好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

文字の大きさ
44 / 209
引っ越し

3 お帰りなさい

しおりを挟む
 王子はそのまま俺のベッドの前まで歩いて来た。
 目をこらすと、青と金色の光が病室いっぱいに広がっていくのが見える。
 大部屋にいた病人や怪我人達が、王子の存在に気づいてベッドに起き上がると、頭を下げた。硬直していたジョシュもようやく正気に戻ったのか、その場に膝をつく。
 部屋にいるのに何もしていないのは俺だけで、どうしようか悩んでいるうちに、ルーシェンがベッド前にやって来た。

『えっと……あの』

 ルーシェンは品定めするように、俺の額に手を当てて、それから頬を両手で挟んで撫で回した。なんだなんだ?

「高熱で意識がなかったと聞いたが……熱はないな」
『もう大丈夫です。下がりました』

 そう言うと、ぎゅっと抱きしめられた。
 周囲が息をのむ音が、ハッキリ聞こえたような気がする。

『ルーシェン、み、皆が見てます』

 焦って小声で言ったけど、ルーシェンの力が弱まる事はない。バレてもいいのだろうか。今は昼間でみんないるんだけど。
 背中を向けているルーシェンには見えないだろうけど、みんな頭を下げるとみせかけて思いっきりこっち見てるんだが。王族と目を合わさないという礼儀作法どこいった。いや、背中向けてるからいいのか。

「会いたかった。あまり心配をかけるな」

 ルーシェンの言葉に、外野を気にしていた気持ちが吹き飛んだ。

『私も、会いたかったです。お帰りなさい』

 小声でそう言うと、顔を上げたルーシェンが微笑む。

「遅くなってすまなかった。認定式までには帰ると言ったのに」
『あんな花が相手では仕方ありません。ルーシェンが無事で良かったです』
「ハルバートに聞いたのか?」
『ああ、ええ……まあ』

 話したい事がたくさんある。白い龍の話とか、認定式の事とか。でもそんな事より、このままベッドでイチャイチャしたい。無理だよな、大部屋だし。

「えー……お取り込み中の所、申し訳ありません。王子、治療師長とハルバート殿がいらっしゃってますが……」

 咳払いと共に、申し訳なさそうなアークさんの声がしたので顔をあげると、顔を真っ赤にした白いローブの女性と落ち着いた表情の如月の姿が見えた。

「お、王子様……無事のご帰還おめでとうございます!国民一同お帰りをお待ちしておりました……!」
「ありがとう」

 ルーシェンの王子オーラ全開の笑顔に、治療師長の女性がうっとりしていてちょっとムッとする。ルーシェンは女性に愛想が良すぎる気がする。

「王子、留守の間にこのような事になり申し訳ありません」
『如月のせいじゃありません』

 頭を下げる如月を見て、つい口を挟む。もの言いたげなルーシェンの視線を感じたけど、実際に如月は悪くないから仕方ない。空気を読んだアークさんが間に割って入った。

「王子、ここは病室です。隣室にお部屋を用意してますので、そちらに移動して話しましょう」

 ルーシェンは俺の頭を撫でてから、如月と治療師長さんとアークさんと隣室に行ってしまった。

 もう少し、一緒にいたかったな。できれば二人っきりで。でも帰ってきたんだから、これからはいつでも会える。

 ん?

 四人が隣室に消えると、大部屋にいた全員と、いつの間にか増えていた廊下にいた多数のギャラリーの視線が俺に集中する。
 皆何も話しかけてこないけど、視線も外さない。

『あ、どうも……お騒がせしてすみません。どうぞ寝てください』

 近くのベッドにいた兵士に言っても、こっちを向いて正座していて、全然リラックスしてくれない。何て言うか、俺を見る目が今までと違う。どう扱っていいか分からない相手といるような感じだ。今まで通りにしてくれていいのに。
 ギャラリーも少しも減らない。動物園のパンダになったような気がする。どうする?カーテン閉めるか?

 カーテンを閉めようと手を伸ばすと、ベッドの下から恨めしい声と共に顔から血を流したジョシュが現れた。

『ジョシュ!?』

 びっくりしたけど、よく見ると鼻血だった。

「ミサキ君……ひどいよ……」

 内緒にしてた事怒ってるのか。
 今まで通りに接して欲しいけど、ルーシェンの事が分かって、ジョシュの態度も変わってしまうんだろうか。

『ごめん。言えなくて。ジョシュ鼻血が出てます。大丈夫ですか?』
「え?鼻血?」

 濡れたタオルを手渡す。

「本当だ。ミサキ君と王子様の……あんな事やこんな事を、いろいろ想像しちゃったから興奮したのかな……えへへ」

 ジョシュ、変わらないな。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

最弱オレが、最強魔法騎士様のパートナーになった件

竜也りく
BL
「最悪だ……」 その日イールはめちゃくちゃ落ち込んでいた。 イールが通う魔術学校の卒業試験は制限時間72時間の中でどれだけ強い魔物を討伐できるかで審査される上、二人ひと組のチーム選だからだ。 入学してからこのかた常にダントツ最下位を取り続けてきたイールと組むなんて誰だってイヤだろうと思うと気が重いのに、パートナーを見てさらにため息を深くした。 イールのパートナーは、入学以来ダントツで首席な上に、代々騎士の家系に生まれたせいか剣の腕にも定評がある。その上人を寄せ付けない雰囲気ではあるものの顔もいいという、非の打ちどころのない完璧さを誇る男だった。 しかも彼はとんでもないSランクの魔物を仕留めるだなんて言いだして……。

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

処理中です...