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引っ越し

9 返事は?

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 け、結婚……?

 予想外すぎて頭が真っ白になった。
 いや、今までルーシェンや周りから嬉しい言葉をたくさん言われてはいたけど、あまり真に受けないようにしていた。
 多分みんな異世界から来た俺をからかっているだけで、最終的にはルーシェンは、隣国かどこかの姫と婚約するんだと、そう思っていた。

「返事は?」
『あ、あの……私は男なんですけど』
「知っている」
『あと、異世界人で……この間見習い兵士から一人前になったばかりです』
「そうだな」
『それに子供も産めません。だから……』
「嫌なのか?」

 嫌なのか?と言われていろいろな想いが頭の中を駆けめぐった。
 強く頭の中に残ったのは、魔法村を出た後、部下が迎えにきて飛竜で飛び立つルーシェンに手を振った時の事だった。
 あの時、ルーシェンをすごく遠くに感じて切なかった。自分がずっとそばにいて、力になりたいと思ったんだ。非力なくせに。


「大切にする。だから頷いてくれ」

 ルーシェンがそう言って、握っていた俺の手の甲に口づけを落とす。
 守りの指輪を中心に、ふわりと青い光が輝いた。
 この世界がこんなに好きなのは、ルーシェンがいるからだ。何もかも輝いて見えるのも、初めて訪れる場所に愛着が湧くのもルーシェンが居るから。

 俺もルーシェンと同じように膝をつき、目線を合わせる。

『ルーシェンが王子じゃなくなっても、あなたが望む限りずっとそばにいます。全力で幸せにします。だからよろしくお願いします!』

 そういって抱きついた。

 ……なんだろう、俺が言うときまらないな。それにちょっと恥ずかしい。でもルーシェンには伝わったみたいだ。

「ありがとう」

 耳元でそう囁く声が聞こえ、ぎゅっと抱きしめられた。


***

『ここにします』

 最上階にするのはさすがに上り下りが面倒だと気づいた俺は、一番上まで行くのは止めて、最上階より二階分下にある比較的居心地の良い狭いスペースを自分の部屋として借りる事にした。

「上じゃなくていいのか?」
『いいです。同居人が最上階には住めません。それに狭い方が落ち着きます』

 狭いと言っても俺の住んでいたアパートより広い。豪華すぎる長椅子があるからここに寝よう。

「大丈夫だ。最上階は寝室だからな」

 寝室?
 ルーシェンがニヤニヤしながらそう告げる。このエロ笑い久々に見たような気がするぞ。
 ルーシェンに連れられて最上階に行くと、だだっ広いフロアに天蓋付きのベッドが。なんて贅沢なんだ。スペースの無駄遣いだ。狭い日本に住んでもらいたい。しかも天蓋はあっても天井はない。

『雨が降ったらどうするんですか?』
「結界があるから問題ない」

 あ、そうですか。

 何となくベッドまで歩いて行って寝転がると、天蓋の向こうに青い空が広がっていた。外で昼寝してるみたいで気持ちいいかも。でも夜だとちょっとさみしくないか?部屋が広くてシンプルすぎて、何だか一人ぼっちな気がする。悪夢を見て眠れないならなおさらだ。

 ルーシェンが隣にやってきてベッドに腰掛けた。

『ルーシェン、これから会議とかありますか?』
「夕方に飛行部隊と会う予定だ。その後父王に報告が……」

 真面目な顔で予定を考えていたルーシェンにすり寄って、負けないくらいのエロ笑いで誘ってみた。

『……夕方までちょっと楽しいことしませんか?』
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