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認定式
7 パワースポットにも程がある
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***
認定式当日。
俺は正装して王宮の20階にいた。
研修で顔見知りになった兵士達と一緒に、21階に続く階段の前で待機中だ。21階以上は王族のプライベートルームらしく、兵士の資格があって、なおかつ許可を貰った人間しか上がれないらしい(後から知ったけど、許可を取るのも大変みたいだ)
見習いは当然のように入れない。一人前になってからも、認定式で21階に上がれるだけで、後はよほど出世しないと二度と立ち入り出来ないらしい。
一年前にアルマの蛇に追われて21階に駆け込んだから、許可が必要なんて知らなかった。
隣にいる新米兵士達も
「もしかしたら二度と来られないかもしれないから、風景を目に焼き付けとく」
とか
「故郷の村で自慢する」
とそれぞれ興奮していた。
そういう俺は、興奮していないと言われれば嘘になるけど、正直ルーシェンが参加をしないと聞いて少しがっかりしていた。
それに体調がいまいちだ。よく分からないけど不調というか、妙な違和感を感じていた。魔法村で城門の前に立った時と似た感覚で、背筋にピリピリした重苦しい気配を感じ身体が重い。
そう感じているのは俺一人じゃないらしく、はしゃいでいる新米兵士の中に数人、顔色が悪くて調子の悪そうな奴がいた。
「準備は出来たか?」
国王軍に属する上官が口を開くと、新米兵士達はビシッと整列して口をつぐんだ。
上官は俺も研修を受けた事のある人で、むやみに怒鳴ったりはしないが鬼のように迫力のある人だ。多分素手でいろいろ抹殺出来ると思う。
「21階には国王と王妃様がいらっしゃる。決して失礼な態度を取るな。分かったな」
「はい!」
失礼な態度をとったらどうなるんだろう。投獄かな。それとも国外追放か?ルーシェンの為にも決して失敗出来ない。
21階へ続く門が開き、白い大階段を新米兵がぞろぞろ上っていく。ざっと50人くらいかな。俺は後ろの方だ。
着いた先はかなり広い中庭のような場所だった。ドーム型の天井も見えるけど、全て覆われている訳じゃなくて半分屋外のようだ。空中庭園って感じかな。
それよりもドーム型の天井の上に浮いている島とか、丸みを帯びた馬鹿でかい柱とか見えるんだが、どうなってるんだ王宮の構造……。
中庭は一面が白い床で、奥に玉座があり、囲むように緑色の木々が均等に植えられている。
とても綺麗な場所なんだけど、空気の重苦しさは20階とは比べものにならなかった。
たまにあるんだよな。ここにはなんとなく居たくないって場所。泊まりたくない旅館とか、入りたくないトイレとか。
中庭は不吉な感じはしないけど、強烈なパワースポットって気配が漂っていて、長時間滞在する自信がない。認定式何分くらいで終わるんだろう。
新米兵士達が無言で整列していると、中庭に偉い人々が続々とやって来た。
キョロキョロ出来ないけどちらりと視線を送ると、部長と如月の姿が見えた。如月ってけっこう地位が高いんだと感動する。心配そうにこっちを見ていて少しほっとした。
続いて国王と王妃様が、召使いを従えて登場だ。高い位置にある玉座に座ると、一つ空いた席が目についた。ルーシェンの席だ。今もまだ辺境にいるんだろうか。早く会いたい。
ルーシェンの事を考えているうちに、認定式が始まった。
上官が一人一人名前を読み上げて、兵士がそれに返事をし、配属先が決定する。後で代表者が国王から剣または杖を受け取るらしい。
俺は代表じゃないから返事だけすればいい気楽な立場だ。
だが、そのうち気楽とも言っていられない事態が起きた。
***
あれは……何だ?
無意識のうちに全身に冷や汗をかいていた。
パワースポットが更に強化されたようなビリビリした気配が漂い始めた頃、俺は庭園の向こうに動く何かを認識していた。白っぽい何かだ。長くて浮いている。
「うう……」
式は続いているけど、数メートル離れた場所にいる魔法使いみたいな青年が小さなうめき声を上げた。気分が悪いらしい。分かる。俺も相当気分が悪い。
白っぽい何かは徐々に近づいて来た。
近づくにつれてその巨大さが分かる。毛なのか光なのか分からないけど、フワフワとしていて、全身は龍に似ていた。
ああ、これは多分あれだ。
地上から王宮を見上げた時に、ごくたまに上の方をフワフワと白い生き物が飛行しているのが見えたけど、多分そいつ。地上で見た時は、こんなに巨大なエネルギーを持っているとは夢にも思わなかった。
ヤバイ。倒れそうだ。みんな平気なのか?あんな龍が近づいているのに?
冷や汗に耐えながらチラチラと周囲を見ても、新米兵士達は微動だにしていなかった。龍を見てもいない。21階に龍がいることは、この世界の常識なのか?それとも、見えていないのか?あんなにデカイのに?
巨大な白い龍は中庭までやって来ると、兵士達の上空を漂い始めた。
尻尾の先が兵士に当たっても、皆避ける素振りもしない。
うう……叫びたい、上空に龍がいるんですけど!って。
「ミサキシュウヘイ」
『は、はいっ!?』
突然名前を呼ばれて心臓が飛び出るかと思った。名前を読んだ上官が眉をひそめる。まずい、ちゃんとした態度をとらないと。
そう思ったのに、上空にいた巨大な龍が、急にくるりと向きを変えると、俺の目の前に降りてきた。顔だけで三メートルくらいあるのか……。
「……配属先は」
駄目だ。上官が何を言っているか聞こえない。
音がぷつりと途切れ、視界いっぱいに広がった龍のせいで他の景色が何も見えなくなった。目の前にいる白い龍の金色の瞳から眼が離せない。身体は金縛りにあったようにぴくりとも動かなかった。
そして。
龍が巨大な口を開ける。
なんとなくワニみたいだとぼんやり考える。開かれた口の中はまるで白い闇のようで、俺は瞬く間にその闇の中に呑み込まれた。
認定式当日。
俺は正装して王宮の20階にいた。
研修で顔見知りになった兵士達と一緒に、21階に続く階段の前で待機中だ。21階以上は王族のプライベートルームらしく、兵士の資格があって、なおかつ許可を貰った人間しか上がれないらしい(後から知ったけど、許可を取るのも大変みたいだ)
見習いは当然のように入れない。一人前になってからも、認定式で21階に上がれるだけで、後はよほど出世しないと二度と立ち入り出来ないらしい。
一年前にアルマの蛇に追われて21階に駆け込んだから、許可が必要なんて知らなかった。
隣にいる新米兵士達も
「もしかしたら二度と来られないかもしれないから、風景を目に焼き付けとく」
とか
「故郷の村で自慢する」
とそれぞれ興奮していた。
そういう俺は、興奮していないと言われれば嘘になるけど、正直ルーシェンが参加をしないと聞いて少しがっかりしていた。
それに体調がいまいちだ。よく分からないけど不調というか、妙な違和感を感じていた。魔法村で城門の前に立った時と似た感覚で、背筋にピリピリした重苦しい気配を感じ身体が重い。
そう感じているのは俺一人じゃないらしく、はしゃいでいる新米兵士の中に数人、顔色が悪くて調子の悪そうな奴がいた。
「準備は出来たか?」
国王軍に属する上官が口を開くと、新米兵士達はビシッと整列して口をつぐんだ。
上官は俺も研修を受けた事のある人で、むやみに怒鳴ったりはしないが鬼のように迫力のある人だ。多分素手でいろいろ抹殺出来ると思う。
「21階には国王と王妃様がいらっしゃる。決して失礼な態度を取るな。分かったな」
「はい!」
失礼な態度をとったらどうなるんだろう。投獄かな。それとも国外追放か?ルーシェンの為にも決して失敗出来ない。
21階へ続く門が開き、白い大階段を新米兵がぞろぞろ上っていく。ざっと50人くらいかな。俺は後ろの方だ。
着いた先はかなり広い中庭のような場所だった。ドーム型の天井も見えるけど、全て覆われている訳じゃなくて半分屋外のようだ。空中庭園って感じかな。
それよりもドーム型の天井の上に浮いている島とか、丸みを帯びた馬鹿でかい柱とか見えるんだが、どうなってるんだ王宮の構造……。
中庭は一面が白い床で、奥に玉座があり、囲むように緑色の木々が均等に植えられている。
とても綺麗な場所なんだけど、空気の重苦しさは20階とは比べものにならなかった。
たまにあるんだよな。ここにはなんとなく居たくないって場所。泊まりたくない旅館とか、入りたくないトイレとか。
中庭は不吉な感じはしないけど、強烈なパワースポットって気配が漂っていて、長時間滞在する自信がない。認定式何分くらいで終わるんだろう。
新米兵士達が無言で整列していると、中庭に偉い人々が続々とやって来た。
キョロキョロ出来ないけどちらりと視線を送ると、部長と如月の姿が見えた。如月ってけっこう地位が高いんだと感動する。心配そうにこっちを見ていて少しほっとした。
続いて国王と王妃様が、召使いを従えて登場だ。高い位置にある玉座に座ると、一つ空いた席が目についた。ルーシェンの席だ。今もまだ辺境にいるんだろうか。早く会いたい。
ルーシェンの事を考えているうちに、認定式が始まった。
上官が一人一人名前を読み上げて、兵士がそれに返事をし、配属先が決定する。後で代表者が国王から剣または杖を受け取るらしい。
俺は代表じゃないから返事だけすればいい気楽な立場だ。
だが、そのうち気楽とも言っていられない事態が起きた。
***
あれは……何だ?
無意識のうちに全身に冷や汗をかいていた。
パワースポットが更に強化されたようなビリビリした気配が漂い始めた頃、俺は庭園の向こうに動く何かを認識していた。白っぽい何かだ。長くて浮いている。
「うう……」
式は続いているけど、数メートル離れた場所にいる魔法使いみたいな青年が小さなうめき声を上げた。気分が悪いらしい。分かる。俺も相当気分が悪い。
白っぽい何かは徐々に近づいて来た。
近づくにつれてその巨大さが分かる。毛なのか光なのか分からないけど、フワフワとしていて、全身は龍に似ていた。
ああ、これは多分あれだ。
地上から王宮を見上げた時に、ごくたまに上の方をフワフワと白い生き物が飛行しているのが見えたけど、多分そいつ。地上で見た時は、こんなに巨大なエネルギーを持っているとは夢にも思わなかった。
ヤバイ。倒れそうだ。みんな平気なのか?あんな龍が近づいているのに?
冷や汗に耐えながらチラチラと周囲を見ても、新米兵士達は微動だにしていなかった。龍を見てもいない。21階に龍がいることは、この世界の常識なのか?それとも、見えていないのか?あんなにデカイのに?
巨大な白い龍は中庭までやって来ると、兵士達の上空を漂い始めた。
尻尾の先が兵士に当たっても、皆避ける素振りもしない。
うう……叫びたい、上空に龍がいるんですけど!って。
「ミサキシュウヘイ」
『は、はいっ!?』
突然名前を呼ばれて心臓が飛び出るかと思った。名前を読んだ上官が眉をひそめる。まずい、ちゃんとした態度をとらないと。
そう思ったのに、上空にいた巨大な龍が、急にくるりと向きを変えると、俺の目の前に降りてきた。顔だけで三メートルくらいあるのか……。
「……配属先は」
駄目だ。上官が何を言っているか聞こえない。
音がぷつりと途切れ、視界いっぱいに広がった龍のせいで他の景色が何も見えなくなった。目の前にいる白い龍の金色の瞳から眼が離せない。身体は金縛りにあったようにぴくりとも動かなかった。
そして。
龍が巨大な口を開ける。
なんとなくワニみたいだとぼんやり考える。開かれた口の中はまるで白い闇のようで、俺は瞬く間にその闇の中に呑み込まれた。
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