好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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9 戦闘中

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 暗い雲を突っ切り、光そのもののような龍は速度を上げて飛行していた。
 たまに野生の飛竜や大型の鳥、見たことのない生き物が翼を広げて下の方を飛んでいく。
 スピードはみな白い龍にはかなわず、一部の飛竜達は白い龍の存在に気付いたのか、皆遠慮するように方向を変え飛行経路をあけた。

 進んでいくうちに地面の色は赤茶色に変化した。ぽつぽつと尖った岩が点在している。
遠くに花火のような光が見えた。俺が知る限り、この国に花火を打ち上げる文化はない。花火が上がっている様に見えるのは、ほとんどが魔法の光だ。

(戦闘中……なのか?)

 白い龍が高度を下げた。
 スピードも緩めたので、花火のような光の周辺に飛竜が飛び回っているのが見える。背中に乗せている人たちは、皆青いジャケットを着用している。ルーシェンの部下のエリート飛行部隊達だ。飛行部隊達が旋回している輪の中央には、見たことのない植物が存在していた。

(うわ……何だあれ……)

 おそらく花だと思うんだけど、ちょっとしたビルくらいに巨大で、しかも動いている。色も形も醜悪で、俺が喰われそうになった桃花村の花が可愛く見えるほどだ。
 グロテスクな植物は鞭のように蔓を振り回し、飛び回る飛竜を叩き落とそうとしている。飛竜はそれを避けながら、花の中央部分に魔法攻撃をしていた。

 白い龍がさらに近づき、花(と呼んでいいのか不明)のすぐそばを飛竜に紛れて旋回する。
 この花、でかすぎるだろ。
 しかも中央あたりにグロテスクな口がある。蔓に捕まったら喰われるぞ。五日で帰って来られないはずだ。

(あ、アークさん!)

 目の前を、見たことのある兵士が飛竜に乗って横切った。声をかけても気付かれない。俺が見えていないみたいだ。

 アークさんが飛竜の上から花に向かって矢を放つ。矢は放たれた瞬間に先端から赤い炎を纏い、そのまま巨大花に向かう。そのまま巨大花の中央にある口に収まり、一拍置いて爆発を起こした。

(うわぁ!!)

 爆風で吹き飛ばされる。まさかあんな矢からこの威力の魔法攻撃!?それとも俺が軽いからか?

 白い龍から落ちてくるくる回り、近くにいた飛竜にぶつかった。生き物は素通り出来ないみたいだ。

(あ、ありがとう)

 ぶつかった飛竜は嫌そうなそぶりを見せたけど、乗っている兵士は全く気付いていない。

「やったか……?」

 疲れきった表情の兵士は、じっと爆発後の花を見守っている。
 花の花びらと口の部分は黒こげになって、蔓は動かない。

「やったぞ!!」
「倒したぞ!」

 飛行部隊の兵士達は歓声を上げて、そのうちの一人が焦げた花に近づいた。

「待て!近付くな!」

 聞いた事のある声が耳に飛び込んできて、実体がないはずなのに心臓が跳ねたような気がした。どこだ……?

 俺のいる飛竜の反対側、大きな岩の上にルーシェンがいた。
 相棒と言っていた白い竜には乗っていない。あんな近くに無防備に立っていて大丈夫なのか?

(ルーシェン!)

 何とか近づきたい。飛竜から飛び降りて、手足をばたつかせてルーシェンの方に移動した。
 なんだか変な魔力の塊や波みたいなものが渦巻いて、全然うまく飛べない。でも、近づきながら俺はルーシェンに見とれていた。如月や他の皆にもあったけど、ルーシェンの周りにある光は全然違う。すごく大きくて、綺麗な金色だ。魔法を使う時はそれに濃い青が混ざる。
 見ればルーシェンの足元から、巨大な花を囲むように円形の魔方陣が光を伴いながら伸びている。飛行部隊達が皆、この円陣の上を飛んでいる事に気づいて、何ともいえない嬉しさがこみ上げてきた。皆がルーシェンの魔法や実力を信頼して戦っているんだと実感したからだ。

「ぎゃあ!」

 ルーシェンを目指して犬かきのように空を飛んでいると、近くで誰かの叫び声がした。爆発後に動きを止めていた花の蔓が、再びにょきりと首をもたげ、近づいていた兵士を飛竜ごと捕まえたのだ。
 周辺を飛んでいた飛行部隊の兵士達が、口々に彼の名前を呼ぶ。助けようにも別の蔓が邪魔して近づけない。

「すぐに助ける!エスト!」

 ルーシェンが白い竜の名前を呼んだ。

「王子、私が!」

 別の兵士(よく見ればロベルトさん)が突っ込んできて、蔓を長剣でなぎ払った。すごい戦闘力だ。

(危ない!)

 蔓が切り離され、バランスを失って落ちる飛竜と兵士に、実体が無いことも忘れて落下地点に滑り込んだ。
 視界の端に、ルーシェンが見える。
 あれは、魔法?
 落下する飛竜と兵士に押しつぶされる瞬間、ルーシェンの青い光に包まれていた。

***

「大丈夫か?」

(ん?大丈夫です)

 実体が無くても気絶はするらしい。
 目を覚ますと、テントのような場所に寝かされていた。

「……すまない。王子は?」

 あれ?すぐ近くから誰かの声がする。
 見れば俺の真下に包帯だらけの男が寝ていた。

(あっ、すみません)

 焦って横にずれたが、包帯だらけの男は俺に気づかず、話しかけてきた別の兵士に答える。そうだった。俺は絶賛幽体離脱中だった。

「ご無事だが、まだ戦っていらっしゃる」
「……妖花は?」
「本体は倒したが、根が残っている。しかも、枯れる前に別の仲間を呼んだ」
「まさか……」

 何だか深刻な話をしているな。

「俺も戦う……!」
「馬鹿言うな、怪我をしているんだぞ。王子の防御魔法が無ければ死んでいた。この程度の怪我ですんだのが不思議なくらいだ。頼むから安静にしていてくれ。お前に何かあったら俺は……」

 そう言われて、傷を負った兵士はうつむいた。

「実は、守護の光を見たんだ」
「守護の光?」
「気を失う前、上空に白い光が渦巻いているのが見えた。あれは……王宮の守護者ではないかと思う」
「そうか。きっと王宮の守り神が、部下のお前も守ってくれたんだな」

 何だかファンタジックな話してるな。興味がないから出よう。
 それに、何だかこの二人、ラブラブしている気がするし、職場恋愛ってやつかも。
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