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引っ越し
16 魔法の炎
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これは……ゲームなら中盤にさしかかった頃登場する異常に強いボスか、ラスボスの変身前って感じだな。それくらい強烈な存在感だ。勝てる気がしない。いや、そんな事考えるなんて王妃様に失礼かな。背後の白い龍のせいって事にしよう。
「皆さん、ごきげんよう」
王妃様はキラキラした扇で自分を仰ぎながら優雅に挨拶をした。
魔法村で一度会った事があるけど、あれはしょせん偽物の王妃様だ。本物の方が美女で迫力があり、ルーシェンによく似ていた。俺以外の全員が王妃様に頭を下げる。
「王妃様、お待ちしておりました。本日は私共のお茶会にいらしていただきありがとうございます。ですが、供の者も付けずにお一人でいらっしゃるとは……」
いやいや、お供なんてあの白い龍がいれば必要ないだろ。
「フィオネ、お前は相変わらず堅苦しいわね。大丈夫よ。ここは私の庭みたいなものだから」
そう言って王妃様はホホホと笑う。王妃様、フィオネさんと同年代くらいなのかな。何となく仲が良さそうだ。
二人を見ていると、フィオネさんと王妃様の視線が俺に集中した。
……すごい。無言の圧力に押し潰されそうだ。フィオネさんの視線は、何か言えってやつだな。
『王妃様はじめまして。岬修平と申します』
慌てて頭を下げ、挨拶をする。
一応結婚を前提に、息子さんとお付き合いさせていただいてます。息子さんを僕にください。いやむしろ僕をもらってください。息子が二人になったと思ってください。
……どれも駄目だ。今は口に出す勇気がない。
「ルーシェンが初めて部屋に招いたというから、どのような者かと思えば……」
王妃様はそこで言葉を切った。
思えば、何でしょうか?
期待はずれ?やっぱりそうかな。美形でも女でもなく、身分の低い兵士でさらに異世界人。アピールする物が何も無い。
「お前は確か、認定式で倒れた見習い兵士だったわね」
『あ、はい!』
「もう体調はよろしいのかしら?」
『もう大丈夫です』
まさか王妃様が俺を知っているとは思わなかった。倒れたけど、ただの見習い兵士の事をそんなに気にかけたりはしないだろうと勝手に思っていた。
「病み上がりなんでしょう?お座りになったら?礼儀作法は気にされなくていいのよ。あなた異世界から来られたんですってね」
王妃様はそう言って席についたので、俺も座らせてもらった。立ちっぱなしはちょっと腰が痛かったんだ。原因は王妃様には言えないけど。
侍女の一人が王妃様のカップにさっとお茶を注ぐ。
「あら、私の好きなお茶ね。こちらの世界の食べ物はお口に合うかしら?」
『すごく美味しいです』
王妃様、いい人だなぁ。ラスボスの変身前だとか思って悪かったな。
「認定式ではどうして倒れたの?緊張なさったのかしら?」
『あ、ええと……緊張というか』
王妃様の後ろで鳥を追いかけて遊んでいるあの白い龍のせいです、とか言っていいんだろうか。
悩んでいると、王妃様がにこりと笑った。
「お前には、あれが見えているのね」
『えっ?』
急に声のトーンを落とした王妃様が、立ち上がって俺の手を取る。そして周囲があっという間に炎に包まれた。
「王妃様!?」
フィオネさんの焦った声が聞こえた。
俺はというと、炎に包まれて……いや、でも全然熱くない。
炎は竜巻のように渦を巻くと、急激に収束し、王妃様に握られた俺の手の甲に吸い込まれていく。これは、炎に見えるけど違う。魔法だ。
一分後には何事もなかったようにもとの状態に戻り、王妃様は俺の手を離すと再び席に着いた。
握られた手がじんじんと重く痺れる。
手の甲に、白と赤の魔法の文字が浮かんでは消えた。
『今の……何ですか?』
「私からのプレゼントよ。ルーシェンには内緒ね」
やっぱり王妃様、ラスボスだったよ。
***
お茶会が終わり、俺はリビングと勝手に決めたフロアの長椅子に寝そべっていた。
手の痺れはかなり取れたと思う。プラプラと腕を振って、手の甲を眺める。たまに魔法の文字が浮かぶ。
「岬殿、大丈夫ですか?」
フィオネさんが少し心配そうに俺の様子を見ている。
『王妃様、何をしたんでしょうか。フィオネさんには分かりますか?』
「私には、王妃様が岬殿の手に何か魔法をかけたとしか……手の周りが急に赤く光ったので驚きましたが」
そうなのだ。
フィオネさんはじめ、侍女や侍従たちにあの竜巻並みの炎は見えてなかったらしい。白い龍は勿論。
「王妃様はプレゼントとおっしゃってましたから、きっと岬殿の役に立つ魔法だと思います」
力説するフィオネさんを信じよう。
ルーシェンのお母さんなんだし、そんなに悪い魔法じゃないと思う。
でも、王妃様は性格といい外見といい自分の母さんとかけ離れてるから、日本にいる義理の母親以上に母と思いづらいな。どちらかというとフィオネさんの方が近い気がする。
「手が痛みますか?岬殿?」
『痛くないけど、少しだけ握っていてください』
甘えたくなってそう言うと、フィオネさんは目を丸くした。
「皆さん、ごきげんよう」
王妃様はキラキラした扇で自分を仰ぎながら優雅に挨拶をした。
魔法村で一度会った事があるけど、あれはしょせん偽物の王妃様だ。本物の方が美女で迫力があり、ルーシェンによく似ていた。俺以外の全員が王妃様に頭を下げる。
「王妃様、お待ちしておりました。本日は私共のお茶会にいらしていただきありがとうございます。ですが、供の者も付けずにお一人でいらっしゃるとは……」
いやいや、お供なんてあの白い龍がいれば必要ないだろ。
「フィオネ、お前は相変わらず堅苦しいわね。大丈夫よ。ここは私の庭みたいなものだから」
そう言って王妃様はホホホと笑う。王妃様、フィオネさんと同年代くらいなのかな。何となく仲が良さそうだ。
二人を見ていると、フィオネさんと王妃様の視線が俺に集中した。
……すごい。無言の圧力に押し潰されそうだ。フィオネさんの視線は、何か言えってやつだな。
『王妃様はじめまして。岬修平と申します』
慌てて頭を下げ、挨拶をする。
一応結婚を前提に、息子さんとお付き合いさせていただいてます。息子さんを僕にください。いやむしろ僕をもらってください。息子が二人になったと思ってください。
……どれも駄目だ。今は口に出す勇気がない。
「ルーシェンが初めて部屋に招いたというから、どのような者かと思えば……」
王妃様はそこで言葉を切った。
思えば、何でしょうか?
期待はずれ?やっぱりそうかな。美形でも女でもなく、身分の低い兵士でさらに異世界人。アピールする物が何も無い。
「お前は確か、認定式で倒れた見習い兵士だったわね」
『あ、はい!』
「もう体調はよろしいのかしら?」
『もう大丈夫です』
まさか王妃様が俺を知っているとは思わなかった。倒れたけど、ただの見習い兵士の事をそんなに気にかけたりはしないだろうと勝手に思っていた。
「病み上がりなんでしょう?お座りになったら?礼儀作法は気にされなくていいのよ。あなた異世界から来られたんですってね」
王妃様はそう言って席についたので、俺も座らせてもらった。立ちっぱなしはちょっと腰が痛かったんだ。原因は王妃様には言えないけど。
侍女の一人が王妃様のカップにさっとお茶を注ぐ。
「あら、私の好きなお茶ね。こちらの世界の食べ物はお口に合うかしら?」
『すごく美味しいです』
王妃様、いい人だなぁ。ラスボスの変身前だとか思って悪かったな。
「認定式ではどうして倒れたの?緊張なさったのかしら?」
『あ、ええと……緊張というか』
王妃様の後ろで鳥を追いかけて遊んでいるあの白い龍のせいです、とか言っていいんだろうか。
悩んでいると、王妃様がにこりと笑った。
「お前には、あれが見えているのね」
『えっ?』
急に声のトーンを落とした王妃様が、立ち上がって俺の手を取る。そして周囲があっという間に炎に包まれた。
「王妃様!?」
フィオネさんの焦った声が聞こえた。
俺はというと、炎に包まれて……いや、でも全然熱くない。
炎は竜巻のように渦を巻くと、急激に収束し、王妃様に握られた俺の手の甲に吸い込まれていく。これは、炎に見えるけど違う。魔法だ。
一分後には何事もなかったようにもとの状態に戻り、王妃様は俺の手を離すと再び席に着いた。
握られた手がじんじんと重く痺れる。
手の甲に、白と赤の魔法の文字が浮かんでは消えた。
『今の……何ですか?』
「私からのプレゼントよ。ルーシェンには内緒ね」
やっぱり王妃様、ラスボスだったよ。
***
お茶会が終わり、俺はリビングと勝手に決めたフロアの長椅子に寝そべっていた。
手の痺れはかなり取れたと思う。プラプラと腕を振って、手の甲を眺める。たまに魔法の文字が浮かぶ。
「岬殿、大丈夫ですか?」
フィオネさんが少し心配そうに俺の様子を見ている。
『王妃様、何をしたんでしょうか。フィオネさんには分かりますか?』
「私には、王妃様が岬殿の手に何か魔法をかけたとしか……手の周りが急に赤く光ったので驚きましたが」
そうなのだ。
フィオネさんはじめ、侍女や侍従たちにあの竜巻並みの炎は見えてなかったらしい。白い龍は勿論。
「王妃様はプレゼントとおっしゃってましたから、きっと岬殿の役に立つ魔法だと思います」
力説するフィオネさんを信じよう。
ルーシェンのお母さんなんだし、そんなに悪い魔法じゃないと思う。
でも、王妃様は性格といい外見といい自分の母さんとかけ離れてるから、日本にいる義理の母親以上に母と思いづらいな。どちらかというとフィオネさんの方が近い気がする。
「手が痛みますか?岬殿?」
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甘えたくなってそう言うと、フィオネさんは目を丸くした。
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