好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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認定式

6 まだ帰りたくありません

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 部屋に戻ってベッドに横になる。蹴られた腹が地味に痛い。

「ルーシェンが帰るまでに出て行け、か……」

 その気になれば、荷物をキャリーバッグに詰めて王宮を出て行く事もできるけど……。俺がいなくなったら、ルーシェンへこむだろうなぁ。それに、傷つけられたり殺されるかもしれないのは怖いけど、まだ一緒にいたい。考えが甘いのかな。

「はあ……」

 ため息をついてゴロゴロしていると、机に置いていた携帯電話が鳴った。家族かと思ったら違った。如月だ。

『もしもし?』
「岬さん?今どちらですか?」
『部屋にいます』
「そうですか」

 如月は確か地方の街に出かけていたと思うんだけど、帰って来たのか。

『実は……』
「ちょっと出てこられますか?職場でお待ちしています」

 さっきあった事を相談しようか悩んでいたのでちょうど良かった。
 電話を切って17階に向かう。さすがに今回は誰も待ち伏せしていなかった。

***

『こんばんは』

 もう時間が遅いので17階に残っている人は少ない。
 異世界担当課には灯りがついていて、如月と部長秘書の藤子さんがいた。

「岬君、見たわよ。これ」

 藤子さんが号外をピラピラ振って、何で呼ばれたのか分かった。如月は難しい顔で記事を読んでいる。

『私も読みました』
「まだ顔バレはしてないみたいだけど、察しのいい人間ならバレるのは時間の問題みたいね」
『顔バレしてないんですか?』
「このイラストは顔の分からない人間に使われるのよ」

 なんだ。埴輪みたいな顔だと思われているのかと思っていた。

「でもちょっと似てるわね」

 そう言って藤子さんが爆笑している。心外だ。俺は埴輪よりはかっこいいと思うんだけど。

「問題はこの記事がどうして出たかですね」
『え?』
「こういった記事が出るなら間違いなく王子サイドが出すと思ってましたが、今回のは違いますね。王子は魔物を討伐中で不在ですし、内容が岬さんに対して批判的です。岬さんの事をよく思っていない人が情報を漏らしたんでしょう」

 俺をよく思ってない人か……。心当たりはないけど、きっとたくさんいるんだろうな。

『実はさっきルーシェンのファンクラブの人達に会いました』

 そう言うと、如月も藤子さんも目を丸くした。

「何か言われました?」
『ルーシェンが帰るまでに出て行けって』
「……直球ですね」

「まさか出て行ったりしないわよね、岬ちゃん」
『え?』
「異世界に帰ったりしないわよね。好きなんでしょう?王子の事」
「もしも日本に帰りたいなら協力しますよ」
「ちょっと、ハルちゃん!」

 如月はいつでも俺の気持ちを優先してくれる。そう思うとホロリとした。

『……好きです。まだ帰りたくありません』

 口にすると、藤子さんが小さく歓声を上げ、如月はやれやれとため息をついた。

「分かりました。ファンクラブの中には過激な行動に走る人間もいるでしょうから、王子が帰るまで職場と部屋以外は極力出歩かない方がいいでしょうね。私と課のメンバーで岬さんの護衛にあたります」

『えっ?2階だけだから大丈夫です』

「いえ、岬さんに何かあると大変ですから。それにもし、岬さんが王子の伴侶になるのなら、異世界担当課の全員がそのままあなたをサポートする専属チームになると思います。もともとそういう可能性も考えて構成された課ですから」

 開いた口がふさがらなくて、ぽかんとしている俺に如月は続けた。

「とりあえず明後日には一人前になれた兵士の認定式が行われます。王子の帰還は間に合いませんが、岬さんは式典に出席してくださいね。これに出ないと、王子や王族の住む21階以上に入る事すら出来ませんから」

「岬ちゃん、式の後は王子が帰るまで私と一緒に部長の秘書をしたらいいわ」
「そうですね。部長秘書ならファンクラブのメンバーもうかつに手は出せないでしょう」

 話がどんどん進んでいって、正直ついていけない。

 今すぐルーシェンに会って、いろいろ話をしたい。いや、会うだけでいい。

 俺が王子の伴侶?如月の言葉のインパクトが強すぎて、ずっと頭の中をぐるぐる回っていた。
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