティーゆるいな。

『部屋に戻ります』

 ルーシェンが部屋に来るって言ってたから、少し片付けておこう。

「なんですかそのニヤニヤ笑い……いや、聞くのはやめておきます」

 そう言うと、如月は何故か大げさにため息をついたけど、結局部屋まで送ってくれた。

 俺と同じように部屋に戻る人もちらほらいる。会場出口で簡単なチェックを受け、のんびり部屋まで歩くことにした。
 最近少しずつ王宮内にある近道や抜け道を覚えてきたので歩くのは楽しい。魔法エレベーターは必須だけど、各階停止じゃないエレベーターの存在にもようやく気づいたので、移動も楽になった。

「では岬さん、また明日」
『如月課長、いろいろありがとう』
「……ハルちゃんでかまいませんよ」

 ハルちゃん……イメージ違うな。やっぱり如月でいいか。

 部屋に戻ると、上着を脱いでベッドにダイブした。
 部屋も散らかってるから片付けないと。風呂も先に入っておこう。一応明日の仕事の準備も。そう思うけどなかなかベッドから動けない。
 なんていうか……幸せだ。顔が笑ってしまう。自分でも気持ち悪いと思うけど、嬉しいんだから仕方ない。枕を抱えてバタバタして、ひとしきり幸せに浸る事にした。

***

「……まだかな」

 目覚まし時計を眺めるの何度目だろう。時刻は夜中の二時過ぎだ。
 ルーシェン何次会まで出てるんだろう。なかなか抜けられないのかな。部屋も掃除したし風呂も入ったし、もう何もすることがない。異世界語の復習でもしようかな。

 豪華な机に異世界語の本を広げ、辞書を片手に読んでいると、玄関で鈴のような音がした。
 ルーシェンだ、と気づいて緊張が走る。読んでいた本の内容が吹っ飛んだ。っていうかルーシェン、ちゃんと玄関から来るんだ。ベランダからだと思っていた。

 駆けよるより先にドアが開いた。
 王宮内にある全ての扉は王族にはフリーパスだと如月に聞いた事がある。魔法でもアナログの鍵でも王族なら簡単に開けられる。何でかと言うと、王宮はもともと王族の住む家だからだ。かなり巨大で豪華だから気付きにくいけど。

『ルーシェン!』
「遅くなった」

 ルーシェンはパーティー会場で会った時の豪華な衣装の上に、濃紺のマントを羽織っていた。顔がいいと何を着ても似合うな。一瞬見とれていると、ルーシェンも俺を見て笑った。

「シュウヘイのその姿、久しぶりに見た」

 王宮は暖かいので、上はTシャツ、下はジャージ。つまり部屋着だ。王子を迎えるには地味すぎるかもしれないけど、初日もこんな感じだったし今さらだし気にしない。

『遅かったですね。先に寝ようかと思いました』

 そう言うと、ぎゅっと抱きしめられて顔に熱が集まる。ルーシェンからはほんのり酒の匂いがした。

「そう拗ねるな」
『す、拗ねてません。先にお風呂入りますか?』

 なんだこの新婚コントは。ツンデレな自分気持ち悪い。ドン引きだ。
 でもルーシェンはそんな俺に引く事もなくさらっと
「いや、その前にシュウヘイを抱きたい」
と恐ろしい事を言った。
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